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第一章 名無しさんの最強異世界冒険録
第二十八話 集結
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「………」
「……」
「………」
「………」
ここは俺とアイの泊まる宿の一室。
俺達は四人…初めて一同に介し、顔を合わせた。
俺、アイスメリア、佰仟、古心。
現状とこれから、そして隠し事を全員に周知させるために。
俺は全員に今まで起こった事、異世界から来た事、全てを話した。
そしてこの空気である。
「せんぱ~い、何か空気重いんすけど…」
俺以外に唯一、心や記憶を詠み全てを知っている茶髪の少女がこの空気を破る。
「ちょっとあんた、ナナシにくっつかないでよ」
「え~なんでっすか~?もうえっちしたんで恋人みたいなもんだよ、新聞社にも妻って言っちゃったし」
「それはあんたの能力を貰うためでしょ、大会ではあんたが勝手に宣言しただけみたいだし」
「違いますぅ~!終わってもずっとせんぱい抱きしめててくれたもん!」
「そんなのアタシは何回もされてるわよ!」
バチバチバチッッ…
初顔合わせのアイとこころがなんか揉めている、いや俺のせいなんだろうけど。
まぁこの二人は少し放っておいてもいいか…
全部俺の事情をわかってて一緒にいてくれてるわけだし…。
「……」
問題はこの男、佰仟だ。
今まで完全に騙していたようなものだから。
正直殺されても文句言えない。
俺は土下座をする。
「いや、そこまでする必要ないでしょ」
「そうっすよせんぱい。この人勝手にせんぱいの女装に惚れただけっすよね?」
女装じゃないし、この二人ケンカしてたんじゃないのか。
「だけどずっと真実を言えなかったんだ、利用していたようなもんだ。何をされても仕方ない…全部俺のせいだ」
「……」
佰仟はずっと黙っていた、心も色々混乱しているようで読みとれない。
「すまなかった佰仟…」
俺は頭を下げ謝罪する。
長い沈黙の後、ようやく佰仟が口を開く。
「一つ、お兄さんとナナさんに聞きたい」
「いや…お兄さんじゃないんだけど」
話を聞いていたのか?
「だが、先にあなたがこの世界に来て女神と出逢いナナさんが産まれた。それはつまりあなたが兄ということだ」
……
………うーん、そうなのかな?
「何この人…気持ち悪っ」
こころが言ってはいけない事を口にした。
アイも同じ事を考えていたが既に金銭の面で佰仟には世話になっていたので何も言わなかった。
「…それで?」
「…これからも…ナナさんにとって…俺は必要だと思うか?」
「勿論だ」
これに俺は即答する。
ナナだけではない、俺にとっても。
その能力はいうまでもないし、何よりいいやつだ。
これから世界を廻る旅に是非同行してほしい。
それをあくまでナナシの姿で伝えた。
ナナの姿になってやりたいが、それは卑怯だと思ったから。
佰仟が望む時になってあげよう。
「………………………………そうか」ふっ
ザッ ザッ ザッ
バタン
そう言うと佰仟は微かに笑い、部屋を出ていってしまった。
「………」
「仕方ないっすよ、もう諦めましょ」
「そうよ、またどこかで会えるって」
二人が慰めてくれた。
「……」
……そうだよな、いいやつなんだ。
きっと俺達のピンチに颯爽と駆けつけてくれたりする……
バタン!
