一級警備員の俺が異世界転生したら一流警備兵になったけど色々と勧誘されて鬱陶しい

司真 緋水銀

文字の大きさ
24 / 207
序章第一節 警備員 石原鳴月維、異世界に上番しました。

二十二.夕暮れの決意

しおりを挟む


 追い出されるようにレストランを後にした俺達はスズキさんの提案で門の外の景色が展望できる高台区画にある緑に囲まれた広場のベンチに腰かけ一休みした。

 ほほぅ、手入れされた草木をそそぐ風が爽やかだ。もうじきに夜が来る事をここから見渡せる地平線が物語る。普段はここでガキ達がきっと遊んでいるのだろう。綺麗な公園、というよりかは庭園って感じがする。
 そろそろ日も沈むであろう今は俺達以外に誰もいなく、そそぐ風に揺れる緑達の独奏が辺りに響いている。さすがスズキさんだな、街のいいスポットをよく知っている。

「…………………」

 ムセンはレストランを出てからずっと黙りっぱなしだ。一人でベンチに腰かけうつむいている。スズキさんもあのシューズさえもムセンのその雰囲気を察してか夕暮れの景色に目を移し黙り込む。そうして数分経ったところ、うつむきながらムセンが言葉を発した。

「…………私、ダメですね……変わろうとしていたのに……あの人達に何も言えませんでした……」
「………そんな……私だって……勇者様達に気圧されて……何も言えていませんよ……ムセン君が落ち込む事は……」
「……いえ、スズさんとシューズさんは私達に巻き込まれただけです。私達があの人達に目をつけられているから……本当にごめんなさい……」
「ムセンちゃんが謝る事ないよー」
「そ、そうですぅ、ムセン君は何も悪くありません!」
「……私、この世界の事を何も知ろうとしていませんでした……勇者という職業も……それに魔王という脅威が皆の安寧を脅かしている事も……異界から来た私には関係ないと……でも……この世界の方々は懸命に生きていて……勇者という職業にすがるしかなくて……それを考えたら何も言えなくて……………すみません、何が言いたいのかわからなくなってしまいましたが………でも……私……悔しくて……」
「………ムセン君……」

 ムセンはそう言って益々(ますます)落ち込んでいった。スズキさんもシューズもそれを見てかける言葉を失っている。

「……すみません……嫌な事に巻き込んだ上……気まで使わせてしまって……本当……私……」

 そんなムセンの頭に俺は手を乗せた。

 そしてムセンの頭に髪飾りをつける。ムセンは何故か召喚された時から頭には何もつけていなかった。身体はパイロットスーツに包まれているにも関わらず、だ。
 それが凄く気になっていた。

「……え? えっ!?」

 普通SFのパイロット少女なら何かよくわからん3角形の髪止めみたいなのをつけたり電子的なヘッドホンをつけてたりするだろう。俺の勝手なイメージだけど。

「こ……これ……どうしたんですか……? イシハラさん……何故私に?」
「古着屋に置いてあったからついでに買った、安心しろ。安物で銅貨一枚もしなかったからちゃんと俺の金で払ったぞ」

 鉄製の盾を模した髪飾り。一番三角形ぽかったからこれにした。
 ふぅ、ようやくムセンが本物のSFパイロット少女っぽくなった。ずっと頭に何かが足りないような気がしてイライラしてたが、これで満足。まさに宇宙を駆けるスペースパイロット少女だ。

「………………ふふっ、デザインも何もかもまるで女の子にプレゼントするような代物ではないんですね、全くイシハラさんはもう少し女心をわかってあげた方がいいですよ、えへ、えへへへ……でも、ありがとうございます。えへへへ……」

 なんかニヤニヤしながら全否定された、何だこいつ。

「イシハラ君、ムセン君はとても喜んでいるだけですよ。怒らないであげてくださいね」

 スズキさんが俺に耳打ちした。何だこれで喜んでいるのか、何て感情表現が下手なやつだ。

「………本当に……イシハラさんは凄いですね。全く意図せず……色々な人の心を動かしてしまいます……私はきっと…あなたみたいになりたいんだと思います。でも、……絶対にあなたみたいにはなれないから……きっとそれで……」
「馬鹿かお前、俺みたいになってどうする」
「だってあなたは……あの人達に何を言われても全く動じたりしません、それどころか……やろうと思えばあの人達を黙らせる事も簡単にできたはずです。……本当に強い人の在り方です」

 本当にこいつには呆れさせられるな。何回同じ事を言わせるつもりだ。

「俺は強くない」
「そんなわけないじゃないですか……異界に来ても動じる事なく自分の思うがまま突き進んで……今日だって武器の審査で全ての武器に適性があったんですから」

 それはきっと何かの間違いだろう、俺自身がしっくりきていないのに適性のわけがない。まぁ、今は武器の事はどうでもいい。

「ムセン、試験で判ったがお前の方が遥かに強い」
「……そんなわけありませんよ……私はイシハラさんみたいに何でもできるわけじゃないんですから」
「俺は何でもできるわけじゃない。できる事をやってできない事は面倒だからやらないだけだ。だからお前の方が強い」
「………? すみません……よくわからないんですが……」
「俺の『強さ』の定義は『できない事をできるようにしたい』ともがく事だ、結果に関係なく。それは俺にはできない、だって面倒だから」
「……え?」

