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第七十九話 気持ちが悪い彫刻たち
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少し変わったスポットへ行くのが好きだというSさんからの話。
彼女の住む隣の県の山中に、不気味な彫刻ばかりが並んでいるという屋外の施設があった。
旅行雑誌に載っているのを見たこともなく、公式サイトや宣伝アカウントなどもない。
そのためにほとんど知る人がいない場所であったが、ある心霊スポット紹介サイトで取り上げられていたのを見てSさんは単独でやってきた。
仮にここでは「不気味彫刻展示場」と呼称する。
「やっと着いた、そりゃ人も来ないはずだよ」
場所は山の中ではあるのだが、街からそこまでとんでもなく離れているというわけではない。ただ、この不気味彫刻展示場を過ぎてもその先に何もないのだ。特に観光名所ではない山に続いていくだけである。
民家はあるかもしれないが、そこに用がなければ行く人もいない。
入口らしき場所には木にスポット名の書かれた看板があるだけだ。
特に料金は取られない。受付もない。そもそも営業時間すら判然としない。Sさんが来たのも、休日の明るい時間帯ならば入れるだろうと思ったというだけの理由だった。
「うわあ、思ったより広そうだけど、帰りたくなったよ」
いきなり弱音が口から出るSさん。
どこかに設置されているのであろうスピーカーからお経が流れているのにまず辟易した。どういう効果を狙っているのだろうか。山中だから他の家に迷惑でないのだとは思われるが、従業員がいたら一日中これを聴いているのかと思うと背筋が寒くなる。
「あっ、そうそう、こういうのを見に来たのよね」
そして展示物。屋外に化け物のような様子の彫刻が数多く並んでいる。
奇怪なポーズをとっている彫刻、顔の一部が肥大化した彫刻、一部が欠損している彫刻……率直に言って気持ちが悪い。石を抱かされて天を仰いで泣いている彫刻、苦悶の表情で頭を抱えている彫刻など、見ていてこちらの気分が沈むようなものもある。
Sさんは理解に苦しんだが、芸術というのは理解を超越したものかもしれないとも思った。
「はははっ、何これ、マジで」
あまり細かく見ずに先へ先へと進んでいたSさんだが、前の方から人の声がしたため足を止めた。
見ると同じようにサイトを見たのか学生風の男2人が先に来ており、彫刻を見てあざ笑っていた。
「なんじゃこりゃ、ひっでえ」
あろうことか1人が彫刻に蹴りを入れ、もう1人が唾を吐きかけていた。
いくらなんでも常識外れな行為。他に人がいないからやりたい放題だ。
彼らの仲間と思われたくないSさんは、わざわざ一度見た彫刻をもう一度見るために来た道を戻り、再度順路を進むことにした。
「不気味は不気味だけど、どこか悲しさのようなものを感じるんだよね」
改めて彫刻1つ1つを見ていく。タイトルの記載はないのでどういった意味を持つ彫刻なのかをSさん自身が考えざるを得なかった。
まるで人間がその苦悶の瞬間を切り取られたような悲痛な顔つきをしているものもあり、もしかしたら苦しみを表現する彫刻群なのかもしれないとSさんは結論づけた。
そして話は数年後に飛ぶ。
ホラーを愛好する趣味で知り合った恋人と、Sさんは再びこの施設を訪れた。
「あっ、この彫刻は前にも見たやつだ、覚えてるよ」
再訪するまではほとんど忘れていたが、現地に来て記憶が蘇った。
拷問を受けている途中のような彫刻の横を通り過ぎると、気になるものがあった。虚空を蹴り上げているような彫刻、そして地面に向かって唾を吐いているような彫刻だ。
2つとも、行動自体は勢い任せに思えるが、どこか顔には悲哀のようなものが感じられた。
Sさんはこれらをどこかで見たような気がした。おそらく、前にも見た彫刻なのだろうとその時は思ったが、家に帰ってよく考えて、ゾッとしたという。
彼女の住む隣の県の山中に、不気味な彫刻ばかりが並んでいるという屋外の施設があった。
旅行雑誌に載っているのを見たこともなく、公式サイトや宣伝アカウントなどもない。
そのためにほとんど知る人がいない場所であったが、ある心霊スポット紹介サイトで取り上げられていたのを見てSさんは単独でやってきた。
仮にここでは「不気味彫刻展示場」と呼称する。
「やっと着いた、そりゃ人も来ないはずだよ」
場所は山の中ではあるのだが、街からそこまでとんでもなく離れているというわけではない。ただ、この不気味彫刻展示場を過ぎてもその先に何もないのだ。特に観光名所ではない山に続いていくだけである。
民家はあるかもしれないが、そこに用がなければ行く人もいない。
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特に料金は取られない。受付もない。そもそも営業時間すら判然としない。Sさんが来たのも、休日の明るい時間帯ならば入れるだろうと思ったというだけの理由だった。
「うわあ、思ったより広そうだけど、帰りたくなったよ」
いきなり弱音が口から出るSさん。
どこかに設置されているのであろうスピーカーからお経が流れているのにまず辟易した。どういう効果を狙っているのだろうか。山中だから他の家に迷惑でないのだとは思われるが、従業員がいたら一日中これを聴いているのかと思うと背筋が寒くなる。
「あっ、そうそう、こういうのを見に来たのよね」
そして展示物。屋外に化け物のような様子の彫刻が数多く並んでいる。
奇怪なポーズをとっている彫刻、顔の一部が肥大化した彫刻、一部が欠損している彫刻……率直に言って気持ちが悪い。石を抱かされて天を仰いで泣いている彫刻、苦悶の表情で頭を抱えている彫刻など、見ていてこちらの気分が沈むようなものもある。
Sさんは理解に苦しんだが、芸術というのは理解を超越したものかもしれないとも思った。
「はははっ、何これ、マジで」
あまり細かく見ずに先へ先へと進んでいたSさんだが、前の方から人の声がしたため足を止めた。
見ると同じようにサイトを見たのか学生風の男2人が先に来ており、彫刻を見てあざ笑っていた。
「なんじゃこりゃ、ひっでえ」
あろうことか1人が彫刻に蹴りを入れ、もう1人が唾を吐きかけていた。
いくらなんでも常識外れな行為。他に人がいないからやりたい放題だ。
彼らの仲間と思われたくないSさんは、わざわざ一度見た彫刻をもう一度見るために来た道を戻り、再度順路を進むことにした。
「不気味は不気味だけど、どこか悲しさのようなものを感じるんだよね」
改めて彫刻1つ1つを見ていく。タイトルの記載はないのでどういった意味を持つ彫刻なのかをSさん自身が考えざるを得なかった。
まるで人間がその苦悶の瞬間を切り取られたような悲痛な顔つきをしているものもあり、もしかしたら苦しみを表現する彫刻群なのかもしれないとSさんは結論づけた。
そして話は数年後に飛ぶ。
ホラーを愛好する趣味で知り合った恋人と、Sさんは再びこの施設を訪れた。
「あっ、この彫刻は前にも見たやつだ、覚えてるよ」
再訪するまではほとんど忘れていたが、現地に来て記憶が蘇った。
拷問を受けている途中のような彫刻の横を通り過ぎると、気になるものがあった。虚空を蹴り上げているような彫刻、そして地面に向かって唾を吐いているような彫刻だ。
2つとも、行動自体は勢い任せに思えるが、どこか顔には悲哀のようなものが感じられた。
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