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第2節 女子高生(おっさん)の日常といともたやすく行われるデビュー

おまけ.女子高生(おっさん)のバレンタイン〈サイコホラー編〉

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〈1-C組〉

 気のせいか、今日はいつもより視線がおっさんに集中している。
 それもそのはず、クラスのカースト下~中くらいのランクの男どもがそわそわしながらチラチラとこちらの様子を伺っているからだ。
 最早、監視されてると言っていい。電車で席が空くのを待っているかの如くーー少しでも動くと全員がビクッとなり注視される……サイコホラーだ。

「男子どもー、諦めなよー。アシュナっちは誰にもチョコ用意してないってさー」

 ギャルのミクミクから助け舟が出される、すると男子どもはこの世の終わりかというくらいに落ち込んだ。
 確かに痛いほどによくわかる、おっさんも学生時代は同じようになったものだ。可哀想なので休み時間に摘まもうと思ってた……ド○キで売ってる『まるごと酢イカ』(20本入り)を取り出した。

「あの……これしかないけど、よかったら……」
「アシュナっち!? なに酒のつまみみたいなの持ってきてんの!?」

 ミクミクには突っ込まれたが、男子どもは歓喜しながら俺のもとに集まった。貰えれば何でもいいらしい、まったく手のかかる面倒な生き物だ、イカ臭いったらありゃしない。

「とことんおっさんみたいだねアシュナっちは……はい、口直しにアタシから。合コンとか色々お世話になってるからね、お礼に」

 ミクミクからもチョコを渡される、お世話になってるのはこちらの方です(下ネタ的な意味で)ありがとうございますと感謝しながら、チョコを貰い、イカを差し出した。

「なにこれウマッ、あ、そーいえばエナからチョコ預かってたんだ。アシュナっちに渡してって」

 【早苗エナ】ーーミクミクの幼なじみで合コンに一緒にいった日から、やたらと俺にアピールしてくる別クラスの女子だ。
 渡された手提げ袋はやたら重い。チョコだけかと思いきや別に包装された物体も入っている。手紙も入ってたので読んでみた。

『拝啓 
 行く年を惜しみながら新しい年に希望を馳せるこの頃。波澄様におかれましては、お健やかにお過ごしの事かと存じます。
 さて日頃はなにかと至らぬ私に、色々とお心遣いを頂き、言葉では言い表せないほど感謝しております。
 本日、親愛のしるしとして不得手ながら手作りの焼き菓子を進呈させて頂きました。しかしながら、それだけではこの情慕を表しきれないと感じ、自作の詩集を添えさせて頂きました。目を通していただけたら嬉しいです。
 それではまたすぐにお目にかかれますことを楽しみにしております。 早苗エナから波澄アシュナ様へ  敬具 』

「………」
「………」

 横から手紙を覗き見たミクミクもドン引きしている。包装を開けてみると、六法全書みたいな分厚さの詩集が入っていた。

「この手紙……時候の挨拶が年末なんだけど……」
「……そーいえば……エナ……年末くらいから今日のために焼き菓子造りの練習ずっとしてたよーな……」
「……」

 男だったなら、こんなにも想って尽くしてくれる女の子は大歓迎だったけどーー今はちょっと面倒を通り越してサイコホラーだった。

         【現在のチョコ 4個+六法全書】
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