名無しの最強異世界性活

司真 緋水銀

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第二章 命名研究機関との戦い

第四十四話 打診

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ヒョオオオォォォォォォォォォッッ…………

「……え」

牢獄の通路を風が通り抜ける。
俺の身体の中までも。

「……!……!」

しゃんが何かを叫んでいる、しかし辺りはどんどんと無音になっていく。
俺の身体には穴が開いていた、何故かはわからない。
何かが後ろから通り抜けた、その感覚だけが微かにあった。

「今、貴方達に動かれると色々と困るんです、大人しくしていて頂きましょうか」

ドサッ

俺は倒れる。
色々とわからない事だらけだった。

何故?
これはサイがやったのか?
今何をされた?
耐久値は変えていないのに…不意討ちとはいえ何故こんな傷を?

【氷の造花】

ピキッ…

パリィィィィンッッッ!!

「……な」

氷は傷を再生する事なく砕け散った。
俺は【願叶】のお友だちの巨人の事を思い出す、あの時も同じ事が起こった。

「無駄ですよ、私の剣には名前があります。その能力で貴方を貫いた時に能力は封じています」

物に……名前…?

「まぁ、致命傷は避けたので死にはしませんよ。さぁ医療室へ運んで下さい」

兵士達がバタバタと来て俺を運ぶ。

「…!…!」

しゃんは兵士達に拘束される。
何かを叫んでいる。…が口を塞がれているわけでもないのに…何故かしゃんの声は聞こえない。

そこで俺の意識は暗い闇の中へゆっくりと沈んでいった。

--------------
-----------
--------

「………」

白い天井、自分ごと呑み込んでしまいそうな真っ白な部屋。
その空間の色合いのせいもあってかふわふわと漂うような浮遊感を感じる…

(風邪とかひいた時こんな感じになるな…)

目を覚ました俺が第一に思ったのはそんなどうでもいい事だった。

ここは…?
研究所の医療室とやらか…
意識の最後にサイから聞いた台詞により推察する。
俺の手足は診療台らしきものにくくりつけられていた。
横に目線をそらすと治療の痕らしき道具があった。
俺に空いた穴は糸により塞がれている。
敵の手によって治療されたのか俺は……。

「あっ、起きたんだよっ?」

頭の上の辺りから声が聞こえる、どこかで聞いたような声だが朦朧としてはっきりしない。
無言でいると横に先ほど戦った不思議少女が現れた。

「どうしたんだよっ?まだボーッとしてるんだよ?」
「………ここは?」
「医療室なんだよっ、ぼくが看病したんだよっ!」
「……何故君が……?」
「あんな勝ち方ズルいんだよっ、あんな事されたら気になっちゃうんだよっ」
「………まぁ、とにかくありがとう…」

そう、それはただの事故なのだがこの少女とは色々あった。

--------------
-----------
--------


「…さぁ、再戦だ」

とは言ったものの壁に叩きつけられた衝撃で立ってるのがやっとだ。
やはりスキルがなければ普通の人間なんだなと実感した。
それに初めての試みなので、運の数値をあげたとはいえ何がどう転ぶか全くわからない。

「なら続けるんだよっ!ワンダーミラクルーっ……」

そう言いながら接近戦を仕掛けようと少女は拳を繰り出さんとする体勢で一気に俺へと詰め寄った。

「っ!!」

咄嗟に避けようとするが、速すぎて間に合わない!

【一十佰…】
「パァーーンチっ!!」

駄目だ、スキルも間に合わない!
運をあげたところで何も…

「わわっ!?」ガッ

突如足がもつれる少女。
自分の踏み出した足が軸足に引っ掛かったようだ。
もたれかかって前のめりになる、拳を繰り出そうとしていたためバランスも取れなかったようで俺に向かって倒れてきた。

