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最終節.女子高生(おっさん)の日常と、いともたやすく創造されしNEW WORLD

200.女子高生(おっさん)と約束④

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 一つの情報を入手した俺は、次にするべき行動を決めあぐねていた。
 ………いや、もしかしたら心の何処かの六感めいたものが警鐘を告げて思い留まらせたのかも知れない。

『高原に呼び出されるようになってから明らかに元気なくなって……実は噂が広まり始めたのも大体同じ時期なんだよ』

 ミクのその言葉が水流の捻(うね)りのように何度も頭を掻き回す。そんな俺の思いを感じ取ったのか……阿修凪ちゃんが不安そうに話しかけてきた。

──『【高原】先生って………一年の時の学年主任の先生ですよね? ヒマリちゃんと何か関係があるのでしょうか……?』

「……わからない、とにかく話を聞きに行こう」

 現在、ヒマリの姿はクラスに見えない──というわけで当てもなく廊下に出たのだが……話を統合すると向かう先は定まっていた──にも関わらず、胸騒ぎで足取りは自然と鈍重になっている。

【高原ガハラ】──アシュナ一年生時代にひと騒動あってからはめっきり大人しくなり、従順な下僕化した変態教師。なにかと悪評が絶えない教師……いいや、教師と呼ぶにも烏滸(おこ)がましいオークだ。
 騒動があってからはすっかりその存在を忘れ去っていたが……まさか再登場してくるなんて、全く嬉しくない伏線だ。

 と、思考したところである事に気づく。
 そういえば高原にも噂はあった──生徒指導室に女子生徒を呼び出し、指導と称してセクハラ紛いな事をしているという噂だ。
 そしてヒマリの噂……阿修凪になった一年生の時点で既に他校の生徒の耳に届くほどに広まっていた。

同《・》

 よくよく考えてみるとおかしい……アシュナの影響により更正したとか理由づけはできるかも知れないが、それにしても不自然すぎるほどに噂は途絶えた。

()──不意にそんな考えが頭を過(よぎ)った。

 同時に──目的地の前で足は止まる。
『生徒指導室』……もうすぐ授業が始まる故に、離れた場所に佇(たたず)むこの場所は静寂に包まれていた。

──『誰もいませ………あれ? なにか動いたような……』

 室内と廊下を仕切る、扉に備え付けられている曇りガラスの向こう側で……確かに影が動いたのを、俺も阿修凪ちゃんも同時に視界に捉えた。

 誰かがいる──不安の予感が増幅し、指先を震えさせた。

「失礼しますっ!!」

 ガラケーのカメラを起動し、そんな胸騒ぎを振り切るように思い切り扉を開く。もしも予感通りだったなら……現場を押さえる必要があったから。

 そして──カメラは真実を映し出した。

 レンズの向こう側にいたのは………半裸のヒマリと高原だった。
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