27 / 207
序章第二節 石原鳴月維、身辺警備開始
二十五.宇宙の果て
しおりを挟む「ごぼっ!」
「どうしようなのよ! ムセンがスライムに呑み込まれたなのよ!」
「すぐに助け出しましょう! イシハラ君! シューズ君!」
「んー、待ってすだれおじさん。今あのスライムに攻撃する事はやめといた方がいーよー」
「な、何でなのよ?! どういう事なのよシューズ! あたしはお話でしか聞いた事ないけど……スライムって簡単に倒せる魔物じゃないのよ?!」
「うーん、たぶんそれは前魔王の時の情報だねー。魔物も前回の戦争の時より成長進化してるんだよー。人と関わってより厄介になったのかなぁ」
----------------------------
・スライムはムセンの身体にまんべんなくまとわりついた!
----------------------------
「ム、ムセン君の身体にぴったりと張りつきましたよ!? まるで……身体全体を包んでムセン君の形を型どっているかのように……!」
「うん、このスライムは人を覆(おお)って呑み込んだ後、その人を盾にするかのように顔、体、手足に張りつくんだよー。っていうか本当に盾にしてるんだよねー、敵に攻撃されないように身につけた悪知恵かなぁ。とにかくこの状態になるとムセンちゃんにもダメージがいっちゃうんだよねー……」
「ど、どうすれば良いのよ! ムセンが水の中にいるみたいに苦しそうなのよ! 呼吸ができてないのよ!」
「うーん、スライムだけにダメージを与える技術があればいいんだけど、アタシの今持ってる武器だと無理なんだよー。今それができるとしたらイシハラ君だけなんだけど……」
宇宙とは一体どこまで続いているのか、それを知ろうとするのは飽くなき探究心を持った人間だけかもしれない、それは人だけの特権であり、それ故に生まれる人だけの醜いエゴイズム。俺達に宇宙の果てを確認する術は、何世代人類が産まれ変わろうと皆無に等しい可能性だ。
「そのイシハラは何をやってるなのよ! 何かよくわからない顔をしてボーッとしてるのよ!」
「うーん、イシハラ君には頼まれたしなー。あまりイシハラ君の邪魔したくないなー」
「そんな事言ってる場合なのよ!? このままじゃムセンが死んじゃうのよ!」
----------------------------
ムセンはスライムに身体中を包まれて身動きがとれない!
----------------------------
「イシハラ! ムセンが大変なのよ! ボーッとしてないで助けてあげてなのよ!」
「……………」
「聞いてるのよ!? 仲間が大変なのに何やってるのよ!?」
「……………」
「……っ!! もういいのよっ!! やっぱり警備兵になんか頼んだのが間違いだったのよ!」
----------------------------
エミリは木の棒を拾い、スライムへと向かっていった!
----------------------------
「エミリ君っ! スライムに近づいては駄目です! 何を……っ!」
「もうあんた達には頼まないのよ! あたし一人でやるのよ! たとえムセンが傷ついても死んじゃうよりはマシなのよ!」
そう、しかしその探究心がなければ宇宙の果てなど誰も観測できない。皮肉な事に、神の領域を侵すような罪深き行動がなければ真実には決してたどり着けない。決して真実にはたどり着けそうもなく、罪深い行動にて真実を暴こうとする人類だけが、唯一、神の領域に足を踏み入れる事のできる存在でもあるのだ。
----------------------------
スライムはムセンを取り込んだままエミリも呑み込もうとする!
----------------------------
「いけない! エミリ君! 君も一緒に呑み込まれてしまいます!」
「やぁぁぁぁっ!!」
「つまり、行動は美徳。欲深く、罪深い人間こそが、絶対の観測者ということだな」
「あいたっ!?」
----------------------------
スライムに殴りかかろうとしたエミリの前にイシハラが立ち塞がった! エミリはイシハラにぶつかり尻餅をついた!
----------------------------
「イシハラ!?」
----------------------------
イシハラはムセンと共にスライムに取り込まれた!
----------------------------
「イ……イシハラっ!?……なんでなのよ!?」
「イシハラ君までが……呑み込まれてしまいました……」
「………」
「それを踏まえて空腹とはどうだろうか? 食への飽くなき欲求を考えるからこそ、生物は空腹となる。だとするならば、宇宙の真理を知ろうとする探究心と同じように、そこへたどり着こうとする意思がなければ空腹は抑えこめるのではないだろうか? つまりは『俺は全然食欲がないぜ』と自分を騙せば腹は減らないんじゃないだろうか?」
「まって? イシハラ君何か言ってるよ?」
「どういう事なのよ!? 何でイシハラは水をものともしないで普通に喋ってるのよ!? しかも難しいようですごくバカな事言ってるのよ!?」
やってみよう。
あー、腹一杯だ。朝に食ったフランスパンらしきものはやはり腹持ちがいいな。俺腹一杯だわー。
------------------------------------------
イシハラの腹の虫がなった!
------------------------------------------
無理だった。
当たり前だ、三大欲求を人間が制御することなんかできるか。
------------------------------------------
イシハラは瞑想をといた!
------------------------------------------
ん? いつの間にかムセンが目の前にいた。何コイツ溺れてるんだ?
