一級警備員の俺が異世界転生したら一流警備兵になったけど色々と勧誘されて鬱陶しい

司真 緋水銀

文字の大きさ
40 / 207
序章第二節 石原鳴月維、身辺警備開始

三十七.カーペットの裏

しおりを挟む

「な、何者なのアンタ!!?」
「無職のイシハラだ、よろしく」

 まったくでかい蜘蛛だな。ムセン達が蜘蛛の巣に張りつけられているところを見るに、どうやらあいつの仕業らしい。しかも言葉を話してるって事は魔王軍の隊長クラスってやつだ。
 あぁ、メンドい。この世は斯くも無情なものか、何故俺の休息時間を減らすのか。

 イライラするからあの蜘蛛は倒そう。

「そんな理由がなくても倒してください!」

 ムセンからツッコミがとんでくる。何だ、元気じゃないか。じゃあさっさと終わらせて少しでも長く寝よう、明日も早いんだ。

「御主人様御主人様! あいつには音が効かないっぴ! どうしたらいいっぴ!?」
「仕方ないから俺がやるさ、鳥は周りのまだいる雑魚蜘蛛を気絶させておいてくれ。そうすれば非常にはかどる」
「承知したっぴ! 任せるぴ!」
「イシハラ君、アタシは?」
「俺がでか蜘蛛を相手している間に三人を助けろ、火を使えば糸も燃えるだろう。離れてろ」
「うん、わかったー」

 俺は剣を抜く。ここなら多少広いから剣とか『技術』とかも使えるかな。さて、多少強い魔物の相手だし動かないわけにもいかないか。
 久々に体動かすな、もう二度と運動したくなかったのに。これを人生最後の運動にして、余生はボーッと過ごそう。

「人生最後にするの早くないですか!? お年寄りの発想ですよ!?」

 ムセンがうるさい。突っ込む元気があるんならさっさとそこから脱出せんかい。

「何者か知らないけど……なめてくれるジャナイ……アナタもワタシの操り人形にしてアゲルわよ!!」

 糸に吊られていたでか蜘蛛は闇に包まれた高い天井まで戻り、張ってあった蜘蛛の巣を縦横無尽に移動する。動きが速くてキモい。

 そしてでか蜘蛛のでかい尻から俺に向けて糸が発射される。俺は適当に剣を振って糸を切断する。

「かかったわね!!」
「あ」

 剣に糸がベッタリとくっついた。
 そして強引に引っ張られた、俺は力比べをするのが面倒だったためすぐに剣を離す。剣はそのままでか蜘蛛の元にいった。剣取られちった。
 そして再び糸が俺を襲う。

「イシハラさんっ!!!」

 ムセンが叫ぶ。しかし糸は俺の数十センチ手前で金属音を響かせながら弾かれた。

「なっ!?」

【イシハラ・ナツイ警備技術(ユニークスキル)『安全領域』】

 お馴染みカラーコーンを設置した俺の周囲には結界的なものが張られ、糸の侵入を防いだからだ。

「……やるワネ……結界で攻撃を防いでいるのね……だったらこれはどうかしらっ!?」

【魔王軍中隊長+蜘蛛特性技術『ポイズン・ミストルアー』】
------------------------------------------◇主観によるMEMO
・毒性のある糸を粒子状にまで細やかにする技術のようだ、壁や結界などに阻まれずに対象に届かせる事ができるらしい。
------------------------------------------

 俺の周囲の霧がサァッと音を立てながら変な色に変わっていく。霧は結界を通り抜けて中の空気も変な色に染めあげていった。

「ふふふ、この霧糸は毒……空気に浸透するほどコマヤカでどんな場所でも侵入してイクワ! そこに空気があるならね!」

 なるほどね。確かに安全領域といっても空気がなくなるわけじゃない、俺が死んでしまうからな。つまり空気感染的なものはこの『技術』じゃ防げない。そこに目をつけ、糸を空気に浸透するほどの粒子状にして結界内に侵入させたわけだ。頭いいなあのデカ蜘蛛。

