206 / 207
二章第三節.イシハラナツイ、〈続〉〈続〉借金返済の旅
百四十九.おい。
しおりを挟む〈ビューラーの塔 控え室〉
まつ毛魔女と最上階にて邂逅したのち話を終え、下まで降りるのが面倒だからエレベーターをつけろとクレームをつけるとまつ毛魔女は『飛び降りてご覧なさい』と言った。
まぁ徒歩で降りるよりいいか、と吹き抜けからダイブするとーーなんとパラシュートをつけているかのようにゆっくりと下降する事ができた。さすが風の魔女の塔、客を飽きさせない趣向がふんだんに盛り込まれている。
まるで『親方! 空から警備員が!』な気分を味わいながらふわふわと降りた先の階段途中には扉があり、休憩したいという本能に導かれるようにそこへ入った。
「あら、ナツイきゅん。どこへ行っちゃかと思って探したわ」
「うわぁぁん良かったっス、ナツイさん! 心細かったっスよ~!」
休憩する気分を台無しにさせる、野太いおネエ言葉とやかましい女声が俺を出迎えた。一瞬、フィールドに戻ってしまったのかと勘違いしたが、扉の先は貴族の家の貴賓室のような部屋だった。
魔女のおもてなし部屋か、という事はこいつらは予選を突破したようだ。敗者にこんな部屋を用意するわけないからな。
「ええ、ナツイきゅんが参加者を一気に減らしてくれたおかげよ。アタシ乱戦が得意じゃないからやり易くなって勝ち抜けたわ、ありがとね。chuっー☆」
ガチムチが投げキスをして更に気分が悪くなるが、まぁ良かった。見知った奴等がいるのは情報集めに優位に働くとかそうでないとか。
「それで? お前らの他には一人しかいないようだが、他の予選突破者はどこ行ったんだ? もう帰ったのか? 帰っていいのか? なら俺も帰ろ」
「違うっスよ! まだ終わってないんスよ! 晴れやかな顔して帰ろうとしないでくださいっス!」
「残り15人が決まるまで終わらないんじゃなかったのか?」
「それがね……ナツイきゅんが一位突破して勝ち抜けたら他の参加者達から不満が上がってね……みんな言う事聞かなくなっちゃって『ポイントで勝ち抜け制』になったのよ。だからまだ予選中なのよ」
まったく、だったら最初からそういったルールにしとけ。貴族とやらを楽しませる趣向なんて盛り込むからこうなるんだ。スタートからグダクダだなこの大会。
「他に勝ち抜けた人達は別室っス、16人で一部屋は狭いので別れてるんスよ。予選突破枠はあと一人と聞いてるっス。他の部屋は殺伐としてるので……僕とベティさんと【ルールヴ】さんはこっちに逃げてきたっス。あ、すいませんっス……初対面スよね。ナツイさん、こちらはエルフの」
「それよりオトコの子よ、昨今の世界情勢と各国の経済状況による論議の途中だったろ再開するぞ」
「そんな話してないっスよ!? ナツイさん明らかに新たな出会いを拒否しようとしてるだけっスよね!?」
当たり前だ、勝手に紹介するんじゃない。この国に来てから新キャラが出すぎて覚えきれないんだよ。
新キャラは窓辺の椅子に腰かけながら、こちらを見て微笑む。紹介される気満々だ。肌が白く、耳が長く、薄い緑髪の女だ。
ほらな、キャラが多すぎて既に登場人物に緑髪が三、四人も被ってしまった。無闇にキャラを増やすからこうなる、あいつは『エルフの人』でいいよもう。
「本人の前で失礼すぎじゃないっスか!?」
「初めまして、私は【弓術師(アーチャー)】という職業の者です。仰います通り……名などに意味はございませんね、イシハラナツイ様」
そう言うとエルフの人は立ち上がり、俺の前まで来て握手を求めた。なんだ、まともそうな奴じゃないかーー
「貴方はここで死ぬのですからっ!!!」
ーーと、普通の奴は騙されるのだろう。
エルフの人は隠し持っていた短刀を俺の腹部に突き刺した。
「それよりオトコの子、他に勝ち抜けた職業ってなんだ? 対策が打てるかもしれないから書いてみてくれ」
俺はオトコの子に打診する、職業が割れていればそこからどんな技術を使いそうか事前に分かるかもしれないしな。
「「「!??!?!???!?」」」
何故か、三者三様に全員が取り乱し混乱している。
なんだこいつら、一斉に状態異常にでもかかったのか?
