名無しの最強異世界性活

司真 緋水銀

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第二章 命名研究機関との戦い

第五十四話 命名権

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未だに大剣に刺さる、まるでオブジェのような男にゼロは言った。

「何をしたか知らぬが……無駄じゃと言っておる」

スキル【零】

ゼロは幹部全員にスキルをかけた。
幹部達の氷がみるみるうちに溶けていく。

「同時に足の機能も殺されたみたいだけど…もうこの足は治せないーるる?」
「……無理じゃな、既に足の機能は殺されておる。事前に儂の能力をかけておかぬ限り…儂以外に零にされたものを戻す事はできん」
「ならあーたしに任せるーるる」

スキル【根性魂(サムライダマシイ)】

「あーんた達全員の魂を限界以上に強化したーるる、この戦いだけだけどこれで足は動くーるる、この戦いが終わったら二度と使いものにならないけど」

幹部達はスピリットの話が終わる前に既に男に向け動き出していた。

「充分だ」ダッ!
「限界を越え戦う、そんな僕も華麗だ」スッ!
「ナナシ…殺す…」ザッ!
「全員でかかるのじゃ!」

「アタシの大槌を喰らいなさいっ!」ブォンッ!

一人先行し、自身の巨体をも越える大槌をアサナトは構える。
それを後押しするように、四人の幹部達は後方からそれぞれのスキルを発動した。

【無限】短刀を全方位、隙間なく発射する。
【反射】全員にスキルを跳ね返すシールドを張る。
【恐祟】自身に近づく者の運を下げ、恐怖心を増幅する。
……そして、【零】、その能力は走り出すと共に全員のスキル発動時間を無くす。

つまり走り出した瞬間に結果……それぞれの行動の結末は決まった。

「ウォリァアアアアアッッ!!!」ゴォォォッッ!



「……終わりだ」


バタバタバタバタッッ……


「…………えっ……………え…………えっ!?」


幹部達は、既に全員その場に倒れていた。
スピリットにはわけがわからなかった、それは時間にして1秒もかかっていない。
スピリットの目には皆が、走り出した瞬間に足がもつれ倒れたようにしか見えなかった。

「…………」

剣に貫かれた男は微動だにしていない。
一体何が起きたのか、何をされたのか、自分が何か失敗したのか。
何一つわからなかった。

「み、皆何ふざけてーるる!?今ふざけてる場合じゃ……っ!!」

「もう、全員、死んでるよ」

ゾクッッッ……!

抑揚の無い声色で、剣に刺さった男が言う。
それがその様相と相まりスピリットに恐怖を感じさせる。

「そ、…そんなわけ…みんなっ!ふざけないでーるる!な、何をしたーるる!」

「ただ、『思った』だけだ。『心』で。皆『殺』すって」

スキル
【不思議】×【古心】×【殺】

命名【思心殺】思念を向けた対象を殺す事ができる。

「安心しろ、再生させるよ。手足全部の機能を殺して能力を殺した後に。それとも自分でやってみるか?できるんだろ?魂使い、ほら、やれよ」

男は斜めだった身体を起き上がらせ、天に垂直に立つ。

ぐぐっ…

そして突き刺さった大剣を片手で徐々に引き抜いていく。

「ひっ……ひいっ……!?」

ブシュウウッッ…!
男の身体からは完全に剣は抜け、代わりに血が噴き出した。

【氷の造花】

ザッ ザッ ザッ……

傷は一瞬で再生し、男は魂使いに近づく。

「ぐっ、うわあああああっ!!」

後ろから一人。【不滅】の名を冠した男が立ち上がり、ゆっくり歩く男に襲いかかった。

(そうだーるる!あーいつの肉体と魂は不滅!あーいつの相手してる隙に……っ)


「黙ってろよ」


スキル
【殺】×【氷】×【日射】

命名【殺氷日射】


「ぐっ!?うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

ジュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウッッ!
ザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザッッッッ!!

