一級警備員の俺が異世界転生したら一流警備兵になったけど色々と勧誘されて鬱陶しい

司真 緋水銀

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二章第三節.イシハラナツイ、〈続〉〈続〉借金返済の旅

百四十四.フラグⅢ

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〈古城(アジト)〉→→→→→〈オルベルク地方〉

「む~~……なんであーしにはなんも起きねーんだし……あーしもナッちんにイカせて欲しいのに~」
「ミチュリんさん! はしたないですよ! イシハラさんの指導は【警備兵】のみに伝わるもので他職には影響を及ぼさないと結論が出たじゃないですか、諦めてください!」
「ちぇー、いいもん。じゃああーしには直接シてもらうし、ナッちん今度一緒にお風呂入ろっ」
「ダメに決まってるじゃないですか! イシハラさんと初めて入るのは私です! もう約束したんですから!」

 馬車内はやかましい、快適なワゴンタイプでの優雅な旅路が台無しだ。
 アジトを立ち、行軍は三日目。
 三日経ってもまるで遠足一日目かのようにトラブルメイカー達は騒がしい、その元気をもっと有意義に使え。
 街道に沿って来たため道中は大したトラブルもなかった。さすがオルス最大の大陸と言ったところかーー男の子が大好きな朽ちた廃墟やら塔やら謎の洞窟やらが沢山ある。休日には旅行に来て中を探索するのも良いだろう。

「ウルベリオンとは比較できない程に空虚な場所が多く見受けられますね……魔物にやられたのでしょうか? とても軍事力最大の国とは思えませんが……」
「選民意識が強いからだろう、つまりあれらは魔物に滅ぼされたのではなくーー自国の政策により国を追われたり死んでいった職業達の残骸と言ったところか」
「そーそー、帝国がこの大陸を支配してから長いかんねー。一度【底辺職】のインテルを貼られたら立ち直るのはムズいかんね。そーなるともう国を捨てるしかないんだよねー」

 インテル、貼られてる。なんだインテルって、もしかしてレッテルと言いたいのだろうか。まずお前の頭にインテルを入れろ。

「ミチュリんさんは……何故それでもレジスタンスに入り抵抗する事を選択したのですか?」
「んー……だってほら、一応産まれた国だしさ。夢叶えんならこの国でって決めてたから……夢から逃げんのは格好悪いじゃん? だったら戦うしかないっしょって思ったわけよ」
「………そうなんですね」

 頭は悪く軽いがギャルのその覚悟は嫌いではない。ちゃんとした芯があるからこそ、こいつは職業展開も使えたのだろう。それを聞き、ムセンは何故か気落ちしたように見える。原因は恐らく『修行の件』だろう。
 各自が修行にて目に見える飛躍を遂げた中でムセンだけが唯一、レベルアップも職業展開もできないままだった。【指導教】を使っても何の変化も起こらなかったのだ。
 本人はそれでも『出来る事をやる』と言っていて様子も普段通りだった。
 実際のところムセンは前職で取った杵柄(きねづか)の『回復技術』があればそれだけで充分だからな。

「けっ、胸糞わりぃ国だぜ。そいやぁジジィは昔ーーこの国の出身だとかなんか言ってなかったか?」
「ニャ、そういえば聞いたような気がするニャ。ジレ爺、そうなのかニャ?」
「ぁぁぁ……酒が呑みたいのぅ……朝はやはりショウガをたっぷり入れたエールに限るのぅ……」
「………駄目だこりゃあ……」
「皆さん、目的地が見えてきやしたぜ」

 三人組がどうでもいい掛け合いをしているとシャベリューから声がかかった。外を覗くと遠景には予選会場とされている【フーテンの寅さん】だとかいう魔女の塔が戦士達を待ち構えるかのように鎮座していた。

「なんですかフーテンの寅さんって……【風天の魔女 ビューラーの塔】ですよ。……凄い高さです……まるで空を突き抜けるかのよう……」

 ムセンの表現は大げさではなく、本当に頂上が見えないほどに塔は高い。天を貫くその塔を守護するかのように周囲は森林で覆われている。如何にも魔女が住んでいそうな森にあるブナの木に似たそれは今にも人面が浮かび上がりそうに不気味な雰囲気を醸し出す。