「な……な……なんで刺されたのに傷がすぐ治ったんスか!? そしてなんで何一つ気にしてないんスか!?」
「ナツイきゅんに刺す……あ、ダメだわ。興奮してきちゃって鼻血が止まらないわ」
「!?!????」
それぞれが好き勝手に混乱していて話が進まない。仕方ないので俺は全員に説教をして座らせ、話を進めることにした。
----------------------------
--------------
「……こ……これが……天性の才を持つ者だけが産み出せる【天性技術(エクストラスキル)】スか……」
「そう、終わり。次、エルフ」
「……謝罪は致しませんよ……私は異界人を認めてはいませんから……あなた達のおかげで……私達エルフがどれ程の屈辱を味合わされたか……わからないでしょう?」
「知らん、はい次。ガチムチ」
「とりあえず書いたわよ、あと一枠の予想はつかないわね」
「構わん、いずれわかるからな」
ガチムチが記した15枠の職業の羅列を見る。知っている職業ならば良いのだが、尚且つ、ファンタジー系の職業だけなら更に良い。わけのわからん異界の現実的職業はいらない。
「まずはアタシ達ね」
――――――――――――――――――――――――――――――――
1【警備兵】
2【司書(ライブラー)】
3【格闘王(チャンピオン)】
4【弓術師(アーチャー)】
ここにいる四人だな、こう見ると警備兵は確かに異質な存在だ。
「次は勝ち抜けた順ね、ナツイきゅんの次は【黒い鎧】を纏った謎の剣士だったわ。ルールが改定された直後に凄い速さであっという間に勝ち抜けたわ、たぶんイケメンよ」
「どうでもいい。職業は?」
5【蛮族戦士(バーバリアン)】
6【竜騎士(ドラグナイ)】
7【日巫女(ユニソーサル)】
8【風水師(フェンシュナー)】
「蛮族戦士?」
「どの国家にも属さない民族を蛮族っていって……」
「蛮族の意味は知っている、いわゆる自由民族の蔑称だろう。しかしそれは職業なのか?」
「蛮族の中でも優れた戦士はそう認められているみたいよ、魔王軍にとっては敵に違いないし蛮族とはいえ魔物は狩猟対象だしね」
ふむ、魔物を狩る行いにより職業として認められたとかそんな感じか。他には【竜騎士】【巫女】【風水師】と。どうやって戦うのかわからん職業もあるが中々ファンタジーしているじゃないか。大会自体に興味は無かったが、ファンタジー職業技術をここで存分に拝ませてもらうのも一興かもしれんな。
「続いてこんな感じね」
9【道化師(コメディアン)】
10【彫師(タトゥリスト)】
11【溶接工(ウェルダー)】
12【庭園技師(ガーデンメイカー)】
雲行きが怪しくなってきたな。
【道化師】は大道芸人と考えればまぁなくもない。【彫師】ってのはタトゥーを彫る職業だからなんか自分にタトゥー彫ってその模様で不思議パワーを発揮すると考えればなくもなくもない。
だが、溶接工に庭園技師とはどーいう事だ。
「最後の4枠ーー1枠はまだ決まってないけど……これよ」
13【変幻装備師(コスプレイヤー)】
14【気象予報士(ウェザーレポーター)】
15【絵師(ピクシバー)】
おい。
すると部屋がノックされ誰かが入室してきた。風精霊のシラフだ、シラフは書類片手に開口一番に告げる。
「最後の一枠が決定致しました、【ピヨピヨ鑑定士】となります。これにて予選枠16職が揃いました」
16【ピヨピヨ鑑定士】
おい。
0
あなたにおすすめの小説
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
最強賢者の最強メイド~主人もメイドもこの世界に敵がいないようです~
津ヶ谷
ファンタジー
綾瀬樹、都内の私立高校に通う高校二年生だった。
ある日、樹は交通事故で命を落としてしまう。
目覚めた樹の前に現れたのは神を名乗る人物だった。
その神により、チートな力を与えられた樹は異世界へと転生することになる。
その世界での樹の功績は認められ、ほんの数ヶ月で最強賢者として名前が広がりつつあった。
そこで、褒美として、王都に拠点となる屋敷をもらい、執事とメイドを派遣してもらうことになるのだが、このメイドも実は元世界最強だったのだ。
これは、世界最強賢者の樹と世界最強メイドのアリアの異世界英雄譚。
クラスの陰キャボッチは現代最強の陰陽師!?~長らく継承者のいなかった神器を継承出来た僕はお姉ちゃんを治すために陰陽師界の頂点を目指していたら
リヒト
ファンタジー
現代日本。人々が平和な日常を享受するその世界の裏側では、常に陰陽師と人類の敵である妖魔による激しい戦いが繰り広げられていた。
そんな世界において、クラスで友達のいない冴えない陰キャの少年である有馬優斗は、その陰陽師としての絶大な才能を持っていた。陰陽師としてのセンスはもちろん。特別な神具を振るう適性まであり、彼は現代最強の陰陽師に成れるだけの才能を有していた。
その少年が願うのはただ一つ。病気で寝たきりのお姉ちゃんを回復させること。
