一級警備員の俺が異世界転生したら一流警備兵になったけど色々と勧誘されて鬱陶しい

司真 緋水銀

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序章第二節 石原鳴月維、身辺警備開始

二十四.海老と卵とブロッコリーのサラダ

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〈ミドリ平原〉

 俺達は警備兵最終試験であるクソガキの依頼を達成するため通行証で門を出て街の外に来た。異界へ来て初めて街の外に出たが風景はまさしくファンタジー。スマホで『ファンタジー 風景』と検索すると出てくるようなそんな感じだ。

「わぁっ……! 綺麗な景色……イシハラさん! 見て下さいっ! 空の蒼も木々の碧も澄んでますよっ! ほらっ!」

 ムセンは初めて見るのかファンタジーの風景にはしゃいでいる。情緒が台無しなので俺は突っ込んだ。

「はは、可愛いやつめ、黙ってろ」
「えぇっ?! か……可愛い……ですか!? そんな……」
「でもムセンちゃん今黙れって言われてたよ?」
「シュ……シューズ君、それは言わないであけでください……」
「この人達本当に大丈夫かしらなのよ……」

 俺、ムセン、シューズ、スズキさん、クソガキはほのぼのした掛け合いでほのぼのと平原の中の砂道をほのぼのと歩く。

「不安なのよ……」
「エミリさん大丈夫? 疲れてないかな?」
「大丈夫なのよムセン、甘くみないでほしいのよ」
「そっかぁ、疲れたならお手手繋ごうか」
「大丈夫って言ったのよ! 話し聞いてないのよ!?」

 ムセンは甲斐甲斐しくクソガキの世話を焼いている。

「ふふ、ムセン君にすっかりなついてますねぇ……」

 あれはなついているのか。どう見ても過保護とそれを嫌がるガキにしか見えないが。まぁ、娘もいるスズキさんがいうならそうなんだろう。

「アタシは子供苦手だなー、何考えてるのかわからないから」

 シューズがお前が言うな的な発言をする。

「イシハラ君は好き? 子供」
「どちらでもない」
「そっかぁ、イシハラ君が欲しいならアタシ頑張るよ?」
「ちょっと! イシハラさんシューズさん! 子供の前で何て話をしてるんですか!」

 ムセンが俺とシューズの会話に割り込んできた。何て話も何も俺は返事しただけだろう。

「それよりも……この平原は比較的魔物の生息が少ないですが……目的地のネイズマヨ山を囲う『ブッコロリ森林』に近付くにつれ魔物が多くなっていきますから……用心して進みましょうぅ……」

 ネイズマヨにブッコロリ。腹減ってきた。

「スズさん、その山へはどれくらいで着くんですか?」
「徒歩でも半日もあれば着きますよ、ウルベリオン王都は山脈に囲まれた街なんですよ」

 なら今夜は野宿か。食料がどこかで手に入るといいんだけど。

「ところでさー、エミリちゃんが森で欲しい植物って何なの? あそこの森って結構強い魔物とかいて面倒なんだよー。冒険者ギルドとかに頼んだ方がいいんじゃないの?」
「シューズさんはその森の事をご存知なんですか?」
「うん、前にふらふら立ち寄った事あるんだー。日光浴しに」
「……何故そんな森に日光浴に行くんですか……それよりイシハラさん、冒険者ギルドって何でしょう?」

 何故俺に聞く。何か魔物討伐とかお使いとかお使いとかする便利屋達の集まりだろ、たぶん。おなじみゲームや漫画の知識だけど。

「……なるほど、魔物という存在がそこら中に跋扈(ばっこ)する世界ですから戦えない人は外を自由に行動する事ができない、それを代わりに行い報酬を得る職業ですか……素晴らしい職業じゃないですか」
「……勿論……最初は冒険者ギルドに依頼したなのよ……けど……門前払いされたのよ……」
「……え?」
「あたしのお家はお父さんがいないから……貧乏なのよ……王都の最果て区画にある貧民街に住んでるんだけど…そこに住むだけで精一杯なのよ……ウルベリオンの王様は優しくて……貧民からの税収は免除してくれてるけど……食べる事すらままならないのよ……」
「………エミリさん……」
「だから冒険者さん達に払う報酬があまり無かったのよ……依頼したけどそう言ったらギルドから追い出されて……」
「……冒険者ギルドの方が全員そうではないでしょうけど……やっぱり最低です!」
「そしたら警備兵協会の……さっきのお姉さんが声をかけてくれたのよ。『あたくし達がその依頼引き受けますね』って」

