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二章第三節.イシハラナツイ、〈続〉〈続〉借金返済の旅
百四十五.新キャラの森
しおりを挟む「では、【警備兵】イシハラ様。塔にて再びお会いできる事をお祈りしております」
〈予選スタート 【風の通り路】〉
ムセン達を見送り、俺は森の中へ足を踏み入れる。ファンタジー世界定番の迷いの森を再現したかのようなそこはきっと入ったら二度と出られないとかいうお決まりの謳い文句が囁かれていること請け合いだろう。
「さて、だらだら行くとしよう」
あの精霊は『塔にたどり着く事』と言っていた。つまり時間制限や人数制限の制約は無いーー恐らくだが森には何らかの仕掛けや罠がある、それらを乗り越える力をまずは試そうというのだろう。
ならば焦る必要はない、何番目に着こうが別にどーでもいいので夜中ぐらいに着けばいいや、と疲れないようにゆっくり歩を進めた。
木々は高く、草葉が生い茂っているために空が見えない。その暗さは既に日は沈んでしまったと錯覚させる、方角や時間がわからないため異界マップと体内時計を迷わぬようにセットした。
「~♪~♪。ん?」
ト○ロのOPテーマを口ずさみながら散歩していると、草葉がガサガサと音を立てる。ちなみに何処で○ャスラックが聞いているかわからないので歌詞は口に出さずに鼻歌にした。
「あ……あのっ……予選参加者の人っスよね……?」
茂みから声だけ聞こえたような気がしたが気のせいだろう。
もしかしてまた新キャラが出てくるかもしれないと不安に感じた俺は無視して走り抜けた。
「ええぇぇぇぇぇっ………!……ま……って………ぃ~……」
案の定、ガサガサしてたのは新キャラだった。草葉から這い出てきた。
いや、遭遇(エンカウント)していないので新キャラではないな。会わなければ登場人物ではない。
俺は遠ざかる声を確認しながら更に森の奥へと踏み入った。
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結構進んだだろうか、景色が変わらないので判然としないが腹の空き具合から見て歩き始めて二時間くらいは経過したはずだ。
そろそろ昼食にするか、と携行食を取り出そうとした時ーー槍がこちらに飛んできたのを視認する。が、昼食にしようと決めたので一歩横にずれて地面に突き刺さった槍を確認しつつ、構わず携行食を口にした。
「ーー!? ねえっ!? 今、槍が降ってきたわよねっ!? なに平然としながらご飯食べてるのよあなたっ!?」
直後、ドスの効いた野太い声で槍を飛ばしたであろう張本人が木の上からドスンと現れた。
しまった、新キャラだと思った時にはもう遅かった。新キャラは襲撃を避けて昼食を摂取し始めた俺が不可思議でならないといった面持ちでこちらに詰め寄ってくる。
「あなた予選参加者よねっ!? だったらもっとこう……緊張感を出して挑みなさいなっ……なんなのあなたっ!?」
「イシハラだ、よろしく。昼食中だから邪魔するな」
「……そんなにご飯食べたかったの……わかったわ。邪魔して悪かったわよ……」
途端にしおらしくなったそいつは横に座り、昼食を俺が摂り終わるまで体育座りで待っていた。律儀な奴だ。食べ終わるとそいつは立ち上がり、改めて自己紹介し始めた。
「……もういいかしら? じゃあ改めて……アタシの名前は【ベティ・ブランドー】よ。急に攻撃してごめんなさいね? アタシ臆病だから出会い頭に攻撃してしまう癖があるのよ。あなたよく見たら可愛らしい顔立ちしてるじゃない、大会が始まるまで仲良くしましょ」
スキンヘッドに屈強そうな体格、そして女言葉のそいつは名を【ベティ】と言った。明らかにおネエ系統だ。
だが、別にLGBTに関して興味が無く勝手にやってくれと思っている俺はその件には触れずにこの場を立ち去るため無視して進んだ。
「ぉ……お願いっス! 助けて……って……あれ? もしかして戻ってきてくれたっスか……? でもさっきは何で逃げたんスか!? 魔物と勘違いしたっスか? でも僕……声かけたっスよね……?」
すると、ガサガサとゴキブリみたいにまたもや新キャラが目の前に現れた。今日は新キャラのバーゲンセールだろうか? かと思ったが、こいつはさっき通り抜けて無視した奴だった。
まぁ国の一大イベントである催しに参加してるんだから新キャラが増えるのは致し方ない事ではあるのだが何故に寄って集って一々話しかけてくるのだろうか。せっかくの一人行動を満喫しようとしていたのに台無しである。
現れた二番目の新キャラは、さっきのおネエ系とは対極にどう見ても美少女な男だった。昔懐かし『骨っ娘』を『男の娘』とするならば、こいつは間違いなく『男の子』だろう。
よくよく考えてみれば『男の子』って普通じゃんと思考の迷路に陥りかけたがどうでもよかったので取り直した。
「いや、新キャラかと思って逃げた。俺の人物図鑑はもう一杯で新キャラはいらない。故に名乗らなくていいから用件だけ述べて立ち去ってくれ」
「ええっ!? そ……そんなぁ……っス……」
「ほら、イシハラきゅん。意地悪しないの、名前くらい聞いてあげなさい」
「旧知の仲のように接しているがお前も新キャラだろこの野郎。ベタベタ触るんじゃない」
仕方なしに聞いてみるとーーオトコの子の名前は【リック・ブルーニー】と言うらしい。大会参加を決意して森に入ったが、全然たどり着けずに既に一日彷徨(さまよ)っていたところに俺が通りかかって声をかけたとか。
「ぅぅぅ……僕なんかが大会に出ようなんて思ったからいけないんス……全然塔に近づけないし出口もわからない……もう終わりっス……」
「あら、あと一日あるじゃない。諦めたら駄目よ、そーいうアタシも道がわからなくなって困ってるんだけどね」
なんだこいつら、要は迷ってるから協力してもらおうと俺に声をかけたのか。
「袖擦り合うもなんとやらって言うじゃない、人との繋がりは大事よ。親切にしておけばその内返ってくる事だってあるからね、という訳でイシハラきゅん助けてくれないかしら」
「ぼ……僕もお願いするっス! 助けてくれたらなんでもしまスからぁ……」
まったく、仕方あるまい。
予選とやらが始まるまでだ、どちらにせよ大会が始まれば敵同士、それまでだ。
だが、こんな最初の関門につまずいているのに大会に参加するという事はやはりこいつらも底辺職とやらなのだろうか。
すると、ガチムチおネエがオトコの子に聞いた。
「リックきゅん、それ……『養成訓練所』の第一勲章じゃない……もしかしてあなた……」
「はいっス! 僕は【召喚士】と【司書(ライブラー)】を掛け持ってるっス! これは【魔物使役士(サモナー)】養成訓練所を幸運にも首席で卒業した時のやつっス! ベティさんこそ……その首飾りはもしかして……」
「あぁ、これ? アタシ、地方の武道大会で十連続優勝して【武闘家(ウォーリアー)】から【格闘王(チャンピオン)】にクラスアップしたのよ~。その証ね」
「あ……あなたが噂に聞く【格闘王】のベティさんなんスか!? 光栄っス!」
こいつら、RPGでお馴染みの有名なファンタジー職業だった。【召喚士】に【武闘家】なんてテンプレ有名職業の奴らがこんな有り様で大丈夫なのかこの大会。
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