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えっと、47Bって……?
サウスイースト航空バンコク行きの最終搭乗案内を聞きながら、動く歩道を全速力で突っ走り、やっとのことで機内にたどり着いた。
Bの座席は、窓際の三列の真ん中だ。
混んでいなければ三席独り占めしていけるのに、機内を見回すと、ほとんど空席が見当たらない混みようだった。
荷物をロッカーに入れる人々を掻き分けながら、47列目にたどり着く。
窓際のAの席に男がひとりで座っている。
ちぇ、先客がいたか。47、48、49と書かれたロッカーを開け、荷物のボストンバッグを上げようとした。
「だいじょうぶ?」
Aの席に座っていた男がこちらを向いて、言った。
わ、イケメン。
すらりと背が高く、ちょっとホストっぽいスーツがいただけないけど、ハーフっぽい顔立ちがけっこう好みなんですけど。
男は座席から立ち上がると、ひょいとあたしのバッグをつかみ、ロッカーに収めた。
「あ、ありがとうございます」
「こちらこそ、こんなに可愛い子と隣って、俺ラッキー」
ラッキーだって、ラッキーだって、ラッキーだって?
「名前、なんていうの?」
「あたしは月子」
使い慣れている偽名を口にした。
本当の名前なんてダサすぎて誰にも言えない。
「俺はシンヤ」
なんとなく上手く行き過ぎているような気がして、あたしはシンヤの顔とか、全体の雰囲気をチェックする。
ケンカの弱そうなイケメン。
どう考えてもあいつらの回し者ではない。
もっとガタイがでかくて、目つきが悪く、環境に溶け込む目立たない格好をしているはずだ。
なにしろ、成田まで来るのも大変だった。
あいつらを振り切って、高速を闇雲に走り、車から飛び降りて無理矢理リムジンバスに乗せてもらい、やっとターミナルまで来た。
持つべきものは友達だ。
留学先で知り合ったスピード狂のタクがいなかったら、あたしはとても日本から脱出できなかったと思う。
それにしても、最終搭乗案内でさんざん人をせかしておいて、いったいどれだけ待たせるつもりなんだろう、と思っていたら、通路を走ってきた男があたしの隣のCの席に座った。
げっ、絶対にあたしが最後だと思ったのに、上には上がいたか。
「あの、バンコクまでですか?」
冴えないバックパッカー風。
そして眠そうな麻呂顔。
全然好みじゃない。
でも、こいつも、どう考えてもあいつらの仲間ではない。
とりあえず安心。
「は、はい」
「それじゃ一緒ですね。よかった」
パスポートも留学時代の友達に頼み込んで、借りた。
紛失したと嘘をついて、あたしの写真が入ったものをつくらせてもらったのだ。
あいつらに捕まらないかとひやひやしたけど、ばれずに偽造することができた。
これでやっと、国外に逃亡できる。
サウスイースト航空バンコク行きの最終搭乗案内を聞きながら、動く歩道を全速力で突っ走り、やっとのことで機内にたどり着いた。
Bの座席は、窓際の三列の真ん中だ。
混んでいなければ三席独り占めしていけるのに、機内を見回すと、ほとんど空席が見当たらない混みようだった。
荷物をロッカーに入れる人々を掻き分けながら、47列目にたどり着く。
窓際のAの席に男がひとりで座っている。
ちぇ、先客がいたか。47、48、49と書かれたロッカーを開け、荷物のボストンバッグを上げようとした。
「だいじょうぶ?」
Aの席に座っていた男がこちらを向いて、言った。
わ、イケメン。
すらりと背が高く、ちょっとホストっぽいスーツがいただけないけど、ハーフっぽい顔立ちがけっこう好みなんですけど。
男は座席から立ち上がると、ひょいとあたしのバッグをつかみ、ロッカーに収めた。
「あ、ありがとうございます」
「こちらこそ、こんなに可愛い子と隣って、俺ラッキー」
ラッキーだって、ラッキーだって、ラッキーだって?
「名前、なんていうの?」
「あたしは月子」
使い慣れている偽名を口にした。
本当の名前なんてダサすぎて誰にも言えない。
「俺はシンヤ」
なんとなく上手く行き過ぎているような気がして、あたしはシンヤの顔とか、全体の雰囲気をチェックする。
ケンカの弱そうなイケメン。
どう考えてもあいつらの回し者ではない。
もっとガタイがでかくて、目つきが悪く、環境に溶け込む目立たない格好をしているはずだ。
なにしろ、成田まで来るのも大変だった。
あいつらを振り切って、高速を闇雲に走り、車から飛び降りて無理矢理リムジンバスに乗せてもらい、やっとターミナルまで来た。
持つべきものは友達だ。
留学先で知り合ったスピード狂のタクがいなかったら、あたしはとても日本から脱出できなかったと思う。
それにしても、最終搭乗案内でさんざん人をせかしておいて、いったいどれだけ待たせるつもりなんだろう、と思っていたら、通路を走ってきた男があたしの隣のCの席に座った。
げっ、絶対にあたしが最後だと思ったのに、上には上がいたか。
「あの、バンコクまでですか?」
冴えないバックパッカー風。
そして眠そうな麻呂顔。
全然好みじゃない。
でも、こいつも、どう考えてもあいつらの仲間ではない。
とりあえず安心。
「は、はい」
「それじゃ一緒ですね。よかった」
パスポートも留学時代の友達に頼み込んで、借りた。
紛失したと嘘をついて、あたしの写真が入ったものをつくらせてもらったのだ。
あいつらに捕まらないかとひやひやしたけど、ばれずに偽造することができた。
これでやっと、国外に逃亡できる。
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