おっさんの俺が美少女になって高校生からやり直したら人生クッソチョロかった件

司真 緋水銀

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最終節.女子高生(おっさん)の日常と、いともたやすく創造されしNEW WORLD

190.女子高生(おっさん)の文化祭準備②

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 kwsk(くわしく)詰め寄ると、校長は詳細を語り始めた。

 なんでも今年度は来客希望者が殺到しているらしく、日程等の確認電話が後を絶たないようで──見込みによると100万人以上が我が校の文化祭に訪れる予測らしい。
 原因を校長は暈(ぼか)していたが、言うまでもないということだろう。

 来場制限や事前予約、警備の増員などで対策を図っているようだが……それでも例年とは比べものにならない人数が押し寄せてくる、と校長は語る。
 そして、その中には名だたる大物達がいるらしい。
 普通、こちらからオファーして初めて来てもらうものなのに……Sランクに該当するような芸能人達が、片田舎の変哲もない高校の文化祭に金を払ってでも来たいと言っているのだ。

 そうなってくると、来場者を音楽にて歓迎する予定である軽音部は必然……矢面に立たされる運命(さだめ)にあり、「培(つちか)ってきた技術を満遍なく披露する絶好の機会だ」──とはならず「芸能人達の前で演奏するなんて絶対無理!」となり、辞退を申し出たと相成ったわけである。

 うん、完全に、おっさんの責任だった。

「──いや、でも、だからって……文化祭って10月の最終週ですよね!? 約二ヶ月で人前で演奏するレベルまで到達しろなんて無理難題じゃないですかね!?」
「あ、アシュナ。私ギターやってるよ」
「アタシ、ヒナに付き合ってドラムやってた時あるよ。ヒマリも……」
「えへへ~、ベースできま~す」

 揃ってた。
 まさかの陽キャ三女傑、神揃い踏みだった。

「やべー……姐さんとヒナ達のガールズバンドなんてもう絶対ヤバいやつじゃん!」
「ふっ……ならば俺達は全力でサポートするのみだ」
「あっ、じゃあぼく照明やるよ!」
「機材に関してはあたし達に任せて」
「ならば……我々はセット造りに励むでござるよ!」

 クラスメイト全員が、ケン達までもが──おっさん達のために一丸とならんと奮い立ってくれた。
 こうなったらもうやるしかないだろう。

「──わかりました、やります」
「じゃあアシュナっ! これからは放課後も休みの日も練習ねっ!」
「仕事の方は大丈夫?」
「あー、うん。小説はもう書き終えてるし……編集長は学業優先にしてくれてるから全然……」

 大丈夫──そう言いかけて、重大な事を見落としていることに気付いた。
 【アオク】との曲作りだ。
 イド様も『学校終わりの空き時間』でスケジュールを組んでくれると言ってくれたのだが……こうなってしまうと朝から夜まで全く時間が無い。
 【アオク】のシングルリリースは11月でもう延期はできない──と、いうか大見栄切った以上……そんなことはさせたくない。

「ごめん、ちょっと電話で確認してくるね」

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『──そっか、うん。それは仕方ないよ、学校優先って言ったのは僕だし』
「あっあのっ! 申し訳ないですけど一つ……提案、というかお願いがあるのですがっ──深夜帯にスケジュールを取ってもらう事はできますでしょうか!?」
『……えっ? いや、僕は夜型だし平気だけど……そんな事したら……』
「お願いします! どうしてもやりたい……やらなきゃいけない事なんですっ!」
『……うん、わかった。最初にお願いしたのは僕だ、その方向でスケジュール組み直してみるよ』
「ありがとうございますっ!」

 通話を切る──イド様はこちら都合の無茶な頼みにも一切声色を変えずに了承してくれた。改めて……なんて【神】なのだろう。
 浮世から隔離されたように静かな廊下とは対称的に、教室からは未だに熱が冷めやらぬ盛り上がりの喧騒が微かに聞こえる。

──『おじさん……あんな事言っちゃってどうする気ですか……?』

 阿修凪ちゃんが心配そうに声をかけてきた。

「どうするもこうするも……昼は学校行って、終わったらバンド練習して、深夜はイド様と歌詞づくりだよ」

──『無理に決まってるじゃないですかぁ! ただでさえおじさんは早寝なのに……』

「それは昼間に起きてるからだよ。夜まで寝れば流石に眠くならない……と思う。『夜勤はやめとけ』おじさんだけど一、二ヶ月くらいだったら問題ないよ」

──『……? じゃあ授業中とかに寝るってことですか……? 学業を疎(おろそ)かにしたらイド様も喜ばないと思いますけど……』

「違うよ。寝るのはだけ」

──『……いやいや、だからおじさんが寝るんじゃないですか……身体は一つしか……』

 そう言って、阿修凪ちゃんは閉口する。恐らく、俺が何を言いたいのか察したゆえの反応なのだろう。
 その解答を、容赦なく彼女に突き付ける。

「学校に戻るリハビリみたいなもんだよ。阿修凪ちゃん、キミがバンドで歌うんだ」




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