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最終節.女子高生(おっさん)の日常と、いともたやすく創造されしNEW WORLD
201.女子高生(おっさん)と約束⑤
しおりを挟む「──っ!!? だっ……誰だっ!!?」
薄暗い室内──来訪者を予期していなかったのか高原は完全に不意を突かれた表情をして声を荒げる。
油ぎった顔、露出したビール腹……しかし、そんなものは俺にとってどうでも良く、視界からすぐに興味の対象として外した。
向けた視線の先には、そんな中年男にあられもない姿を晒していたヒマリだった。
はだけた制服。
下着は外れ、かつて一緒に入った風呂で見た黄金比の芸術的な身体は……醜い獣の汚い手により蹂躙(じゅうりん)されている。
艶めいて見える白い肌は、汗にまみれている──果たしてどちらのものなのか。それほどまでに、彼女と中年の距離は限りなく零(ぜろ)だった。
ともすれば……中年のだらしない肉の塊で彼女を押し潰しているようにも見える──そんな距離感。
光を失った瞳。
無邪気に、いつも微笑んでいた彼女の顔は……見る影も無かった。
これまでの経緯や、何をしていたかなど知りたくもないが……紅潮する頬と荒くなった呼吸──そして、うっすらと濡れた瞳が……否応なく現実を脳に刻みつけた。
そして、俺の記憶が憶えていた光景は……そこまでだった。
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────『お……さんっ……!!! おちつ………く……さいっ!!!』
──そんな声が、自分の内側から聞こえた。
阿修凪ちゃんの声だ、慌てて何かを制止しているような緊迫感のこもる叫び。
焦点の合っていない視線に再び光が戻る…………いつの間にか俺は椅子を持ち上げていた。
「ぁ…………ぅっ………ひっ…………!」
嗚咽のような微かな泣き声が耳に届いた──ヒマリのものだ。彼女は床にへたり込み、肌を隠して、戦々恐々の面持ちでこちらを見ている。一体なにがあったのだろうか?
「ふ………ぐぅ…………っ………」
豚みたいな鳴き声も聞こえた──それは床に這いつくばり、血を流して倒れていた高原のものだった。殴打されたであろう痣の数々が……跳んだ記憶の狭間に何が起こったのか──冷静さを取り戻した俺に教えてくれた。
恐らく激昂した俺が、椅子で高原に殴りかかったのだろう。
「…………は………はずみ………くん……? どうして……」
同時に少しだけ落ち着きを取り戻したのだろうヒマリの問い掛けに、俺はゆっくりと振り上げた椅子を下ろす。
問い掛けたいのはこちらも同じであった──俺は、着ていた制服をヒマリにかけ、隣に腰を下ろした。
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