「お待ちしておりました。貴方が職業(ジョブ)【警備兵】のイシハラナツイ様ですね?」

 森に入ろうとした俺達を謎の存在が出迎える。小綺麗な深緑色したスーツみたいな服に同色の髪、透明な羽根、そして小さいし飛んでいるーーまさしく妖精そのものだった。

「私は魔女【ビューラー】様の使役する精霊『シラフ』と申します。此度開催の〈プロフェッショナルオリンピア〉予選にて審査官の命を承りました、以降宜しくお願い致します」

 見た目に反して可愛げの無い精霊シラフとやらは淡々と無表情でそう告げた。シューズといいウテンといい感情を表に出さない無表情キャラ多すぎだろと突っ込もうとしたが面倒なので止めた。

「いや、ナッちんもだけどね」
「よろしゅう頼んます、ほんでこないな森の前で現れるっちゅーことはここからもう予選スタートになるっちゅう認識でええんやろか?」

 ギャルの突っ込みを無視してなんとなく似非関西弁で対応してみた。

「何故急に妙なイントネーションで話し始めたのですかイシハラさん!?」
「なんとなく」
「……成程、噂どうりに掴めない御方ですね……まるで我が主のようです。そして理解が早い……その通りです。塔を囲うこの森は【風の通り路】と呼ばれています。まずはここを突破して予選開始の明日までに塔までたどり着くこと……それすら敵わない方は大会に参加する資格すらありません」

 ふむ、ここでまず参加者を篩(ふるい)にかけるわけか。参加人数は知らんが世界最大大陸の一大イベント、相当な数の職業がいるだろうからな。まずは軽い試験をするわけだ。

「尚、入れるのはイシハラ様のみとなります。他の方は希望されるのであれば予選は観覧可能です。その場合は塔までご案内致しますが……どうされますか?」
「いいえ、結構です。皆さんもよろしいですよね?」
「んぇっ!? いいのむーせん? ナッちんが気にならないの?」
「……意外だニャ……ムセンにゃんは真っ先に見学希望するかと思ってたのにニャ……」
「遊びに来たわけじゃないんです、その時間をもっと有意義に使えるはずです。それに……見なくても信じてますから。イシハラさんがこんなところでつまずくわけないって」

 ムセンの表情は揺るがない、こいつも随分成長したもんだ。見学希望するなんて言ってたら説教するところだったが、どうやらその必要はなさそうで安心した。

「そっちも上手くやれ、ムセン。一つ、アドバイスをしてやるから耳を貸せ」
「……? はい、何でしょうか?」

 俺はムセンに助言する。
 もしかしたらこのまま大会が終わるまでこいつらと接触できない可能性もあるからな。作戦を無事に遂行させるために打てる手は全て打っておくとしよう。

「…………………わかりました、イシハラさんが言うのであれば従います」
「ああ、シューズの事は頼んだ」
「はい! お任せください! ……あ、あの……また勇気を……」
「仕方あるまい」

 物陰に隠れ、せがむムセンに勇気を送る。

「……ん……えへ、えへへへ……こんな時にあれなんですけど私、凄く幸せです。また離れてしまうのは嫌ですけど……きっとすぐにまた再開できますよね? みんな無事で……何事もなく。私、そう信じてますから」

 ムセンはここぞとばかりにフラグを連発する、まるでこれをきっかけに離別するようなフラグを。

「頑張ってね! ナッちん! あーし、この件が終わったら国に店開くんだ! 見に来てよ!」
「ナツイにゃん、これは猫人族に伝わる幸運の御守りニャ。ナツイにゃんに預けるニャ、ウチらも絶対無事に帰るからちゃんと返してニャ! 約束!」
「おい! ヘマすんじゃねーぞ! こっちはオレに任せとけ! なんせ最強になったからな! 誰にも負ける気がしねーぜ!」
「ほっほっほっ、わしもじゃ。何でもできる気がするのぅ」
「旦那、帰ったら話を肴に一杯やりやしょうや。奢りやすぜ」

 ギャルも猫娘もヤンキーも爺さんもシャベリューもフラグを連発する。わざとやってるのか? このままだとお前らもれなく全員死ぬぞ?

 
 
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