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第3節 女子高生(おっさん)の日常といともたやすく行われるアオハル

85.女子高生(おっさん)とひまりと駄菓子屋

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〈駄菓子屋〉

 放課後、ヒマリと下校中に誘われて寄り道をすることになった。我が高校のある市内は地元よりも更に都内から離れて南下しているために、歩く道のりにはほぼ店らしい店はない。そのため、生徒の大半は電車に乗って隣県まで出るので女子高生の寄り道には不向きな通学路ではあった。
 だが、そんな事はお構い無しと言わんばかりにヒマリは田舎道の景色を楽しみながら──人里から離れた場所にあった駄菓子屋へと案内してくれた。

「こんなところに駄菓子屋なんてあったんだ」
「えへへ~、おいしいお菓子がいっぱいあるんだ~」

 そこは古き善きといった言葉を表したかのような、こういうのでいいんだよって感じの古民家タイプの駄菓子屋だ。煤(すす)けた色の材木、無造作ながらも綺麗に陳列された菓子、店の前にはジュークボックスの自販機、レトロゲーム。
 おっさんは昭和の終わり生まれ──物心ついた時には平成となっていたため……『学校帰りは必ず駄菓子屋』という文化は既に終わりを迎えつつあった。ゆえに駄菓子文化にそれほど愛着があるわけではない。しかし、だがしかし、そんなおっさんにも懐かしさを思わせる佇(たたず)まい……まさしくこれが本物だ。

「あ~おじいちゃん、こんにちはー」
「やぁやぁよく来たねひまりちゃん……むほほ……相変わらずのからだつき……………ほぅわぁっ!? ひっ……ひまりちゃんっ……そちらのおなごがもしかして……!!?」

 店内から腰を曲げたおじいちゃんが登場する──どうやらヒマリは馴染みらしい、そして挨拶もそこそこにおじいちゃんは俺を見て……驚天動地といった具合におののいた。

「うん~、いつも話してるアシュナちゃんだよ~」
「……嗚呼…………若き日の婆さんを思い出すわい……まさに『みす・わーるどぐらんぷり』じゃあ……」

 よくわからない事を呟きながら、おじいちゃんは俺を見て拝んだ。言葉端から推察するに──たぶん、この家の主であり、奥さんを亡くして一人で駄菓子屋を経営しているおじいちゃんだろう。周囲には家がポツリポツリとしかないため、寂しくてヒマリがここに来るのを楽しみにしている優しいおじいちゃんなんだろうな、と背景にある物語を勝手に予想してみた。

「むほほ……ひまりちゃんに負けず劣らずたわわに実った果実にすれんだーなぼでー……こりゃたまらんわい……」

 おじいちゃんは劣情を催(もよお)したかのような眼で俺を品評している。
 予想と全然違った、ただのスケベジジイだこれ。

「これアンタッ!! また若い娘にちょっかいかけようとしてんのかい!! アタシの目が黒いうちはさせないよっ!!」

 奥からおばあちゃんが出てきた、生きてたし奥さん。紛らわしい事を言うスケベジジイだ。

「あら、あらあら……また可愛らしい子がきたねぇ……まるで若い日の自分を見ているようだよぉ」

 おばあちゃんは店内に置かれていたアニメキャラが描かれた団扇を見てそう言った。大丈夫なの? この駄菓子屋。
                   〈続く〉
 
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