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序章第二節 石原鳴月維、身辺警備開始
二十八.女騎士アクア・マリンセイバー
しおりを挟むだもんと発した女騎士は、長い回想を俺に語り始めた。俺は適当に回想話をダイジェストにして頭にまとめてみながら、長すぎるので寝る事にした。
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だもん女、アクアが騎士になりたいと思ったのは十二才の時らしい。
アクアの家は料理店を営んでおり、自分もこのまま家を継いで料理人になるんだろうなって幼いながらにそう感じていた時期だと語った。
アクアの両親は古いタイプの人間だったようで、『女は家庭を守るべき』って幼いアクアにずっと言っていたらしい。そして料理の技術を習わせた。
別にそれが嫌だったわけじゃなかったらしいが、多感な時期なうえ反抗期でもあったせいなのかーーただ女性ってだけで生き方を決められるのには無性にイライラしていた、とアクアは怒り顔を滲ませる。
だが、別の生き方なんて教わってなかったし夢もなかったアクアには、自分のその人生から抗(あらが)うキッカケが見つからなかった。だから、両親から言われるがまま……女としての幸せな生き方を身につけていたらしかった。
そんなアクアに転機が訪れたのは、そう、まさにそんな十二才の時。
両親が経営する料理店に来ていた山賊の一味が料金を踏み倒そうと店で暴れだした。料理長だった父親もウェイターだった母親もそれを止めようとして、怪我をして血まみれだったらしい。
幼かったアクアにトラウマを植えつけそうなそんな光景から救ってくれたのが、当時、王国騎士序列1位だった女騎士【ジャンヌ・シャインセイバー】という騎士。
宝ジャンヌとやらはちょうどたまたま店に訪れて、息をするかのように山賊達を蹴散らして、アクアの両親に回復技術を使って全快させて、料理を美味しいと言っていっぱい食べて、自分の分と山賊達の飲み食いした料金の分までお金を置いて帰っていったらしい。
たったそれだけ。
だが、それだけでアクアが騎士を目指す理由になるには充分すぎる出来事だったようだ。
*
両親の反対を押し切って、そこからアクアは騎士を目指した。
古い考えだった両親ではあったが、山賊の一件で宝ジャンヌに救われてからは騎士を目指す事について強くは言えなかったようだ。
アクアはそこからめっちゃ修行したらしい、宝ジャンヌみたいに強くなりたくて。
騎士に必要な色々な資格や検定を取るために寝る間も惜しんで勉強もした。宝ジャンヌみたいに、誰かを守りたいという原動力を基に。
*
それから四年。
数々の属性検定や資格技術を取得したアクアは満を持して、『騎士試験』に挑んだ。
自信はあったようだ、魔王時代だった事もあって色々な種族の魔物を一人で倒せるようにもなった。
宝ジャンヌにはまだまだ全然届かなかったらしいが、山賊だって一人で蹴散らせるようになった。もう、その時点でただの女の子じゃないな。
そんな気持ちで挑んだ騎士試験の結果は、不合格だった。
理由は、『女』だからとアクアは言った。
騎士の採用には騎士の【適職】の才以上の持ち主ではないと駄目だと言われたらしい。女で騎士の【適職】の持ち主は極稀のようだ。
修練さえ積めば、男性ならば後天的に騎士適性が発現する事もあるらしいがーー女性はいくら鍛えても後天的に騎士適性が発現する事はほぼ皆無だと試験官に言われた。根本的な体の作りや戦闘センスが男と女ではまるで違う、とも。
宝ジャンヌは生まれつき騎士の【天職】の持ち主だったらしく、だから女性騎士になれたのだった。
当時、女性騎士は世界中でも指で数える程しかいなかったようだ。
騎士は技術もさる事ながらーー『力』ーー純粋なる腕力、体力も兼ね備えていなければならない、と。それが、男と女ではまるで違う、とアクアは悲しく呟く。
失意の中、試験官が放った言葉は、慰めであったのか、嘲笑であったのか俺にはわからない。だけどそれは今でもアクアの中に大きな傷として残っている、と。
『戦場に出るのは男の仕事、女は家を守っていればいい』
アクアはその日、一晩中泣き、枕を濡らし尽くしたようだ。
*
それでもアクアは諦めなかった。
それからは、自分でもおかしくなる程に、狂気に染まる程に、それまでしてきた修練が子供のお遊びかと思える程の鍛練に励んだと言った。