お姉ちゃんを病気から救うのに必要なのは陰陽師の中でも本当にトップにならなくては扱えない特別な道具を使うこと。
ならば、有馬優斗は望む。己が最強になることを。
お姉ちゃんの為に最強を目指す有馬優斗の周りには気づけば、何故か各名門の陰陽師家のご令嬢の姿があって……っ!?
生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。
水定ゆう
ファンタジー
村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。
異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。
そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。
生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!
※とりあえず、一時完結いたしました。
今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。
その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。
勇者パーティーを追放されたので、張り切ってスローライフをしたら魔王に世界が滅ぼされてました
まりあんぬさま
ファンタジー
かつて、世界を救う希望と称えられた“勇者パーティー”。
その中で地味に、黙々と補助・回復・結界を張り続けていたおっさん――バニッシュ=クラウゼン(38歳)は、ある日、突然追放を言い渡された。
理由は「お荷物」「地味すぎる」「若返くないから」。
……笑えない。
人付き合いに疲れ果てたバニッシュは、「もう人とは関わらん」と北西の“魔の森”に引きこもり、誰も入って来られない結界を張って一人スローライフを開始……したはずだった。
だがその結界、なぜか“迷える者”だけは入れてしまう仕様だった!?
気づけば――
記憶喪失の魔王の娘
迫害された獣人一家
古代魔法を使うエルフの美少女
天然ドジな女神
理想を追いすぎて仲間を失った情熱ドワーフ
などなど、“迷える者たち”がどんどん集まってくる異種族スローライフ村が爆誕!
ところが世界では、バニッシュの支援を失った勇者たちがボロボロに……
魔王軍の侵攻は止まらず、世界滅亡のカウントダウンが始まっていた。
「もう面倒ごとはごめんだ。でも、目の前の誰かを見捨てるのも――もっとごめんだ」
これは、追放された“地味なおっさん”が、
異種族たちとスローライフしながら、
世界を救ってしまう(予定)のお話である。
レベルアップは異世界がおすすめ!
まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。
そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。
~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる
静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】
【複数サイトでランキング入り】
追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語
主人公フライ。
仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。
フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。
外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。
しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。
そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。
「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」
最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。
仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。
そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。
そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。
一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。
イラスト 卯月凪沙様より
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる