百物語 厄災

嵐山ノキ

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第八十七話 落ち込んでいた友人

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 会社員のUさんは長期の休みを利用して地元に帰り、懐かしい友達であるNさんと久々に会う機会を得た。
 そもそもLINEで会えないかと打診したもののなかなか返信がないまま休みのその日が近くなってきていた。また今度にしようと追加でLINEを送ろうと思っていた矢先に、Nさんから会えるという返信が来たのだった。

 当日、予約した居酒屋に着くとすでに友人のNさんがいた。

「え、なんか、どうしたの」

 近寄りながら驚いてUさんは声をかけた。Nさんがあまりに疲れ切った顔をしていたからである。
 うつむいてテーブルを眺めているその目の下にはクマができていた。元気がなく、気分の落ち込みが見て取れた。

「おお、久しぶりぃ」

 Nさんの口元が少し笑ったように見えた。

「すまんなあ、なかなかLINEの返事できなくて」

「いや、まあいいよ」

「いろいろと、どうしようかと思っててなあ」

 このとき集まったのはこの2人で、少数でも学生時代の思い出話はそれなりに盛り上がった。
 もっぱらUさんが話題を提供してNさんがそれに答える形ではあったが、昔の頃のように話ができてUさんは楽しめていた。
 2時間が経過したあたりでNさんがしきりに腕時計を気にし始めた。

「この後、何かあるの?」

 Uさんが聞く。

「ああ、また戻って仕事しなきゃならないんだ」

 ため息をつきながらNさんが言う。Uさんはここで思い出したが、Nさんが飲んでいたのはノンアルコールドリンクばかりであった。

「仕事の途中で来てくれたのか、申し訳ないな」

「まあ、いいよ。そろそろお開きにするか」

 そしてNさんが席を立とうとしたところをUさんは呼び止める。

「なあ、久々だし写真撮ろうぜ」

 そう言ってNさんに近寄って並び、2人の写真を撮った。

「もういいか? 行くわ」

「あ、ちょっとまって、写真を」

 Uさんが撮ったばかりの写真を見る。
 しばし絶句したが、すぐにNさんを呼び止めようとする。

「ちょっと、N、あれっ」

 Nさんの姿は消えていた。

「このときの写真が、こんな感じでNの顔が」

 実際の写真がスマホに残っていたので見せてもらった。
 店の暗い明かりの中でUさんとNさんが写っている。
 Uさんには特におかしなところはないが、問題はNさんである。
 顔面の顔のパーツが全部消えていた。
 まるでのっぺらぼうのようになっていたのである。
 目も鼻も口もない顔が、Uさんの隣にいた。

「翌日、Nが電車に飛び込んで亡くなったと、別の友達から聞きました」

 Nさんは仕事の疲れを見せていたが、さらに私生活では離婚したばかりであった。
 あのときに昔の話ばかりでなく今の悩みに気づいてあげられれば、とUさんは言った。
 写真に記録されたNさんの異常も、彼の危うい精神状態がこうした形で写り込んだのではないかとUさんは考えている。
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