一級警備員の俺が異世界転生したら一流警備兵になったけど色々と勧誘されて鬱陶しい

司真 緋水銀

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二章第三節.イシハラナツイ、〈続〉〈続〉借金返済の旅

■番外編.風天の魔女② ※シューズ視点

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「ね? どう? 守護貴族の末子セーフ・T・シューズちゃん。話には聞いてたけどネットちゃんそっくりね」

 突然、風のように現れ口の上手い露店商みたいな自己紹介をした女の人は【魔女】と、そう名乗った。
 深い碧色の長い髪、背丈が凄く高くて低いあたしの体感的には2Mくらいあるんじゃないかって思えた。

「えーと、あなたが……【風天の魔女】さん……?」
「ええ、風の噂くらいで聞いた事はあるかしら? アタシが大精霊を従え帝国に協力している風天魔女【ビューラー】よ、宜しくね。この地に住み始めて大体200万年くらいだったかしら……」
「すごいねー」
「嘘よ、本当は200年くらいよ」
「そうなんだー」

 あたしと魔女さんはまるで旧知の仲みたいに掛け合いをした。魔女の逸話は当然知ってたけど……人々が恐れるような存在とはかけ離れている感じがしたから。
 
「ビューラー様、何故そのようなどうでもいい嘘を初対面の相手についたんですか?」
「シューズ様! 呑気に話してる場合じゃないぴ! 魔女から離れるっぴ!」

 鳥さんと魔女についている精霊さんが同時に突っ込んだ。鳥さんは何か怖がっている様子だ。

「あら、あなたは最近新たに産まれた精霊ね? 産まれたばかりなのに『中級試験』に合格したなんて凄いじゃない。おめでとう、今度合格記念パーティーをやりましょう」
「………………」
「ビューラー様、中級精霊は怯えています。そもそもそんな話をしにきたわけじゃないでしょう? 早く本題に入ってください」
「もう、相変わらずあんたは冷めてて可愛げがないわね~。最難関の四大精霊の資格を持ってるからっていつか気にいらなきゃポイって捨てちゃうわよ【シラフ】。まぁいいわ、アタシはシューズちゃんに話があって来たのよ」

 魔女さんと精霊さんは居直った様子でアタシがにそう告げた。飄々としてるその佇まいと雰囲気は、魔女が敵なのか味方なのか判別する思考すら曖昧にする。鳥さんは敵意を剥き出しにしてるけど……どう見積もっても勝ち目の薄い相手に警戒を続けている。

「その前にさ~、そこで聞き耳を立ててる【狙撃手(スナイパー)】の軍人さん? 乙女の秘密の話し合いだからどっか行ってくれない?」
「………はは、いやはや……完全に気配を消してたはずなんですがねぇ……流石魔女さんですや。しかしそーいうわけにもいかねぇんですわ、俺っちも命令でこの娘見張ってろって言われてるんでねぇ」

 魔女さんの向けた視線の奥から声だけが響く、牢のすぐ外から聞こえるはずなのに姿は一切見えない。けど、声は聞いた事がある。たぶんイルムンストレア王国軍の【最強の矛】の一人……まだあたしが軍にいた頃に会議とかで聞いた声だ。微かに記憶に残ってる。
 
「ふ~ん、随分余裕なのね。確か貴方……今回の大会に出るんじゃなかったかしら? 王国軍人所属で庇護されてる筈なのに一体どういう余興?」
「いやはや、やはり【風】の魔女さんにゃあ隠し事は出来ねぇですねぇ……えぇ、出場しますよ。いやなんでも名門貴族が事業で大損こいたらしくてね……その穴埋めに小遣い稼ぎが必要らしいんですわ。そういった都合でサブジョブの【狙撃手】の方の肩書きで急遽ねじ込まれた次第で……」
「あらそ。つまり安心してBETできる存在が必要になったてことね、裏で行われてる賭け事には常に金の亡者達が色んな利権絡みでイカサマしてるんだから無常なものよね。あぁつまらない……そして、アタシはそんな話をしてるんじゃないわーー」

 突然、空気が震える。
 見ると、魔女さんは明らかに不機嫌そうな顔をしていた。つい今の今まで普通に話していたにも関わらず、急に親の仇でも見つけたみたいに怒っていた。

「ーーアタシはどっか行ってくれないって言ったの。何でわからないかなー? アタシがここにいるだけで見張りは充分でしょお? すぐに察せよマヌケあぁ腹立つ腹立つ腹立つ」
「ビューラー様、狙撃手の方は既に退散されました」
「わかってるわ、やるわね彼。アタシが空気を変えるのをすぐ察して逃げたわ、天才よ。伊達に【狙撃手】の元祖やってないわ、生ける伝説ね。素晴らしいわ」
「………ビューラー様、貴女が風の向くまま気の向くままの適当な性格は重々理解しておりますが……最早、情緒不安定にしか見えません」
「失礼極まりない従者ね、まぁいいわ。それでシューズちゃん、話っていうのはね……」

 魔女さんは今あった出来事なんかどこ吹く風であたしに話を戻した。飄々としていて、何処か適当で、本当は何にも関心が無いといったその有り様は……あたしにイシハラ君の姿を思い出させる。
 
「お姉ちゃんのネットちゃんに会わせてあげよっか? ってまぁそんなとりとめの無い話なわけなんだけどーー」
「……………え?」

 突然の提案に驚きを隠せなかった。
 あたしには願ってもいない好機なんだけど、何で魔女さんが協力してくれるのかという疑問と不信感は拭えない。

「だって弁明すら聞いて貰えないなんて可哀想じゃない? 美少女姉妹なんだから仲良くなさい……と、まぁ優しい魔女さんは思ったわけ。どうかしら?」
「……うん、でもどうやって……?」
「立場上アタシも派手には動けないからね、貴女の家までアタシの技術(スキル)で連れてってあげる。長くはここを空けれないからそうね……10分くらいかしら。騒ぎになる前に言いたい事をお姉さんに話してどう決着しても10分立ったらここへ戻る、それでどう?」
「……………わかった」

 聞かれるまでもなく、既に答えは決まってる。
 お姉ちゃんにも話しておかなきゃならない事がある、まだ全部は話せないけど……あの鉱山で起きた『顛末(てんまつ)』を。

「ぴ! シューズ様! 行っちゃダメだっぴ! なにか嫌な予感がするぴよ! 御主人様がここに来るのを待っ……」
「もう、ダメよ中級精霊ちゃん。姉妹水入らずも邪魔したら……良い子だからオヤスミなさい」

【風天の魔女 技術(スキル) 『強制睡眠(ソヨカゼ)』】

「ぴっ!? …………………ぴ……………」
「鳥さんっ………………あれ………眠くなって………………」

 魔女さんが技術を使うと、鳥さんは眠り……続けてあたしも瞼(まぶた)が重くなる。
 瞳が真っ暗になる直前、魔女さんと精霊さんがした会話がかろうじて耳に届いたーーけど、頭には入ってこなかった。それが夢の中なのか現実なのか……わからないままにあたしは深い闇に呑み込まれた。

「ビューラー様、どうやらこの娘……まったく記憶にないようです」
「当然よ、そういう『契約』をしたもの。『アタシに関する記憶は消去する』ーーってね。さ、じゃあネットちゃんの所へ行きましょうか……どう反応するかしら」
 
 
 
 

 
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