幾重にも重なった光は超高温を不滅の男に差す。
それに加え、高温と反する鋭利な氷が殺意をもって何百何千と降注いだ。
不滅の男の身体は傷つきながらも滅する事なく耐えていたが、それが逆に耐えがたい程の激痛を身体に与えた。

辺りに氷による切り傷から生まれた血飛沫が飛散する。

ブシュッブシュッブシュッブシュッブシュッブシュッブシュッブシュッブシュッブシュッブシュッブシュッブシュッブシュッブシュッブシュッブシュッブシュッブシュッブシュッブシュッブシュッ!!

「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁああぁぁあっ!?」

苦しむあまり、悶え蹲っても声だけは空間中にいつまでも響く。

「あっ…あっ、……あっ!ア、アサナト!!」

「ははは、何でだろうな?新しい力を手にしていい気分になってるからなのかな?少し攻撃的になった気がするよ。存分に苦しんでくれ」

「ひ、ひぃ……っ!?」

ザッ ザッ ザッ

男はアサナトに目もくれず、魂使いに近づいていく。

「あ、……あ、悪魔……っ……」

スキル
【ルール】×【神】

命名【神法】

「この能力は外部からの力に左右されない絶対的な神のルールを創り出す、つまり、俺にはもう何も効かない。俺がここの支配者なんだよ、ははは」
「ゆ、ゆ、ゆ、ゆるる、許して……」

ちょろっ……ちょろちょろろ……

恐怖のあまりスピリットはへたりこみ、股から出る黄色い液体は地面を濡らした。

「ははは、魂使いなら自分で恐怖くらい抑え込めよ!できるんだろ?記憶を読んで知ってるぞ!?リーフの事を所詮女っつった事も!だったらお前は何されても戦えるんだよなぁ!?俺が同じ目に合わせてやるから魂とやらを強化して戦えよ!さぁ!」

「ぅ…ぅう……ごめ、ごめんなさっ……」

--------------


「かはははは、成功だぜ。てめえに宿るもう1つの名前…人格が目ぇ醒ましてきやがった。名無しの権兵衛………改め…【ジョン・ドゥ】いや【ジョン・スミス】のが洒落てっか?まぁどっちでもいい。助けてやった甲斐があったぜ、こんな早く覚醒するとはな。未来の上司…女神になんざにやるかよ、もう一つの人格を主人格にしてこいつは俺が頂くぜ………………………ん?」


--------------

その光景を外から観察していた者は二名。
一人は天界から覗く破壊の神、破壊神。

そして、もう一名は……………

「あ………あ…………」
「……!リーフ!」

いつからそこにいたのかは不明だが、奥から歩いてきた囚われ身だったはずのリーフレインだった。

「よかった!無事か!?」

リーフの元へ走るナナシ、攻撃的だったもう一つの人格は影に潜んだようだった。

--------------

(ちっ……やっぱまだナナシの方に主導権があるか……まぁいいさ、こっからゆっくり引き出してやるぜ、かはは)

破壊神は観察をやめ、どこかに消えていった。

--------------

◇【リーフレイン視点】


「どうだ?あれがお前の仲間達だ、記憶を取り戻せ」

私をこの場へ連れてきた男が私の後方から話かけてきた。

「あ、…あれが……私の……仲間?し……知らない……あんな男…」

ズキッ…ズキッ

頭痛がする。
私には倒れている妹以外、ここに見知った顔はいない。
だが、その代わりにある光景が記憶を駆け巡る。

この誰だかわからない者達の何の為のかわからない戦いの場を見て。
そして、恐らくその中心人物らしき男を見て。
立ち塞がる者達を嗤いながら弄んでいるあのナナシとかいう人物を見て!
思い出した。

私は、あのような嗤い方をする男に牢で凌辱された。

「う、うわあああああっ!!近寄るな!貴様!」

チャキッ!

「!!」

私は双剣を構える。
心の何処かに違和感を感じながら。
そして…この男と相対する事に何故か既視感を覚えながら。

男と私はお互いに悲しそうな顔をしながら、向き合った。














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