 俺はきっと、この世界の魔王をこれから先も倒さない。たとえそれで結果世界が滅びる事になっても、だって面倒だから。
 俺が魔王に通用する資格や技術や力やチートをもっていたとしても。何故なら俺はだらだらと日銭を稼いでだらだらと過ごしたいから。

「だが、お前はきっとこれから先も自分のできない事の壁にぶち当たってはそれを乗り越えようとするだろう。越えられる越えられないに関係なく、そう思う事自体が俺の思う『強さ』だ。俺は楽な壁のない道しか歩かない、ただそれだけだ」
「……壁を越えられるか越えられないかじゃなく……乗り越えようと……そう思う事自体が……『強さ』」
「だから何を落ち込んでるのかよくわからん、お前の言う強さってのはよくわからんが……そうなりたいんなら。今までと同じように今までやってきたように、そうなれるようまた進めばいいだけだろう」
「!!」

 こいつは前から私には出来ないとか何だとか言っていたが。俺についてきて試験を通過したり回復魔法を覚えたり確実に壁を乗り越えている。
 たとえ、仮にそれらができていなかったとしても。ついてこようと必死になって自分の適性ではない道を進んできた。

 それは、俺にはできない確実な『強さ』だ。

「だから落ち込んでる暇があったら前へ進め、進もうとしろ。今までずっとそうしてきてただろう」
「………………………………そう、でしたね。あなたはずっと、そうすればいいじゃんって言ってくれていましたね。……『考えたって無駄な事が世の中にはある、その分前へ進んだ方がマシだ』って」

 誰が言ったか知らないがいい言葉だな。

「………私、警備兵になりたいです。なります。今まではイシハラさんについていくだけでしたが……強くなって、魔王という脅威に怯える人達を……勇者という威光にすがるしかない人達を守りたいです。警備とは……そんなお仕事なんですもんね」

 まぁ、こんな世界だ。地球の警備員とは違う。勇者の手の届かない人間達を警備する、そんな仕事もきっとあるだろう。

「そしていつか……あの人達の鼻を明かしてやります。絶対!」

 ムセンは決意したような顔で沈みかける夕陽を真っ直ぐに視界に捉えた。こいつ、弱気で大人しい感じかと思っていたが意外と強気で負けず嫌いだな。
 そうだ、こいつは最初からそうだったな。

「ぅう……良かったですぅ……うぅ……」
「なんですだれおじさんが泣いてるのー?」
「イシハラ君とムセン君の言葉に感動致しまして……私も……ただ職に就く事だけに焦って……仕事内容など二の次でしたが……ちゃんと、警備という職に向き合わなくてはいけませんね!」
「うーん、アタシはそーゆーのわかんないけどー……でもアタシの直感は正しかったよ。イシハラ君が警備やるっていうなら……アタシはずっとついていくよー」
「イシハラさん、これからも……私と一緒にいて……色々と教えてください! 私もイシハラさんの力になれるよう……もっと強くなりますから!」

「断る」
「えぇっ!?」

 何を勝手にいい話風にして最終回っぽく締めようとしてるんだ。俺はまだまだやる事があるんだ、第一まだ職にもついてない。それにもう眠い、話はまた今度だ。

「………はぁ……全くあなたという人は……せっかく決意したんですから最後までビシッと決めてくださいよー……」

 ムセンが何か言っていたが眠くなった俺はそれを無視して疲れないように尚且つ早く帰れるように競歩で帰った。

「ちょっ!? 帰るんですか!? 待ってください! 歩くの速すぎますってば! どうしてご飯と寝たい時だけそんな急ぐんですか……待ってくださいー! ぐすっ……」
「待ってよーイシハラ君ー、一緒に寝よー」
「待ってくださいぃー、皆さん速いですぅ……ひぃひぃ……」
















しおりを挟む
感想 34

あなたにおすすめの小説

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最強賢者の最強メイド~主人もメイドもこの世界に敵がいないようです~

津ヶ谷
ファンタジー
 綾瀬樹、都内の私立高校に通う高校二年生だった。 ある日、樹は交通事故で命を落としてしまう。  目覚めた樹の前に現れたのは神を名乗る人物だった。 その神により、チートな力を与えられた樹は異世界へと転生することになる。  その世界での樹の功績は認められ、ほんの数ヶ月で最強賢者として名前が広がりつつあった。  そこで、褒美として、王都に拠点となる屋敷をもらい、執事とメイドを派遣してもらうことになるのだが、このメイドも実は元世界最強だったのだ。  これは、世界最強賢者の樹と世界最強メイドのアリアの異世界英雄譚。

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

男が英雄でなければならない世界 〜男女比1:20の世界に来たけど簡単にはちやほやしてくれません〜

タナん
ファンタジー
 オタク気質な15歳の少年、原田湊は突然異世界に足を踏み入れる。  その世界は魔法があり、強大な獣が跋扈する男女比が1:20の男が少ないファンタジー世界。  モテない自分にもハーレムが作れると喜ぶ湊だが、弱肉強食のこの世界において、力で女に勝る男は大事にされる側などではなく、女を守り闘うものであった。  温室育ちの普通の日本人である湊がいきなり戦えるはずもなく、この世界の女に失望される。 それでも戦わなければならない。  それがこの世界における男だからだ。  湊は自らの考えの甘さに何度も傷つきながらも成長していく。  そしていつか湊は責任とは何かを知り、多くの命を背負う事になっていくのだった。 挿絵:夢路ぽに様 https://www.pixiv.net/users/14840570 ※注 「」「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  二月から週二回更新になります。お気に入り・感想、宜しくお願いします。

処理中です...