一級警備員の俺が異世界転生したら一流警備兵になったけど色々と勧誘されて鬱陶しい

司真 緋水銀

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二章第三節.イシハラナツイ、〈続〉〈続〉借金返済の旅

■番外編.風天の魔女 ※シューズ視点

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「あなたの処遇は追って伝えます、それまでに犯した罪の重さをよく理解する事です。そして……マルクスに詫びなさい、あの世でね」

ガチャンッ! 

 久しぶりに立つ故郷の地、それがまさか牢の中になるなんて思いもしなかったな……と事態を甘く考えていた自分に腹がたつ。
 少しはお姉ちゃんと話が出来ると思っていたのに連行されている間は一言も口を聞けなかった。手足には錠をされ、顔は土嚢袋で覆われたあたしは行軍中も収容所に着いても口を開く事もできないままにすぐに牢に入れられた。
 暗く息苦しさを感じる誰もいない地下牢。強制収監所と呼ばれるこの場所は罪を犯した人以外にも様々な人達が閉じ込められるーー絶対君主制であり、職業差別が蔓延するこの国ならではの場所だった。
 たとえばレジスタンスの疑いがある人達、底辺職のレッテルを貼られながら上級職に逆らった人達……特別職でありながら制度に反発して下の者達に肩入れした人達。
 普通ならあり得ない独裁政治が罷(まか)り通っているのも……総てはこの周辺諸国全てを治める【帝王】と帝国所属の【神帝騎士団】、配下である隣国の属性技術集団【全属性技術魔統卿団】、帝国に協力している【風天の魔女ビューラー】率いる大精霊達、そして大陸を守護する盾の【守護貴族】と矛の最強軍隊【王国軍】を擁するイルムンストレア。この勢力が強すぎるから。
 勇者不在の今でも魔王軍を抑えられているのは、ほとんどがこの帝国軍のおかげだと思う。それほどまでに絶大な軍事力を有しているのがオルス最大のバレット大陸なんだ。

(……ムセンちゃん……緑の騎士さん……)

 あたしは港での出来事を思い出す。
 二人はどうして港まで来てくれたんだろう、お姉ちゃん達となにかあったみたいだけど無事なのか、と悪い予感に苛(さいな)まれる。
 すぐに船内に連れられたからどうなったのか全くわからないのが不安を更に増長させた。
 そんなあたしの予感は、地下牢に現れたーー聞き覚えのある羽根音と声の持ち主から告げられた真相により的中していた事を知った。

「ーーぴぃっ! やっとたどり着いたっぴ! シューズ様っ!」
「ーーっ!? 鳥さんっ……!!」

------------------------------------------

「……………そんな………みんな……なんで……?」

 鳥さんに事情を聞いて項垂れる。
 俯き、膝を抱えて声が出せなくなる。

 みんなが助けに来てくれた。
 ムセンちゃん、青の騎士さん、緑の騎士さん、諜報員の女の子ーーすだれおじさんやエミリちゃんや王様や軍師さんまでもが協力してくれて。
 勝手にいなくなって勝手に国に帰ったあたしなんかのために。

 イシハラ君まで……嬉しい。嬉しいけど……どうして? 

「ぴぃっ、みんながシューズ様に戻ってきてほしいっぴよ! ぴぃもそうだっぴ! 御主人様もそう思ってるっぴ! だから帰るっぴよシューズ様!」
「………………………無理だよ……あたしは……まだなにもしてない……なんの決着もつけないまま……帰るなんてできないんだよ………」
「ぴ……シューズ様………」

 せめてお姉ちゃんと話さなきゃ。
 今は確か職業ランク大会ーー〈プロフェッショナルバトルオリンピア〉の時季。この国における職業の【位置】を決める一大イベント。
 この国にいた時は偉い人達が賭け事の対象にして私服を肥やすっていうイメージしか無くて興味もなかった。
 けど、今の状況にしてみれば少し有難い。きっとあたしの処置を決めるのは後回しにされる、それはお姉ちゃんと話をするチャンスが作れるかもしれないって事。
 
「……鳥さん、ここから出てイシハラ君たちに伝えて。『あたしは大丈夫だからすぐにウルベリオンへ戻って』って」
「ぴっ!? 何を言ってるっぴシューズ様っ! そんなことできないっぴよ!」
「お願い………これはあたしの問題なの……イシハラ君達がそれに巻き込まれることなんかない……この国に来たらいくらイシハラ君でも無事じゃ済まない………」
「ぴっ!! 御主人様なら大丈夫だっぴよ! きっと全てを解決してくれるっぴ!」

(否定できない……確かにイシハラ君なら………事態を収めてくれるかもしれない。……でも『今の』イシハラ君じゃ物理的に絶対に解決できない問題が一つある……それだけは絶対にあたしが解決しなきゃいけない……)
 
 鳥さんを説得してどうにかしてこれ以上傷つく人が出ないようにしようとしたその時ーー誰もいないはずの牢の中から声がした。
 何処かの牢じゃなく、『あたし達のいる牢の中』から。

「ね? どう? シューズちゃん、信じてやんなさイシハラ君を。さてと一発お披露目するは、世にも不可思議すきま風。ひと度指降りゃあら不思議、あれ世あれ世と騒ぐ間に、現れますは奇々怪々」

 風が通り抜け、パチン、と音鳴ると突然ーーあたし達のすぐ前に人が現れた。
 驚くあたしと鳥さんが言葉を発する間もなく、突如現れたその【魔女】と使い魔らしき精霊が続けて言った。

「遅ればせの仁義、失礼さんでござんす。わたくし、生まれも育ちも魔界、縁あって、微力ながらもこの国に、協力すること幾星霜。カケダシの職もちまして大層な口上なれど、模倣技にてお目見えしやす。名を【ビューラー・アイチークファン・マジョルカ】ーー人呼んで【風天(フーテン)の魔女ビューラー】と発します。以後見苦しき面体お見知りおかれまして、恐惶万端引き立って、よろしくお頼み申します」
「ビューラー様、覚え立ての【役者】って職業のスキルが気に入ったのはわかりましたから普通に喋ってくださいませ。わかりにくいんですよ」
「えー面白いのに~、あ。ちなみに今の口上は【香具師(トークハックスター)】ていうマイナー職業のスキルをコピーしたものなんだけどさ、結構便利なんだよね。『魅了(チャーム)』まがいに人を騙せるスキルで猫さん毛だらけボロ儲け、ってね」

 【風天の魔女 ビューラー】との出会いが、これからのあたしの運命を大きく変える事になったんだ。
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