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第4節 巻き起こる様々な試練と それをいともたやすく乗り越える女子高生(おっさん)の日常
106.女子高生(おっさん)とヒナとお買い物②
しおりを挟む〈ショッピングモール〉
「いらっしゃいませー」
ヒナヒナとのデート──俺達は色々見て回ったのちに本来の目的である水着の店にたどり着いた。女性は買い物が長いというが……本当だった。まるで男がRPGゲームでダンジョンのボスに挑む前に宝箱を取り雫(こぼ)さないように……少しでも可愛い物があればそちらへ誘われるようにヒナヒナは引き寄せられ……目的地到着までに3時間をも費やしていた。
「わぁー! 新作可愛いー! 見て見てアシュナー!」
おっさんは興味の無い雑貨や洋服を長い間見て、既に精神瀕死状態(MP0)なのにヒナヒナは常時10倍界王拳状態のテンションを保っている。クスリでもキメているんじゃないかと少し心配した。
「可愛いですよねー、あ、こちらもオススメですよ」「あ、本当だこっちも可愛いー!」
陰の者の敵である、積極的話掛売込店員(ストーカー)ともヒナヒナは楽しく話し込んでいる。さすが陽キャと思うと共に、これが陽たる素質であるというならば一生陰キャでいようと心に誓う。
「──! あ、あのっ……波澄アシュナさんですかっ!? ファンなんです握手してくださいっ!」
「あ……は、はい……」
店員は目ざとく俺を見つけたのち、驚きと興奮を織り交ぜた様子で握手を求めてきた。そう、たった一回ニュース報道されただけにも関わらず……既にネットでは至るところに『アシュナファンサイト』みたいなものが出来上がり話題となっているのだ。
果たして、本格的にデビューした時に世界はどんな風になってしまうのか想像もつかない。
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「ねぇアシュナー、これ変じゃないかなー?」
現在、水着の試着中。
通常のラブコメであったなら、デートで彼女が試着しているのを、女性店員や女性客に温かい眼差しで見られながら気まずさや居心地の悪さを感じたりするのだろうが──俺は女性だからその心配は無かった。
しかし、普通の男女のラブコメでは絶対にあり得ない別の問題が巻き起こっている。
「あ……あのヒナ……!? 女の子って一緒に試着室に入ったりするものなの!?」
「ん、どうだろう……私は初めてだけど空いてない時は一緒にしちゃう子もいるって聞くよ? でも女同士なら問題ないよね?」
確かに、しかし、おっさんには大問題である。
二人きりでの生着替え──これまでのどのエチュ(※えちなシチュエーション)よりも官能的な気がする。
「んっ……あはは、でもやっぱ狭いね。ブラ外せないや、ごめんアシュナ外してくれないかな?」
「WATASIGABULAWOHAZUSU!?」
「なんで片言なの?! そんな驚くこと!? ほらこうやって……」
ヒナは俺の手をとって自分の背中に回す、自然と互いのおっぱい同士が惑星衝突を起こしてまさに俺の宇宙はビッグバン。
自然の摂理で、ヒナはその豊満な丘を晒したのちに水着姿になった。俺は性的興奮を誤魔化すように、適当に取った水着を素早く着用して早着替えをする。
「あっ、アシュナっ……! 下は直接試着しちゃダメだよっ!?」
「えっ」
どうやら衛生的な観点からボトムス(下)の試着は下着やインナーの上から試着しなければならないらしい(※当然です)テンパっていた為に失念していた。
俺は罪悪感からそのまま試着室を出て待っていた女性店員に言った。
「すみません……これ買い取ります……」
「アシュナっ!? 水着姿のまま出ちゃダメだよっ!? 着替えてから言えばいいんだからっ!」
待ち構えていた女性店員は真っ赤になりつつ驚きの表情をしていたが……すぐに興奮しながら何故かお金を渡してきた。
「いえっ問題ありませんっむしろ私が買い取ります手持ちこれしかないですけどいいですかっ家宝にしますっ!」
「なんで!?」
結局、どうしてもと言うので女性店員はおっさんの脱いだ水着を買い取っていた。謎の錬金術を産み出した貞操観念の無いおっさんはもしもの時はこれで生計立てようと密かに心に秘めた。
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