「そしてこの毒霧糸は生物の体内に侵入してその生物の体をトカス……ふふ。徐々に徐々に……痛みと苦しみと共に体はどんどんとトケテいくのよ……安心して? ワタシの養分としてアナタはワタシにトリコンデあげるから」

 ブクブクと、まるで生物のように俺の体の血管が何かキモく沸騰し始める。うわ、キモい。
 関係ないけどカーペットとかに寝転がって肌にカーペットの跡とかつくと凄いキモい感じになるよな。そんな感じ。

「イシハラさぁぁんっ!!!」

 ムセンが叫ぶ。その下ではシューズと焼き鳥が蜘蛛達を順調に片付けていた。ふむ、あっちは大丈夫そうだな。
 あとは俺がこのデカ蜘蛛を片付けられるかどうか、か。
 さーてどうするか。いちいち倒しかたを模索しなきゃいけないなんて面倒にもほどがあるな、蜘蛛スプレーとかで簡単に死んだりしないかな。ホームセンターに行って買ってこなければ。
 あ、この世界にホームセンターってあるのだろうか? あんまりファンタジーには見た事ないけど。後で検索してみよう。

 そんな事を考えていると、沸騰していた血管がいつの間にか沸騰してなかった。

「…………え?」
「………え?」

「え?」

 ムセン、でか蜘蛛がきょとんとした顔で俺を見る。それにつられて俺もきょとんとした。
 何驚いてんだこいつら?

「……え? イシハラさん……毒が体に廻ったんじゃないんですか?」
「知らん、廻ってるんじゃないのか?」
「し……知らんって貴方の事ですよ!? か…………体は平気なんですか?!」
「大丈夫、いや、少しやる気ないな」
「それはいつもの事でしょう!?」

 失礼オブザキングだなあいつ。まるで俺はいつもやる気がないみたいに言うんじゃない。

「な、何故!? ワタシの毒は確かに効いているっ! なのに……っ何故平然としてイラレルのよっ!?」

 俺が知るかっての。何なんだどいつもこいつも。
 するとムセンを捕らえていた蜘蛛の巣が炎に包まれた。ジリジリと糸は燃え出し、ムセンはそのまま下へと落ちる。シューズがやったのだろう。下にいたシューズがムセンを受け止める。

「わわっ!?」
「大丈夫ムセンちゃん?」
「いたた……シューズさん! ありがとうございます! スズさんとエミリさんは!?」
「大丈夫だよー、もう助けたよー」

 蜘蛛の相手をしていた焼き鳥もこちらにやってきた。

「御主人様御主人様! こっちは終わったっぴ! みんな無事っぴよ!」

 鳥は雑魚蜘蛛を全て気絶させていた。中々やるじゃないか、みんな良くやってくれた。後はこのでか蜘蛛だけだな。

 俺はでか蜘蛛に近づいていく。

「ひ、ひぃっ!?」

「ねーねーフエドリちゃん、イシハラ君……毒にかかってるみたいだけど平気みたいだよ? そういえばスライムの時も水の中で平然としてたんだけど何か知ってる?」
「はいっぴ! ぴぃは御主人様に従事するために御主人様の『技術』の事は何でも知ってるぴよ! あれは御主人様の異常な精神力によって産まれた御主人様だけの『技術』だっぴ!」

「えっと……つまりどういう事なんですか鳥さん?」
「【天性】の才を持つ人はその性格からも『技術』を産み出せるっぴよ! あれは恐ろしい程のマイペースさを持った御主人様が身につけた性格による『天性技術』……【無之極意(マイペース)】っぴ!」
「……【無之極意】……?」

 なんか遠くで俺の悪口が聞こえる。

「御主人様の神秘的ともいえるマイペースさによって体のダメージを全く意に介さない……つまり、精神力が体のダメージを遅らせているっぴ! わかりやすく言うなら無の神経……『無神経』だっぴ! ある逸話では『断首された死刑囚がそれを認識していなかったため首だけで数分生きていた』なんて話があるっぴよ! それの極地……体のダメージを意に介していないためにダメージが体に追い付かないっぴよ!」