そして何で俺まで水の中にいるんだ? よくわからんが、とりあえずムセンが苦しそうだからさっさと出してやるか。
俺はムセンを抱き抱え、剣を抜いて水を切り裂いた。
「ていっ」
水は辺り一面に散乱し俺達は水中から脱出した。ん? そういえばここは陸地だったな、何で俺達は水中にいたんだ? まぁどうでもいいか。
「ど、どういう事なのよ!? イシハラって何なのよ!?」
「それは……私達にもまだわかりませぇん……」
見るとムセンはぐったりしていて呼吸をしていなかった。水を飲み過ぎたのか、仕方ないな。
「ム、ムセン君は大丈夫なんでしょうか!? 早く回復技術をっ……!」
「でも回復技術を持ってるのはそのムセンちゃんだけだよー」
「ど、どうするのよ!? 教会の神官様のところまで行ってる時間はないのよ!」
全員慌てふためいているがこの世界には心肺蘇生の応急措置の概念とかないのか? 時間もなさそうだしやるしかないか。
俺はムセンを寝かせ、気道を確保した後。
人工呼吸を開始した。
「「「!!!??」」」
この手の事は警備員時代に嫌になるほどやらされた。AEDの使い方や緊急蘇生法は警備員の資格を取る際に必ず学ばなきゃならないことらしい。現場では熱中症やら事故やらが多いからな。
「イ、イ、イシハラは何をやってるなのよ!?」
「あー、いいなー。アタシもイシハラ君としたいなー」
「……………もしかすると……イシハラ君はムセン君に空気を送っているのでは…」
俺は何度かムセンに空気を送る。
「…………………………げほっ! ごほっ! ごほっ! げほっ!」
ムセンが気がついて咳き込む。
水を吐いたな。ムセンの着ているパイロットスーツは耐水性にも優れていてもう乾いているし、耐寒使用にも切り替えられるから後は身体さえ温められれば。
「聞こえるか? ムセン。俺が誰かわかるか?」
「…………はぁ、はぁ、イシハラ……さん…………また……助けてもらったのです……ね………ごめん……なさい…………ありがとうございます……」
意識もはっきりとしてきたな。もう大丈夫だとは思うが念のためどこかでゆっくり休ませてやるか。
「スズキさん、近くに村や町なんかはありますか?」
「は、はい! 小さな村ですがここから三十分ほどのところにありますぅ!」
「とりあえずそこへ行って休ませよう、エミリもいいか?」
「………………もちろん、なのよ」
ということで俺達はいきなり寄り道する事になった。
0
あなたにおすすめの小説
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
最強賢者の最強メイド~主人もメイドもこの世界に敵がいないようです~
津ヶ谷
ファンタジー
綾瀬樹、都内の私立高校に通う高校二年生だった。
ある日、樹は交通事故で命を落としてしまう。
目覚めた樹の前に現れたのは神を名乗る人物だった。
その神により、チートな力を与えられた樹は異世界へと転生することになる。
その世界での樹の功績は認められ、ほんの数ヶ月で最強賢者として名前が広がりつつあった。
そこで、褒美として、王都に拠点となる屋敷をもらい、執事とメイドを派遣してもらうことになるのだが、このメイドも実は元世界最強だったのだ。
これは、世界最強賢者の樹と世界最強メイドのアリアの異世界英雄譚。
クラスの陰キャボッチは現代最強の陰陽師!?~長らく継承者のいなかった神器を継承出来た僕はお姉ちゃんを治すために陰陽師界の頂点を目指していたら
リヒト
ファンタジー
現代日本。人々が平和な日常を享受するその世界の裏側では、常に陰陽師と人類の敵である妖魔による激しい戦いが繰り広げられていた。
そんな世界において、クラスで友達のいない冴えない陰キャの少年である有馬優斗は、その陰陽師としての絶大な才能を持っていた。陰陽師としてのセンスはもちろん。特別な神具を振るう適性まであり、彼は現代最強の陰陽師に成れるだけの才能を有していた。
その少年が願うのはただ一つ。病気で寝たきりのお姉ちゃんを回復させること。
お姉ちゃんを病気から救うのに必要なのは陰陽師の中でも本当にトップにならなくては扱えない特別な道具を使うこと。
ならば、有馬優斗は望む。己が最強になることを。
お姉ちゃんの為に最強を目指す有馬優斗の周りには気づけば、何故か各名門の陰陽師家のご令嬢の姿があって……っ!?
生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。
水定ゆう
ファンタジー
村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。
異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。
そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。
生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!
※とりあえず、一時完結いたしました。
今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。
その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。
勇者パーティーを追放されたので、張り切ってスローライフをしたら魔王に世界が滅ぼされてました
まりあんぬさま
ファンタジー
かつて、世界を救う希望と称えられた“勇者パーティー”。
その中で地味に、黙々と補助・回復・結界を張り続けていたおっさん――バニッシュ=クラウゼン(38歳)は、ある日、突然追放を言い渡された。
理由は「お荷物」「地味すぎる」「若返くないから」。
……笑えない。
人付き合いに疲れ果てたバニッシュは、「もう人とは関わらん」と北西の“魔の森”に引きこもり、誰も入って来られない結界を張って一人スローライフを開始……したはずだった。
だがその結界、なぜか“迷える者”だけは入れてしまう仕様だった!?
気づけば――
記憶喪失の魔王の娘
迫害された獣人一家
古代魔法を使うエルフの美少女
天然ドジな女神
理想を追いすぎて仲間を失った情熱ドワーフ
などなど、“迷える者たち”がどんどん集まってくる異種族スローライフ村が爆誕!
ところが世界では、バニッシュの支援を失った勇者たちがボロボロに……
魔王軍の侵攻は止まらず、世界滅亡のカウントダウンが始まっていた。
「もう面倒ごとはごめんだ。でも、目の前の誰かを見捨てるのも――もっとごめんだ」
これは、追放された“地味なおっさん”が、
異種族たちとスローライフしながら、
世界を救ってしまう(予定)のお話である。
~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる
静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】
【複数サイトでランキング入り】
追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語
主人公フライ。
仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。
フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。
外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。
しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。
そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。
「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」
最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。
仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。
そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。
そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。
一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。
イラスト 卯月凪沙様より
レベルアップは異世界がおすすめ!
まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。
そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる