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第4節 巻き起こる様々な試練と それをいともたやすく乗り越える女子高生(おっさん)の日常
97.女子高生(おっさん)と陽キャ男子達Ⅲ
しおりを挟む『え、ダーツとビリヤードができるとこっすか? 勿論知ってますけど……姐さんやりたいんすか?! じゃあじゃあ俺らが一緒に行きますよ! 大丈夫、俺らのホームですから! 任せてくださいよ!』
「う……うん」
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〈休日 ダーツバー『Dear to glandmother』〉
休日、お馴染みサッカー部陽キャ男子たち4人の案内で地元市内にあるお洒落シックな内装のダーツバーに来店した。地元には20年近くいたが、近場にこんな店があることを初めて知る。さすが陽キャ達、女の子が好きそうな店を探すのはお手の物だ。
誘いをかけたのは俺からだった。
理由は一つ──今度書く小説の物語にダーツとビリヤードを取り入れたかったのだが……真の陰キャである俺は当然のようにどちらもやった事がない。ネットでルールを検索しても全然意味がわからなかったので体感しなければならないと思った故だ。
勿論、一人で陽キャ御用達のダーツやビリヤードがある店など入る勇気もないので陽キャ達に電話してみたというわけだ。優しい陽キャならば必ずついてきて教えてくれるだろう、というのも計算済み。
「お、また来たな悪ガキ共」
「マスター、誤解招くこと言わないでくださいよ~」
カウンターにはこのバーのマスターらしき人物がいてイケメン達と軽い挨拶を交わす。古参の落ち着いた感じのジャニーズ系イケメン……イケメンはイケメンしか知り合いにしてはいけないって決まりでもあるのだろうか。
「──っ!!? き……君が噂のアシュナちゃんか……いやー、噂以上の可愛さで一瞬固まっちゃったよ。ごめんごめん、はじめまして」
「ど……どうも、はじめまして……」
イケおじは俺にもにこやかに挨拶をして握手した。初対面であるにも関わらず、なんか話を聞いてもらいたくなるような大人な空気を存分に醸し出す……まさしくバーのマスターになるべくして産まれたような人を安心させる存在──エヴァン○リオンの加地さんみたいなイケおじだ。
陽キャたちとイケおじはわいわい騒いだのち、カウンター横にある広いスペースにビリヤード台と電子ダーツ台の準備をしてくれた。
「さ、姐さん。一緒にやりましょうよ」
「うん……」
爽やかイケメン高校生たちは俺(アシュナ)に遊戯の楽しさを教えるべく、甲斐甲斐しく世話してくれる。
さて、何故、懲りずに苦手である筈の陽キャ達に頼んでしまったのか自分でも不思議に思うが──それには心の奥底に潜めた理由がある。
復讐(イタズラ)のためだった。
かつてフットサルに誘われた時とは違う……スキル『女の武器』を手に入れたおっさんの力によって陽キャ男子たちに軽くイタズラしてやろうと意気込んでいたのだ……が、なんの疑いも躊躇いも無く(ほんの少しの下心くらいはあるのかもしれないが)きちんとアシュナのために付き合ってくれる無邪気な陽キャ男子を見て、そんな気も無くなってしまった。これこそが陽の者が陽たる所以(ゆえん)なのかもしれない、毒気を抜かれるとは正にこの事だ。
(やっぱりもういいか……ルールだけきちんと覚えて帰ろう)
ちょうどその時、お昼時だったからか陽キャ男子の一人が昼飯の話題を出した。
「マスター、店になんかないんすか?」
「悪い、ちょうど材料切らしてるから買い出しついでに買ってきてやるよ。牛丼でいいか?」
「うぇーい、俺ネギ玉大盛~」
「アシュナちゃんは?」
「わ……私もいいんですか?」
「勿論すよ姐さん、マスターの奢りっすから遠慮なく頼んでくださいよ」
「お前らが偉そうにするんじゃねーよ」
──などと陽たちがうぇーいしている中、メニュー表を見て商品を選ぶ。近くにある牛丼チェーン店で様々なトッピング牛丼が楽しめる子供人気No.1の店だ。
そこで、陽キャ達は言ってはいけない言葉を口にしてしまう。
「姐さんは『チーズ牛丼』がいいんじゃない?」
「あー、それな。姐さんにぴったし」
「わかるー、頼みそう」
陽キャたちは悪意なく、躊躇なく、陰の者の逆鱗(げきりん)に触れる禁止ワードを口にした──そしておっさんは決意する。
やはり、こいつらにはお仕置きが必要だ、と。
〈続く〉
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