 なるほど、確かに俺達はまだ試験をしている身分だしこれも試験だから報酬なぞ貰えない。ガキは報酬を払わなくて済む。両者にとってお得なわけだ。俺達はガキのお守りをすれば試験通過になるんだし。

「……そんな経緯が……じゃあ、もしもあの時イシハラさんが難しい試験を選択していたら……エミリさんの依頼は……やはり、イシハラさんに任せて正解でした」
「それで? エミリちゃんが欲しい物って何なのー?」
「…………」

 ガキは恥ずかしそうにもじもじしている。そして、顔を赤らめながら少し申し訳なさそうに呟いた。

「お……お花……なのよ」
「お花?」
「その山の森にしか咲かない……『マタゴ花』っていう……実のなるお花なのよ……いつも一人であたしの為に一生懸命働いてくれてるお母さんに……プレゼントしたいなのよ……悪い!? なのよ!」
「………」

 ふむ、ネイズマヨにブッコロリにマタゴ。あと海老があれば完璧だ。
 まずい、何度も言うが腹減ってきた。そういえば昼飯がまだだ。

 ムセンは何か感極まったようで震えながらガキに抱きついた。

「悪くない! 悪くないですよ! 私達が無事におうちまで守りますからね! エミリさんはお母さんにちゃんとプレゼントしてあげてくださいね!」
「うぶぶっ! 苦しいなのよ! 助けてなのよ!」

 俺はシューズに話しかける。

「シューズ、何か魔物の気配が近くにあるから頼んだ。お前なら楽に倒せる感じの魔物だからな、俺は腹が減った」
「え? うん、イシハラ君の頼みなら何でも聞くけど……魔物? どこにもいないよ?」
「たぶん、直に近づいてくる。俺は空腹を抑えるため瞑想する」

 そう言って俺は集中する。そうしてないと全てが食べ物に見えて暴走してしまう。
 草が音を立てて揺れだしたがもうそんな事に俺は興味なかった。

 音と周囲の情報を無意識に拾いながら、何も思考しないようにした。

「ひいっ!? 皆さん! 出ました! 魔物ですよ!」
「あー、本当だーすごいねーイシハラ君」
「うぶぶぶ」
「魔物!? 人々を苦しめているというっ……魔王の眷族ですか! 許せません! 私達が相手です! 一体どんな姿で………………」


ポヨンッポヨンッ……

----------------------------
スライムが現れた!
----------------------------

「……………………………え?………あ、あれが………魔物…………ですか?」
「そ、そうですぅ! スライムと呼ばれている魔物ですぅ!」
「…………………………か、可愛いじゃないですか! 何ですかあれ! 水の塊ですか!? モチモチしてそうです! 不思議です! あれ生きてるんですか!? 目や鼻もないのにどうやって………」

「あ、ムセンちゃん。近づいちゃ」
「ムセン君! 近づいては駄目です!!」
「ムセン! 離れるなのよ!」

------------------------------------------
・スライムは体を伸ばした!
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「え?」

------------------------------------------
・そしてムセンに襲いかかった! ムセンはスライムに取り込まれた!
------------------------------------------

「ごぼっっっ!?がばっ !?」

「「ムセン(君)!!!」」
「あー、呑み込まれちゃったー……こうなると面倒だなぁ……」

 2.3.5.7.11.13.17.19.23.29………

 なんか騒がしいけど俺は素数を数えて集中していた。


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