「……」
再び佰仟が部屋に入ってきた。
ピンチじゃないけど駆けつけてくれた。
別れから早すぎるけど。
「ナナさんに合いそうな服を選んでおいた、俺の力を借りたいなら交換条件だ。あなたはまだこの世界でどちらの性別か決まっていない、俺が仕事を果たしたらナナさんとして生きてもらう。そして、俺と結婚してもらう」
「「はあ!?」」
アイとこころが仲良く声をあげた。
「…あぁ、わかった」
「「えぇっ!?」」
この二人…仲良くなれそうだな、息ぴったしだ。
「これからもよろしくな、佰仟」
「ちょっと!ふざけてるの!?ナナシは男に決まってるでしょ!アンタとじゃなくてアタシと一緒になるの!」
「なんでっすか!それは決まってないっしょ!これからの旅で決まるんだから女神さんでもアイっちでもなく私を選ぶはずっす!」
「アイっちてゆうな!」
「ふっ、喧しい女達だ。この分なら貴様らに嫌気がさし彼が女として俺を選ぶのも時間の問題だな」
「「それだけはねーよ!」」
楽しいなぁ。
本当によかった、こんないい人達に出逢えて。
前の世界では考えられなかったな。
「ねぇナナシ!」
「せんぱいっ!」
「ナナさん!」
呼び方は様々だけど、ちゃんと名前を呼んでくれる。
よかった、名無しの権兵衛さん。
あなたはちゃんと、ここにいる。
これから世界中に名無しの権兵衛の名は広まっていく。
そう、俺達の冒険はこれから…
バタン!!
「はあっ、はあっ、はあっ……!!」
その時見知った顔が部屋に飛び込んできた。
「え、エレ!?」
「エレ…さん!?」
「?」
エレの事は一応話していたので全員知ってはいたが、佰仟とこころは初めて見る顔にきょとんとしていた。
俺とアイも何故エレがここにいるのかは全くわからない。
「ど、どうしたんですか?」
「どうやってここがわかったんだ?」
「何者だ?」
「……あ、この人がエレさん?なんか私とキャラ被ってないすか?」
それぞれがそれぞれの質問を投げかけるが、息を切らしたエレは答えられない。
俺達はエレが息を整えるのを待つ。
水を飲みようやく呼吸が落ち着いたエレがただ一言発する。
「た、助けてにゃ…ナナシ…このままじゃ…リーちゃんが……死んじゃうんだよ!」
どうやら打ち切り展開でなく、話はもう少し続くらしい。
「……」
「………」
「………」
ここは俺とアイの泊まる宿の一室。
俺達は四人…初めて一同に介し、顔を合わせた。
俺、アイスメリア、佰仟、古心。
現状とこれから、そして隠し事を全員に周知させるために。
俺は全員に今まで起こった事、異世界から来た事、全てを話した。
そしてこの空気である。
「せんぱ~い、何か空気重いんすけど…」
俺以外に唯一、心や記憶を詠み全てを知っている茶髪の少女がこの空気を破る。
「ちょっとあんた、ナナシにくっつかないでよ」
「え~なんでっすか~?もうえっちしたんで恋人みたいなもんだよ、新聞社にも妻って言っちゃったし」
「それはあんたの能力を貰うためでしょ、大会ではあんたが勝手に宣言しただけみたいだし」
「違いますぅ~!終わってもずっとせんぱい抱きしめててくれたもん!」
「そんなのアタシは何回もされてるわよ!」
バチバチバチッッ…
初顔合わせのアイとこころがなんか揉めている、いや俺のせいなんだろうけど。
まぁこの二人は少し放っておいてもいいか…
全部俺の事情をわかってて一緒にいてくれてるわけだし…。
「……」
問題はこの男、佰仟だ。
今まで完全に騙していたようなものだから。
正直殺されても文句言えない。
俺は土下座をする。
「いや、そこまでする必要ないでしょ」
「そうっすよせんぱい。この人勝手にせんぱいの女装に惚れただけっすよね?」
女装じゃないし、この二人ケンカしてたんじゃないのか。
「だけどずっと真実を言えなかったんだ、利用していたようなもんだ。何をされても仕方ない…全部俺のせいだ」
「……」
佰仟はずっと黙っていた、心も色々混乱しているようで読みとれない。
「すまなかった佰仟…」
俺は頭を下げ謝罪する。
長い沈黙の後、ようやく佰仟が口を開く。
「一つ、お兄さんとナナさんに聞きたい」
「いや…お兄さんじゃないんだけど」
話を聞いていたのか?