「!?」

ちゅ

「!?」

少女は俺に勢い余ってキスをした、そしてそのままの勢いで二人重なり合い倒れこんだ。

Newskill
【不思議】…自身の想像する事象を何でも起こす事ができる、が、20%の確率で失敗し別の事象が巻き起こる。

どうやら計らずも相手のスキルを手に入れてしまったようだ。

「うわわっ!?な、何するんだよっ!?」

そう言って少女は起き上がり後ろに飛び退く。
何もくそも自分から飛び込んできたんだろうに。
しかし、説明文を見たらわかるがやはりとんでもない能力だ…想像しただけで何でもできるって反則すぎる。
20%もの失敗の確率…五回に一回の確率で思い通りにいかない事があるのは戦闘中には致命的だけど…。

……

そこで俺はある事に気付く。

(もしかして……)

ピピピピッッ…

【運】1000→1900

Skill
【不思議】…自分の想像する事象を何でも起こす、19%の確率で失敗し別の事象が巻き起こる。

やっぱりだ、失敗確率が下がった!
このスキル【運】と深く関わりがある!

「……」スッ

試しに俺は自分に手をかざし、スキルを使って(体力回復)と祈った。

【成功】

するとみるみる内に不思議と体は元気になった。

(またとんでもない能力を手に入れてしまった)

運の数値さえあげればほぼ失敗する事なく、どんな魔法でも使い放題。
そら恐ろしい能力になってしまった。

「ささささぁ!仕切りなな直しななんだよっ!」

とりあえずこれでこの少女を傷つける事なくこの場を切り抜けられそうだ。
俺は名前を知ってしまった少女に名乗る。

「俺はナナシ、能力はキスする事で相手の力を貰う事ができるんだ」

少女は驚く。

「は、はぁ?なんだよっ!何なのその能力…」
『少女は眠る』

俺は少女に向け手をかざし、魔法を使うように相手に起こしたい事象を口にした。

【成功】

「ふわぁ……」カクン…

ドサァッ…

不思議な事に少女はその場で眠ってしまった。

「zzz」
「………」

この能力も、非常時以外使わないようにしよう。
こんなの反則すぎる。

「さぁ、しゃん。行こう」

--------------

「……」

そうしてこの不思議な能力で牢獄の場所を見つけ現在に至るというわけだった。

「ぼくだってこの能力成功確率は半々なのに好き放題に操れるなんてズルいんだよっ!返すんだよっぼくの能力!」

そんな事言われても……
俺はスキルを発動する。

【氷の造花】

瞬く間に身体は再生し、傷も綺麗に消えた。

(もう能力は使えるのか…サイは名前のある剣によって俺の能力を封じたっ言ってたけど…一時的にだったのか?そして…あの巨人さんはサイが殺したのか?姫様も知っているのか?リーフはどこに行ったんだ?)

わからない事だらけだ。
この不思議少女は何か知っているだろうか?
知っていたとして教えてくれるかはわからないけど。

ガチャ

その時医療室の扉が開いた。
入ってきたのは
裏切りの護衛隊長サイであった。

「………」
「っ!サイっ……!!」

俺はもう動ける、油断もしない。
とにかく色々と聞きたい事があるが、一発殴りたい。

しかし…動こうとした瞬間、後ろにもう一人いる事に気付いた俺は止まる。
そして、その人物が声をあげた。

「やっほーお兄さん、久しぶり、大変だったね」

サイの後ろにいたのは転移する少年、【ブリッジ】だった。
少年は矢継ぎ早に次の言葉を紡ぐ。

「不思議ちゃん、ちょっと出てってくれるかな?この人と話があるんだ」

話?
今更何を話すって言うんだ?

「はぁいなんだよ」

あの少年の方が力関係が上なのかはわからないが、不思議ちゃんは言われた通りいそいそと部屋から出ていく。
部屋には三人が残る、辺り一層に静寂が訪れた。

「話って何だ?」

警戒したまま、とりあえず俺が話を切り出す。
悠長にしてはいられない、リーフの事もあるし…囚われたしゃんの事も気になる。

「うーん、どこから話すべきかなぁ…話す事はいっぱいあるんだけど…とりあえず一番重要な用件だけ言うね」

そう言って少年は一呼吸置き、俺に告げた。

「協力してほしいんだ、研究所を潰すためにさ」

俺は更にわけが解らなくなった。
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