ご主人様の意のままに(冒頭試し読み)

まゆり

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 すっかり目が冴えてしまったので、眠る気にはなれなかった。ベッドサイドテーブルに置いてあったスマホを見ると、午前一時だった。
 シャワーも浴びずにプレイをしたことを思い出し、バスローブを脱いでシャワーを浴びた。セイジは遊び慣れていて優しくて、つい頼りたくなってしまうタイプだったけれど、他にも何人か奴隷がいるらしい。でもむしろ、そういう男の方が、ちょうどいい距離を保つことができて、都合がいいかもしれないと思いなおす。とりあえず、潤也の代わりのようなS男をすぐに探そうという気にはなれない。
 
 ただ、魅力的な女性になって、素敵な男性に愛されるためにずっと努力をしてきただけなのになぜ、被虐嗜好をもったM女になってSMクラブで働いていて、しかもそうすることによって満たされてしまっているのかがわからない。
 潤也のために貢ぎ奴隷になりたいと思ったのは嘘ではなかった。でも、潤也だけではなくよく知らない男に辱められ、ひどい扱いを受けることによって、満たされるものを感じてしまっていた。おそらく美結は、セイジの言うように、生まれながらにして救いようのない淫乱女だったのだろう。

 子供の頃から、美結は不細工だから嫁のもらい手がないと父方の祖母に言われ続けていた。顔の造作が派手なのに全体のバランスが悪く、その上体型もギスギスと痩せていて、可愛いと言われたことがなかった。だから、大きくなっても、誰にも愛されないのではないかという不安から逃れることができなかった。
 それでも、容姿も能力も対人スキルも、すべては努力によって補うことができるというポジティブな価値観を持って、親や環境を恨むことなく、美結は誰からも好かれる努力家の優等生を目指した。
 努力の甲斐もあり、優等生すぎるという理由で疎まれたりいじめられることもなく、小中学校時代を過ごし、美結は学区で一番レベルの高い高校に入った。勉強にも手は抜かなかったし、もちろん少しでも可愛くなれるように、美容への努力も怠らなかった。きつい顔立ちが少しでも柔らかく可愛らしく見えるようにお小遣いを貯め、電車に乗ってカリスマ美容師といわれる人に髪をカットしてもらったり、正しい姿勢や歩き方も、ネットを見て学習し、美しい体型になるためのストレッチやエクササイズも自室で毎日行っていた。
 高校に入る頃には、美結は美人と呼ばれるようになっていた。痩せすぎな体つきは、腰のあたりがやや丸みを帯びただけで基本的には変わらなかったけれど、胸だけがどんどん大きくなった。せっせと豆乳を飲んだり、腕立て伏せで胸筋をつけた成果なのか、美結を不細工と嫌っている胸の大きな祖母に似たのかはわからない。その頃には、祖母は母のことが気に入らなくて美結に対してひどいことを言っていたことには気づいていたけれど、幼いころに植えつけられた容姿に対するコンプレックスを払拭することはできなかった。
 美結は美人で勉強もできてスタイルもよくて羨ましいと言われても、あまり嬉しくはなかった。羨ましいというのは、持って生まれたものに対する賞賛であって、努力によって手に入れたものに対するものではない。それでも、羨ましがられることで、自慢げに映らないように、努めて謙虚に振る舞い、女友達に疎まれることもなく、高校生活を謳歌していた。
 高校一年の終わりに初めての彼氏ができた。
 美結が所属していた科学部の先輩で、入学した頃から密かに憧れていた三年生の吉井よしいという男で、吉井が卒業する時に告白されたのだった。
 吉井は、近県の大学に進学したため、大学の近くにアパートを借りて生活することになった。都内からは二時間ほどのところで、実家から通えないことはない距離ではあったけれど、勉強が大変な理系の学部に進学したため、実家を出たようだった。
 つき合い始めた頃は、吉井に都心まで出てきてもらってデートをしていたけれど、実験やレポートが忙しいという理由で、美結が週末に吉井のアパートに通うようになった。
 平日より早い時間に家を出て、吉井の大学の最寄り駅まで行き、近くのスーパーで食料品を買い込み、吉井のアパートで料理をした。母の料理をよく手伝っていたので、料理はできないことはなかったし、彼氏のために料理を作ってあげることに憧れていたのだ。吉井のアパートに三回目に行った日に、吉井に求められ、初体験をした。そうするのが当然だと思っていたし、吉井は不器用ではあったけれど、美結の身体を優しく扱ってくれたので、それほどの痛みは感じなかった。
 何か予定がない限り、土曜も日曜も吉井のアパートに行って、料理を作り、求められるままに抱かれた。回を重ねるごとに快感は深まり、好きな男に尽くし、愛される喜びに酔った。夏休みに入ると、友達の家に泊まると嘘をついて、吉井のアパートに泊まり、夜を徹して愛し合った。
 しかし、そんな日々は長くは続かなかった。
 吉井のアパートに吉井の友達が入り浸るようになった。最初のうちは吉井の友達に彼女であることを認められたようで嬉しかったけど、なかなか帰ってくれず、その上友達の分まで料理を作らなければならなくなった。それでも吉井の友達に容姿や料理の腕を褒められるのが嬉しかった。

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