何回も死にかけたらしい。
だが、甲斐あってか決死で挑んだ二年後の騎士試験に見事に合格ーー騎士見習いになる事ができた。
歓喜した。ようやく、女性としての自分が認められたんだと。ようやく宝ジャンヌの足元に追いつく事ができたんだ、と。
その時は当然、そう思ったようだ。
だが、それはアクアの勘違いだった。
アクアが受けた騎士試験は前回よりも、今までのどの騎士試験よりも基準が甘かったと、後で知らされたらしい。
理由は、新たな魔王の誕生及び騎士や兵士の人材不足に依るもの。
そう、アクアはお情けで、人手が足りないから騎士になれたのだ。
猫の手でも借りるように、ある程度の基準値があれば女性だろうと騎士になれる時代が到来したから。
アクアには、相変わらず、騎士の才能は発現していなかった。
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「………それからも私は言われ続けた、『女にしては強い方だ』『適性がない割には頑張っている』『しかしやはり戦場には出せない、敵に捕らえられ慰み者にされれば機密情報を簡単に渡す恐れがある、女だから』とかね」
「………」
「だから私は心を押し殺すしかなかった、恐れを与え、慈悲をなくし、『冷笑騎士』なんて呼ばれる程、冷たく演技もした。そうすれば……男だ女だなんて言っている連中を黙らせる事ができるんじゃないかって」
「………」
「もちろん鍛練も欠かさなかった、そうして私は序列12位まで登り詰めた……あなたは馬鹿にするだろうけど……そうした結果が今のこの私なの、それを笑うのは許さない」
「………」
「……けど……私のこの演技を直ぐに見抜いたのはあなたが初めてよ。騎士になってこの演技を始めてから……皆私から遠ざかるか、怖がるか、変に信奉するかだけだったもん。だから話したの、わかったら手を離して」
「………………」
「ZZZZZZ」
「って何寝てるのよ!? 私の手を引いて走りながら何て器用な事してるのあなた!」
「zzz話終わったか?」
「っ! ええ! 終わったわよ! つまらない話で悪かったな! やはり話すのではなかった!」
「落ち着け、男言葉とごっちゃになってるぞ」
「貴様のせいでしょ!」
「あまりにも阿呆(あほう)らしくて聞いてられなかった、お前、今のその姿を自分に見せられるのか?」
「……っ?! はぁ!? 意味がわからないわよっ!」
「かつて助けられた自分はお前みたいな騎士に救われたのか、と聞いてるんだ」
「!!」
ハッとした表情をして、だもん女は何かを考えて始める。構わず俺は続けた。
「目的と手段が入れ替わってるんだよお前は。『守る』っていうのは命だけを指すものじゃないぞ。警備も同じだ、守る奴の気持ちも守らなきゃならない。要は『安心を与える』のも仕事って事だ。お前のやっている騎士仕事は確かにその強さで人々の命を守ってるようだが、救っているとはいえない。お前の憧れた宝ジャンヌは、お前を守っただけか?」
「……………………………」
神妙な面持ちで、長考しただもん騎士は、やがてゆっくりと口を開いた。
「………私は…………何をしてたんだろ……救うべき民を怖がらせて周りを見下して……あの人は、ジャンヌ様は……絶対そんな事しなかったのに……」
「別に今からでも遅くないだろ、気づいたんなら『今』お前は何をする?」
俺の言葉にーー憑き物が祓われたように、アクアは真っ直ぐな青い瞳で言った。
「ーーもちろん、民と、民の居場所を救うわ。だって私は……『騎士』なんだから! 手伝って! 警備兵!」
「警備兵志望だ、わかった。面倒だが手伝おう、笑った詫びだ」
「……え?」
「お前は勘違いしている、お前が十二位まで上がれたのはただお前が努力した結果だ。男みたいな振る舞いだとかは全く関係ない、お前が頑張ったから、それだけだ」
「……っ」
「悪かったな、十二位を馬鹿にして。凄いなお前、良く頑張ったな。そーいうやつは好きだ」
「~~~~~っ!!??」
アクアは顔を紅くして、涙目になった。どんな感情だ?
「だからお前を十二位騎士と呼ぶのはもう止めよう。お前はこれから『だもん』騎士だ。リアルにだもんなんて使う女初めて見た。よろしくな『だもん』騎士」
更に顔が真っ赤になった、だからどんな感情なんだそれは。俺にはわからなかった。
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