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第2節 女子高生(おっさん)の日常といともたやすく行われるデビュー
34.【後日譚】女子高生(おっさん)の小説家デビュー
しおりを挟むその後、あっという間に片はついた。
雑な詐欺集団は証拠管理も雑で、捜索であれよあれよと未成年者を喰い物にした証拠が出てきたとか。警察は元々、網を張っていたらしい。
ちなみにこれは、父に警視庁総監をもつお嬢様【皇めらぎ】からの情報。今回の件も、事前にお嬢様にも協力を申し出ていた故のスピード解決だった。
「ご、ごめんってアシュナちゃん。アシュナちゃんが危ねぇって思ったらいてもたってもいられなくてよ……」
「………」
「やべぇ……ふくれてるアシュナちゃんもマジ可愛い……」
俺の不機嫌そうな様子を見て、DQN部下達は必死に取り繕っている。どうやら打ち合わせを無視して急行し、決め台詞を邪魔したのが原因だと思っているようだ。
ちなみにDQN部下『A.B.C』は【イジメ騒動】のあとに自主的に退学処分を受け入れ、坊主となり、今やすっかり俺(アシュナ)の小間使いになっているわけだが……その詳細に関しては追々語っていくとしよう。
「あなたが【波澄アシュナ】さんですね、詐欺グループの摘発に協力してくれて感謝します……と、言いたいところではありますが……一般人が無茶をするのは感心しません。詐欺とわかっていたのなら何故警察に相談しなかったのですか?」
現場に来た警察達のトップ、女刑事の【神ノ宮(かみのみや)神美(かみ)】さんに事情聴取ののち説教される。最もな意見に少し反省する。
「……すみませんでした……」
「おいコラ! マッポ!! アシュナちゃんに説教垂れてんじゃねえ!! どーせてめーらに言っても動かなかっただろーがよ!」
DQN部下達が俺を庇い、神美さんと相対する。だけど神美さんはDQN部下達を無視して……座る俺を包み込むように優しく抱き締めた。
「すみません、言い方が悪かったですね……被害者でもある貴女に説教するつもりはありません。ただ……貴女みたいな可愛い娘に何かあったら世界の損失です。これからは私に直接連絡を下さい、すぐに駆けつけます」
そう言いながら、神美さんはどさくさに俺の尻を触ったり匂いを嗅いでいた。またしても変な人を引き寄せてしまったわけだが……そんな事が気にならないほどにーー俺の気分は低下していた。
理由は一つ、やはり俺の書いた小説は評価されたわけじゃなかったから。
(ま……それはそうか、いくら美少女になったからって何もかも上手くいくわけじゃない。今回の事は残念だったけど……)
と、その時、ケータイが鳴った。
見ると、以前に電車で知り合った『大手出版社』の【鴻野ヤコウ】さんからの電話だった。
そう、今回の一件はヤコウさんにも相談していたのだ。この『極道出版社』の悪い噂を真っ先に教えてくれて俺の身を案じてくれていた。
気を取り直し、空元気を振り絞り、明るい声色で電話に出る。
「あ、お疲れ様です……ヤコウさん。やっぱり、ヤコウさんの言った通り……詐欺でした。あはは、浮かれちゃって恥ずかしーー」
「波澄さん、その件は後です。編集長に話が通りました。貴女の書いた小説ーー是非私共の雑誌に載せて頂きたい、と仰ってくださいましたよ」
「………………………………え?」
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