名無しの最強異世界性活

司真 緋水銀

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第二章 命名研究機関との戦い

第五十六話 ただの出逢いから

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「うっ……うっ……ぅぅっ……ぐすっ……」

リーフは俺の腕の中でずっと泣いていた。

「……」

リーフに何があって、何を思ったのかは話せるようになるまで聞く気はないし、記憶も心も探らない。
だから俺は一言も話さず、だけど一刻も手を離さずリーフを抱きしめていた。
それがどれくらいの時間かはわからない。
もしかしたら一分くらいだったかもしれないし、もう世界の終わりを迎えるくらいまでの時間を過ごしたのかもしれない。

それくらいの静かな時間だった。


「どうやら全てを思い出したようだな」

リーフの後ろにいた男が静寂を打ち破る。
心と記憶を読んでもう知っていた、この男が『命名研究機関』トップ。
研究所の室長にして一連の事態を起こした黒幕。

名前は『ロヴ』

白衣を身に纏った姿は研究員としてのイメージからは程遠いほどのスマートな筋肉質。壮年ではありそうだが蓄えた髭と短髪の茶髪からは若々しさを感じる、ダンディズムという言葉が似合う風貌の男だった。
男は抱き合っている間もただただ俺達の事を何をするわけでもなく眺めていた。
何か…その情景を慈しむような……懐かしさを噛みしめるようなそんな瞳で。

その意味を、俺は既に知っていた。

ザッ

抱き合う俺達とロヴの間に目を覚ましたエレとアイが立ち塞がるように割って入る。
逆に倒れた幹部達と俺達の間には佰仟、殺、しゃん、不思議ちゃんが俺達を囲うように立ち塞がっていた。

「役に立てなくてすまない、ナナシさん。もう大丈夫だ、二度とあんな醜態は晒さん」

佰仟が俺に詫びるように言った。

「閃光騎士を連れて逃げるであります、時間稼ぎくらいならできるであります」

殺が覚悟を決めたように言った。

「そうにゃ、お詫びにそれくらいはさせてよぅ。リーちゃんと一緒に先に行って」

エレメントとアイはロヴと戦う気でいるようだ。

「今度こそ…お姉ちゃんの事…お願い」

「……娘は二人いたのか、成程…リーフレインが必要以上に名を高めたのも妹の存在を隠すためだったか……ヒトには目的を話しておくべきだったな、そうすればこんな遠回りをしなくて済んだかもしれん…………本当に生き写しのようだよ」

アイが俺に決意を託すと同時に、ロヴがそれを遮るようにアイを見て一人言を言う。

「……?どういう事?さっきそっちのフードの奴も言ってたけど……アタシとお姉ちゃんに何の恨みがあるのよ、何にしてもこっちももうアンタ達を許す事はできないけどね」

フードの初老、ゼロは依然倒れたままだ。

【氷の造花】

ピキピキ…

俺はゼロの命を再生する。

「!?な、何をやってるにゃ!ナナシッ!」

それに驚いたエレが声を荒げる、まぁ当然だろう。

「この方が事情を話しやすいと思って、さ……」

ゼロの記憶も読んで俺は知っている。
研究所……というより『ロヴ』と『ゼロ』……この二人の目的を。

「…………………ロヴ……もう……よいのか…?」

目を覚ましたゼロはロヴに向け言った。

「……あぁ、ようやく、わかった……随分と…遠回りをしたもんだ…」

研究所室長は遠い目をして、ゼロに言った。

「な、何が?どーいう事だーるる?し、室長…ゼロ…あーんた達は何を言ってるんだーるる?」

幹部であるスピリットでさえ、事情をわかっていなかった。
何故この侵入者達を捕らえるなり戦うなりしないのかと困惑している様子だった。

「さっぱりわからないわよ、ナナシ…どーいう事なの?」

アイはたまらず俺にそう言った。
戦う気であったアイ達は、動こうともしないロヴとゼロに毒気を抜かれたように立ち尽くす。

「………大丈夫…二人にはもう戦意はないよ……」

ロヴとゼロ………そしてリーフ。記憶を詠んだ俺。
真相を知る中で話を始める気があるのはどうやら今俺だけのようだ。
俺は自分の傷を治すことなく、少ない体力でこの騒動の奥にあった本当の目的……真実を語る。

「リーフとアイを……必要としたのも……有用な能力者を集めたのも……願叶を必要としたのも……」

『それ』を叶えようとしたため。
無論その手段ややり方は許される事ではないし、真相を知った俺もこの二人…ひいては研究所を許す気もない。
必ず償いはさせる。

「そもそも……研究所を創設した事さえも……」

研究所員、幹部すら利用した二人のたった一つの目的。

それは前の世界では到底目的たりえないもの。
何故ならそれを叶える事は、容易いから。

しかし、この世界でそれを叶えるのはとても難しく、徹底管理された中で目的を達成するのは困難だった。
死者を大勢出し、誰かを傷つけて、とんでもない遠回りしなければいけないほどの。

「全ては、ただ、ある人の名前を知りたかっただけだったんだ」


~~~~~~~~~

-34年前-

「やぁっ!!」

ズバッ!

「大丈夫、君。ケガしてない?」
「あ、あぁ。ありがとう……貴女は?」
「名前は……ないわ、ただのエルフの冒険家」

それは後に女帝と呼ばれるエルフの剣士と一人の男の

何の変哲もない出逢いから始まった。











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