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第四十四話 車の上の影
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Tさんは歩いて買い物に行く途中、救急車と消防車が道路に停車しているのを見かけた。
そして2台の奥の方に、何かにぶつかって大破したと思われる自動車も見えたため、事故があったものと解釈していた。
自分も気をつけようと思って通り過ぎようとしたが、明らかにおかしなことがあった。
大破した車の上に、何かが座っているのである。
「黒っぽい何かが蹲踞(そんきょ)のように、と言ったらわかりますか? 膝を曲げて腰を落としてるんですが、お尻は地面に付けずに座っているんです」
一目見て、人間ではないとTさんは感じた。
事故車の上に座っているという状況がまず変だし、周囲の救急隊員らの目にも入っていないようでその存在自体が気づかれていない。異様な光景だった。
「うわっ、ついてくるなよ……」
祈るような気持ちでTさんは目をそらして先を急いだ。
買い物へ向かう道であるから帰りも同じ道から帰るはずだったが、遠回りして帰ることを考え始めていた。
Tさんの淡い期待は裏切られる。
道に移る建物の影。その上に、同じ蹲踞の姿勢をした影の姿があった。
移動してきているのだ。
影の位置関係からして、このまま進むとちょうど何者かがいる建物の前を歩くことになる。
「泣きたい気分になりましたが、どうしていいかわからずに歩き続けました」
少し速度を緩めながら歩くTさん。
前方にどうしても影の存在が目に入ってしまう。
今度は微動だにしていないようだった。
どうやって襲ってくるのかわからない。こちらに飛びかかってくるのか、あるいは別の方法か。
時間にしてほんの2、3分だが恐怖の時が続いた。
キキイイイッ!
耳をつんざくブレーキ音がTさんを襲った。
ガシャンッ!
後ろから来た車がTさんが通り過ぎたばかりの電柱に突っ込んでいた。
「あれは、新たな車を狙っていたのでしょうか」
Tさんは事故現場から逃げるように先を急いだ。
黒い影のようなものがまた車の上にいたのかは、確かめられなかった。
行く時とは別の道を通って帰り、その日の晩のニュースで電柱にぶつかった車の運転手が重傷だったことを知った。
「外を出歩いても、変な影がないか気になるようになってしまいました。車? 当分自分で買って乗る気はしません」
怯えたようにTさんは語った。
そして2台の奥の方に、何かにぶつかって大破したと思われる自動車も見えたため、事故があったものと解釈していた。
自分も気をつけようと思って通り過ぎようとしたが、明らかにおかしなことがあった。
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「黒っぽい何かが蹲踞(そんきょ)のように、と言ったらわかりますか? 膝を曲げて腰を落としてるんですが、お尻は地面に付けずに座っているんです」
一目見て、人間ではないとTさんは感じた。
事故車の上に座っているという状況がまず変だし、周囲の救急隊員らの目にも入っていないようでその存在自体が気づかれていない。異様な光景だった。
「うわっ、ついてくるなよ……」
祈るような気持ちでTさんは目をそらして先を急いだ。
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移動してきているのだ。
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