一級警備員の俺が異世界転生したら一流警備兵になったけど色々と勧誘されて鬱陶しい

司真 緋水銀

文字の大きさ
23 / 207
序章第一節 警備員 石原鳴月維、異世界に上番しました。

二十一.山賊勇者

しおりを挟む

~~~~~~~~~~~~
『前回のあらすじ』
 飯食ってたら山賊の一味にからまれた、終わり。
~~~~~~~~~~~~

 周りで静かに飯を食っていた客達もこの騒動に騒ぎ出した。全く、マナーの無い山賊だ、いや、マナーという概念が屋根まで飛んで弾けて消えているやつらを山賊というのか?

「な、何をするんですか!! あなたたちは常識というものが無いんですか!?」
「あんだぁ? またアタシらに喧嘩売ってんのかブス! ゴミどもが目に映ると不愉快なんだよん!」

 ムセンが山賊に喰ってかかる。何かこのやり取りに既視感があるな、デジャブというやつか。

「ねぇねぇイシハラ君、この人達知り合い?」
「知らん、たぶん山賊だろう。ここにいるブスの顔面が物語っている」
「あー、本当だぁ。山賊っぽい顔してるねー」
「あぁん!? 誰なのんこのガキ!? またブスがいるのん!?」
「あたしはシューズだよー、よろしくねー山賊さん」
「誰が山賊だ!? このガキッ……」
「ちょちょちょ! ストップストップ! リィラさん落ち着いてくださいよ!」

 シューズとブスのやり取りをなんかチャラ男っぽいやつが止めた。
 なんだこいつ、チャラ男の侍? なんか既視感がある。チャラ男侍は俺に肩組みしてひそひそ話しかけてきた。

「なぁ、同じ異界召喚されたよしみで言うけどあんまこの人達と問題起こすなって。マジでこの人達に逆らうとヤベーんだって」
「いや、誰だよお前」
「俺だよ! お前らと一緒に召喚されたじゃねーか! リュウジンだよ!ほら!」
「………………………………………あぁ、お前か、何年ぶりだ?」
「2.3日前ぶりだよ! 本当お前変なやつだな!」

 そういえば俺とムセンと一緒に召喚されたやつがいたな。チャラ男侍のリュウジン。と、いう事はそっちにいる山賊はあの勇者一味か。
 勇者がいる事は覚えてたが顔がすっぽり抜け落ちてた。

「なぁ、俺はお前の事面白れーやつだから気に入ってんだって。だから勇者一行……って俺もだけどさー、喧嘩すんなよ。なはは、いやー俺だけこんな待遇されて申し訳ねーからさーなはは」

 なんだ、すっかり異界には慣れたようだな。こいつに至っては存在すら忘れてたからどうでもいいが。

「警備兵が俺のお気に入りの店使ってんじゃねえよ、おい店主、こいつら金だけ貰ってとっとと追っ払え」

 山賊勇者が店主に向かって言った。騒ぎを聞いて店の奥から出てきた店主が困り顔をしている。

「い、いえ、あの……お客様はお客様ですから……お金を払って頂く以上……」
「あ? おい、俺は『勇者』だぞ? 俺の言う事が聞けねーなら魔王討伐をこの店のせいで諦めたって構わないんだぜ?」
「そ……そんな……」

 なんか無茶苦茶言ってるな。今更だがこいつ本当に勇者か? どう考えても勇者って性格してないけど何でこいつが勇者って事にされてるんだ?

「こ……この勇者様は以前……魔王を倒した勇者様の御子息なんですよ……それから前勇者様の没後……新たに誕生した魔王討伐に向け職業検査を行ったところ……この御子息様が『勇者の天職』だという事が判明したのですぅ……ですから魔王討伐を掲げるこの情勢では誰も勇者様に逆らえないんです……」

 スズキさんが小声で俺に言った。
 なるほどねぇ七光りか、だからこんな我が儘放題になってるわけだ。

「別にそんなにしてまで勇者にすがらなくても自分らで魔王とかどうにかすればいいだけだろうに」
「そ……それは……」
「はははっ! やってみろよ! 俺以外に魔王を倒せるやつがいるならな! 俺の親父も天職の勇者だったが魔王はそれでも苦戦するほどの次元の違う強さだったんだ! だが、天職の才の勇者だったからこそ喰らいつく事ができて倒す事ができた! 天職の才を持った大技術導士すら魔王には歯が立たなかったんだ! 天職の勇者以外に倒せるやつがいるかよ!」

 ほぉん、魔王ってのはそんな強いのか。大変だなぁこの世界も、まぁ俺には関係ない。
 勇者の言葉に呼応するかのように、周囲の客達も騒ぎ出す。

「そ、そうだ……勇者様に逆らってこの国が滅びたらどう責任とるつもりだ! 出ていけ!」
「そうよ! 警備兵! あんた達なんかいてもいなくても一緒なんだから……勇者様の機嫌を損ねないで!」

〈そうだ! 出ていけ!〉
〈勇者様に逆らうな!〉
〈〈〈出ーていけ! 出ーていけっ! 出ーていけ! 出ーてけっ!〉〉〉

 静観していた周りの客が一斉にコールし始める。おお、大歓声だな。パーティーでも始めるか、俺はパーティー嫌いだから帰るけど。

「………イシハラさん、皆さん。もう行きましょう、気分悪いです」

 ムセンが怒り顔で立ち上がる。まぁ満腹になったしもう用はないしな、望み通り出てってやるとしよう。

「なぁなぁそこの君」
「んー? アタシ?」

 勇者が何故かシューズに声をかけた、知り合いか?

「こんなやつらと一緒にいないで俺達と一緒に呑まないか? 結構タイプだから俺の相手してくれりゃ勇者一行に加えさせてやってもいいぜ?」
「勇者様、その娘……セーフ家の元、三女ですわよ? あの問題児として勘当されたっていう、ね」

 勇者の仲間の魔法使いっぽい女はどうやらシューズの事を知ってるらしい。

「関係ねぇよ、顔さえ良けりゃあ。なぁどうだ? まぁ勿論俺達と一緒になるからには役に立ってもらうけどな、その身体で……でもいいからさ」

 勇者はシューズの事を舐めるような目で見ている。気持ち悪いやつだな、キモいじゃなくて気持ち悪い。

「うーん、やめとくよー。だってあなたに全然ピンと来ないもん、それにアタシもうこの人と結婚するからダメだよー」

 シューズがわけわかんない事を勇者に言って俺に絡まってくる。何決定事項みたいに言ってるんだこいつ、俺はまだ決めていない。

「…………はっ! 流石警備兵の連れだ、底辺には底辺がお似合いって事だな! 馬鹿な選択したな! とっとと目の前から消えろ!」
「そうなのんブス共! 次会ったら街から追い出してやるから覚悟しとくがいいのん!」
「うふふ……ごめんなさいねぇ、そういう事だから。じゃあ、ね」
「あ~あ、だから言ったのによ。まぁしゃあねぇか、じゃあなお前ら。せいぜい達者で暮らせよ」

〈〈〈出ーていけっ! 出ーていけっ!〉〉〉

「……っ!」
「…………」
「んー、なんかやだなぁ…」

 三人はいたたまれない顔をしている、まぁ仕方ない。この世界がこいつらを、というか勇者を信奉してる以上他に選択肢はないだろう。
 さっさと帰って寝るとしよう。








しおりを挟む
感想 34

あなたにおすすめの小説

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最強賢者の最強メイド~主人もメイドもこの世界に敵がいないようです~

津ヶ谷
ファンタジー
 綾瀬樹、都内の私立高校に通う高校二年生だった。 ある日、樹は交通事故で命を落としてしまう。  目覚めた樹の前に現れたのは神を名乗る人物だった。 その神により、チートな力を与えられた樹は異世界へと転生することになる。  その世界での樹の功績は認められ、ほんの数ヶ月で最強賢者として名前が広がりつつあった。  そこで、褒美として、王都に拠点となる屋敷をもらい、執事とメイドを派遣してもらうことになるのだが、このメイドも実は元世界最強だったのだ。  これは、世界最強賢者の樹と世界最強メイドのアリアの異世界英雄譚。

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

男が英雄でなければならない世界 〜男女比1:20の世界に来たけど簡単にはちやほやしてくれません〜

タナん
ファンタジー
 オタク気質な15歳の少年、原田湊は突然異世界に足を踏み入れる。  その世界は魔法があり、強大な獣が跋扈する男女比が1:20の男が少ないファンタジー世界。  モテない自分にもハーレムが作れると喜ぶ湊だが、弱肉強食のこの世界において、力で女に勝る男は大事にされる側などではなく、女を守り闘うものであった。  温室育ちの普通の日本人である湊がいきなり戦えるはずもなく、この世界の女に失望される。 それでも戦わなければならない。  それがこの世界における男だからだ。  湊は自らの考えの甘さに何度も傷つきながらも成長していく。  そしていつか湊は責任とは何かを知り、多くの命を背負う事になっていくのだった。 挿絵:夢路ぽに様 https://www.pixiv.net/users/14840570 ※注 「」「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  二月から週二回更新になります。お気に入り・感想、宜しくお願いします。

処理中です...