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二章第一節 一流警備兵イシハラナツイ、借金返済の旅
百四.ムキリョクの町②
しおりを挟む「なんだ……旅人か……? 話しかけるなよ……」
「………さぁ……? 知らないわよ……そんなの……」
「何もしたくないから……面倒くさぃ……」
俺達は総出でこの町『ムキリョクの町』の町民達の話を聞いた。
しかし、町民の誰もが活力の欠片も無く死んだ魚のような目をして同じような反応をする。ひどい奴は生きてるのか死んでるのかわからないくらいに呼吸も薄く、反応すらなかった。
余談だが『死んだ魚のような目』というが、生きていようが死んでいようが魚の目はそんなに変わらないと思うのは俺だけだろうか?
「まったく……どうなっていますの? 町人全員が気力の欠片もありませんことよ? ここは本当に町として機能していますの?」
「ぴぃ……今ムセン様が精神回復技術をみんなにかけているっぴ、けど様子が変わらないっぴよ。ということは町のみんなは本当に心の底から動く気力を失っているっぴ」
ふむ、町の名前の通り本当にムキリョク(無気力)の町だったとは。
話していると町の外れからだもん騎士がやってきた。
だもん騎士はこの町のお偉方、町長や管理しているシュヴァルトハイムの騎士とやらを捜してくると言っていたが話はついたようだ。
「駄目だ、町長も騎士も兵士も皆一様に同じ症状が出ている。話をするどころではない」
この町に来てムセンとですわ騎士は町民の態度にイライラしている様子だったが、だもん騎士も同じようだ。
「いくらなんでもおかしいですわね、魔物か何かの仕業と考えるのが自然ですわ」
「しかしアイコムが診断したところ身体異常は何も出なかったのだろう?」
「ムセンが治せるのは自分の培(つちか)ってきた技術の範囲内の回復だろ、この世界にある未知の病気には対応できまいよ」
「……なるほど、だとすればどうしたら良いものか……話を聞く事すらできないと何があったのかもわからないのだが……」
すると荷車から骨っ娘が降りてきた。
今までずっと寝てたのかよこいつ、まったく。
「ふぁぁ……どうしたアル? ずっと止まってるけど……あ、いつのまにか町に着いてるネ」
そうだ、こいつなら人の心に入り込めるんだからわかるんじゃないか。
「骨っ娘、町の人間に憑依するなり幽霊に聞くなりしてこの町に何があったか調べてくれ」
「ひっ……わかりました! 何があったか知らないけど貴方の言うとおりにしますネ!」
「……いつまでナツイに怯えているんだ…」
--------------
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「………わかったネ、町はほんの数日前に『ある魔物』の襲撃を受けたみたいアル。その魔物は人の気力を吸いとるような役職つきの魔物で……それから町人全員が動けなくなったみたいネ……です」
診断や治療を試みていたムセンも合流し、俺達は宿の休憩処で骨っ娘の診断結果を聞いていた。ちなみに宿の店主っぽいやつはカウンターみたいなところで学生が休み時間をつぶすような感じで寝ている。
ふむ、魔物がらみだったか。
てっきり五月病みたいなものがこの世界にもあってこの世界ではそれにならって『働かなくていい日』みたいなのがあって今日がその日で町人全員がだらーんとしていて『なーんだそういう事だったのかー』あっはっはみたいな感じでこのイベントは終了してくれると面倒じゃなくて楽だったのにというかもうそういう事にしておいてこの面倒くさそうなイベントはスルーしてもいいのではないだろうか町人に害はなさそうだしシューズの行方は次の町ででも聞けばいいだろうし。
「イシハラさんが町民よりひどい無気力な顔をしてます!!……いえ、いつもの事でした」
ムセンは俺に喧嘩を売った。
「度々寄り道をしてすまないが……ナツイ、知ってしまった以上放置はできない。その魔物とやらを討伐せねばなるまい」
言うと思った。
「しかし、それに時間をかけていては本末転倒だ。提案なんだが……ここは二手に別れてはどうだろうか? ここから港町まではぴぃ君の脚ならそう遠くない、一方は先に港町に行きセーフ・T・シューズの情報を掴んでもらう。もう一方はこの町の問題を解決した後にシュヴァルトハイム王都を経由し馬で港へ向かう」
ふむ、悪くない提案なんじゃなかろうか。
戦力を分散させるのはあれだが時間的制約がある以上仕方ないな。
「……そうですね、町の事は放っておけませんから……けどアクアさん、誰がここに残るんですか?」
だもん騎士は少し考えた後に言った。
「……相手は役職を持つ未知の魔物だ、完全な勝利を目指すためにはナツイの力は不可欠だ。だからナツイにはここに残ってもらいたいのだが……」
「わかった」
「え!?」
了承したところムセンが大声で驚く。
「なんだ?」
「い……いえ……色々と思うところが……」
「他の人選はナツイに任せたい、無論提案した以上……私が責任をもってここに残りたいところではあるが……ナツイの判断に委ねる」
何故面倒な部分を俺に任せるんだ。
「私が決めても良いのだが……私からいうと納得できない者もいるだろう? だからナツイに任せる」
だもん騎士はちらっとムセンとですわ騎士を見た。
「わ……私もここに残りたいんですが! 回復技術はきっと必要になると思うんです!」
「わたくしの技術で魔物なぞ片付けてさしあげますわ! わたくしがここに残りますわ!」
「ぼ、ぼくはいいアル! 早く次の町に行きたいネ!」
「じゃあだもん騎士と骨っ娘、お前らがここに一緒に残れ。ムセンと焼き鳥とですわ騎士は先に行け」
☆『魔物討伐』メンバー
・イシハラナツイ
・アクア・マリンセイバー
・リィ・シャンシャン
☆『情報収集及びシューズ捜索』メンバー
・ムセン・アイコム
・ツリー・ネイチャーセイバー
・ぴぃ
骨っ娘の憑依能力がないと魔物がどこにいるかもどんな奴かもわからないしな。それにだもん騎士は勝手に骨っ娘を連れて保護したんだから保護者責任がある、一緒にいなきゃダメだろう。
一方、焼き鳥は港町に急ぐのに必要だし、案内役兼戦闘役のですわ騎士は護衛に必要。これでいいだろう。
「「「ちょっと待ってください(アル)(待つのですわ)!!!」」
ムセンとですわ騎士と骨っ娘は抗議していたが余裕でスルーした。
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