「な、何ですかそれ!? 気にしてないってだけでそんな風になるものなんですか!?……でもそれはつまり確実に傷は負っているって事ですよね!?」
「はいっぴ! だけど御主人様はその体内を地球時間で計測しているっぴ! 地球とここ【オルス】では時間の進み方が違うっぴ! 他にも御主人様の職業技術との組み合わせによってダメージが追い付くまでの時間が異常に長くなってるっぴ!」
「……ますます意味がわかりませんが……では、イシハラさんの体が毒を認識するまでにどれくらいかかるのですか?」

「おおよそ24時間だっぴ! 勿論その間に回復すればダメージは認識されないぴ!」
「無敵じゃないですか!! もう化物ですよあの人!」
「化物じゃないっぴ! 凄く無神経なだけっぴ!」

 やっぱりあの鳥は焼き鳥にするか。

------------------------------------------
【石原鳴月維.天性技術『無之極意(マイペース)』】
・身体的ダメージを精神により大幅に遅らせる。それにより致命傷でない限り傷を負っても24時間活動可能。その間、傷や病状は一切進行しない。
------------------------------------------





しおりを挟む
感想 34

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最強賢者の最強メイド~主人もメイドもこの世界に敵がいないようです~

津ヶ谷
ファンタジー
 綾瀬樹、都内の私立高校に通う高校二年生だった。 ある日、樹は交通事故で命を落としてしまう。  目覚めた樹の前に現れたのは神を名乗る人物だった。 その神により、チートな力を与えられた樹は異世界へと転生することになる。  その世界での樹の功績は認められ、ほんの数ヶ月で最強賢者として名前が広がりつつあった。  そこで、褒美として、王都に拠点となる屋敷をもらい、執事とメイドを派遣してもらうことになるのだが、このメイドも実は元世界最強だったのだ。  これは、世界最強賢者の樹と世界最強メイドのアリアの異世界英雄譚。

クラスの陰キャボッチは現代最強の陰陽師!?~長らく継承者のいなかった神器を継承出来た僕はお姉ちゃんを治すために陰陽師界の頂点を目指していたら

リヒト
ファンタジー
 現代日本。人々が平和な日常を享受するその世界の裏側では、常に陰陽師と人類の敵である妖魔による激しい戦いが繰り広げられていた。  そんな世界において、クラスで友達のいない冴えない陰キャの少年である有馬優斗は、その陰陽師としての絶大な才能を持っていた。陰陽師としてのセンスはもちろん。特別な神具を振るう適性まであり、彼は現代最強の陰陽師に成れるだけの才能を有していた。  その少年が願うのはただ一つ。病気で寝たきりのお姉ちゃんを回復させること。  お姉ちゃんを病気から救うのに必要なのは陰陽師の中でも本当にトップにならなくては扱えない特別な道具を使うこと。    ならば、有馬優斗は望む。己が最強になることを。    お姉ちゃんの為に最強を目指す有馬優斗の周りには気づけば、何故か各名門の陰陽師家のご令嬢の姿があって……っ!?

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

男が英雄でなければならない世界 〜男女比1:20の世界に来たけど簡単にはちやほやしてくれません〜

タナん
ファンタジー
 オタク気質な15歳の少年、原田湊は突然異世界に足を踏み入れる。  その世界は魔法があり、強大な獣が跋扈する男女比が1:20の男が少ないファンタジー世界。  モテない自分にもハーレムが作れると喜ぶ湊だが、弱肉強食のこの世界において、力で女に勝る男は大事にされる側などではなく、女を守り闘うものであった。  温室育ちの普通の日本人である湊がいきなり戦えるはずもなく、この世界の女に失望される。 それでも戦わなければならない。  それがこの世界における男だからだ。  湊は自らの考えの甘さに何度も傷つきながらも成長していく。  そしていつか湊は責任とは何かを知り、多くの命を背負う事になっていくのだった。 挿絵:夢路ぽに様 https://www.pixiv.net/users/14840570 ※注 「」「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  二月から週二回更新になります。お気に入り・感想、宜しくお願いします。

処理中です...