「だが、先にあなたがこの世界に来て女神と出逢いナナさんが産まれた。それはつまりあなたが兄ということだ」
……
………うーん、そうなのかな?
「何この人…気持ち悪っ」
こころが言ってはいけない事を口にした。
アイも同じ事を考えていたが既に金銭の面で佰仟には世話になっていたので何も言わなかった。
「…それで?」
「…これからも…ナナさんにとって…俺は必要だと思うか?」
「勿論だ」
これに俺は即答する。
ナナだけではない、俺にとっても。
その能力はいうまでもないし、何よりいいやつだ。
これから世界を廻る旅に是非同行してほしい。
それをあくまでナナシの姿で伝えた。
ナナの姿になってやりたいが、それは卑怯だと思ったから。
佰仟が望む時になってあげよう。
「………………………………そうか」ふっ
ザッ ザッ ザッ
バタン
そう言うと佰仟は微かに笑い、部屋を出ていってしまった。
「………」
「仕方ないっすよ、もう諦めましょ」
「そうよ、またどこかで会えるって」
二人が慰めてくれた。
「……」
……そうだよな、いいやつなんだ。
きっと俺達のピンチに颯爽と駆けつけてくれたりする……
バタン!
「……」
再び佰仟が部屋に入ってきた。
ピンチじゃないけど駆けつけてくれた。
別れから早すぎるけど。
「ナナさんに合いそうな服を選んでおいた、俺の力を借りたいなら交換条件だ。あなたはまだこの世界でどちらの性別か決まっていない、俺が仕事を果たしたらナナさんとして生きてもらう。そして、俺と結婚してもらう」
「「はあ!?」」
アイとこころが仲良く声をあげた。
「…あぁ、わかった」
「「えぇっ!?」」
この二人…仲良くなれそうだな、息ぴったしだ。
「これからもよろしくな、佰仟」
「ちょっと!ふざけてるの!?ナナシは男に決まってるでしょ!アンタとじゃなくてアタシと一緒になるの!」
「なんでっすか!それは決まってないっしょ!これからの旅で決まるんだから女神さんでもアイっちでもなく私を選ぶはずっす!」
「アイっちてゆうな!」
「ふっ、喧しい女達だ。この分なら貴様らに嫌気がさし彼が女として俺を選ぶのも時間の問題だな」
「「それだけはねーよ!」」
楽しいなぁ。
本当によかった、こんないい人達に出逢えて。
前の世界では考えられなかったな。
「ねぇナナシ!」
「せんぱいっ!」
「ナナさん!」
呼び方は様々だけど、ちゃんと名前を呼んでくれる。
よかった、名無しの権兵衛さん。
あなたはちゃんと、ここにいる。
これから世界中に名無しの権兵衛の名は広まっていく。
そう、俺達の冒険はこれから…
バタン!!
「はあっ、はあっ、はあっ……!!」
その時見知った顔が部屋に飛び込んできた。
「え、エレ!?」
「エレ…さん!?」
「?」
エレの事は一応話していたので全員知ってはいたが、佰仟とこころは初めて見る顔にきょとんとしていた。
俺とアイも何故エレがここにいるのかは全くわからない。
「ど、どうしたんですか?」
「どうやってここがわかったんだ?」
「何者だ?」
「……あ、この人がエレさん?なんか私とキャラ被ってないすか?」
それぞれがそれぞれの質問を投げかけるが、息を切らしたエレは答えられない。
俺達はエレが息を整えるのを待つ。
水を飲みようやく呼吸が落ち着いたエレがただ一言発する。
「た、助けてにゃ…ナナシ…このままじゃ…リーちゃんが……死んじゃうんだよ!」
どうやら打ち切り展開でなく、話はもう少し続くらしい。
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