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第3節 女子高生(おっさん)の日常といともたやすく行われるアオハル
62.女子高生(おっさん)のデート③『鳳凰の過去』※語り 鳳凰天馬
しおりを挟むマッサージチェアに座りながら、鳳凰は語り始めた。
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※
俺は女が嫌いだ。
恐らく、その原因の根幹は『母親』──いや、『母親だった者』への拒絶反応からくるものだろう。
母親だったあの女は完璧な女性だった。
容姿、佇まい、振る舞い、そして学歴や頭の良さも兼ね備えていた正に十全十美……それが俺の母だったものだ。
当然、父も、幼いながらにその完璧さを理解していた俺も盲目に母が好きだった。代々から続く事業の難解さに頭を悩ませた父にも、妻として、母親としても完璧にサポートしていた母は父の拠り所であったともいえる。
しかし、父と母は数年前に離婚した。
理由は単純明快──母の不倫だった。少しの綻(ほころ)びも見せなかった母だったが……由緒正しき家柄の長きに渡る監視と広域な網からは逃れられなかったようで、調査により母は父と結婚してからずっと浮気していたと判明した。
母は最後に父にこう言い残した、『初めから財産目当てだった。カネがなけりゃあんたとは付き合ってなかった……これまで良い妻を演じてやった分カネをよこせ』と。
それからというもの、父は日に日に憔悴(しょうすい)していった。一族からは女性を選ぶ審美眼の無さを責め立てられ、恥をさらしたという理由で役職も外された。
だが、それよりも拠り所だった母を失った悲しみの方が大きかったのか夜毎にすすり泣く父の声を聞いて俺は少年期を過ごしてきた。
父にこれ以上負担はかけまいと、俺は勉強や習い事に明け暮れた。そんな俺の姿を見てなのかはわからないが……父も段々と元気を取り戻していった。そして父は破竹の勢いで事業成果を収め、再び地位を取り戻すに至ったのだ。
「……」
「だが、思春期を迎えても俺は母を赦す事はできなかった……それどころかそれが原因で世の全ての女性というものを信じる事ができなくなっていた。完璧に見えても……いや、だからこそ必ず【裏の顔】を持っているものだと」
そんな俺に、一族の【しきたり】という悪しき倣(なら)わしが立ち塞がった。
それは『成人を迎えるまでに自身に相応しいと思える伴侶を見つける事』という決まりだ。できなければ財閥の選ぶ女性との婚姻を強制される──いわゆる政略婚というやつだ。
「それだけはどうしても避けたい……女性を信じられなくなった俺ではあるが……心のどこかで、もう一度女性を信じてみたいと思っていたのかもしれない」
「……」
「そこから俺は様々な女性と出会ったり、接するように心掛けてみた──だが、それは俺の女性不信を更に深めるものとなってしまったんだ……」
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思ったよりシリアスな話だった。
ショッピングモールのマッサージチェアでくつろぎながら聞く話じゃない。そして、長い。まだ続くの?
〈続く〉
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