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海老のペーストを塗ってカリカリに焼いたトーストと、シンハービールで乾杯し、さつま揚げみたいなすり身の揚げ物、辛くて酸っぱいトムヤムクン、魚醤とトウガラシで味付けされた青パパイヤと沢蟹のサラダ、それから、グリーンカレーなどを注文した。
腹ごしらえを済ませたら、ショーをやっているオカマバーへGOという計画だ。
「月子さん、明日はどうしていらっしゃいますか?」
一日中いっしょにいたのに、相変わらず馬鹿丁寧な言い方で、なかちゃんが聞く。
「明日? まだ考えてない」
バンコクの見所はまだ、エメラルド寺院とか水上マーケットとか、いろいろ残っている。
「パタヤに行ってみようと思っているんですが、いっしょに行きませんか?」
シンヤは数日間、帰ってこないと言っていた。
「うーん、そうしようかな」
「そうしましょう。ひとりで行ってもつまらないし」
揚げたてのさつま揚げが運ばれてきた。
オカマバーでは、どこが男なのかまったくわからないきれいなお姉さんたちのショーを見た。
横でいちいち感激のため息を漏らすなかちゃんがかわいらしいような、うっとおしいような。
カオサンの入り口でタクシーを待たせ、なかちゃんに宿の前まで送ってもらった。
別れ際に、なかちゃんに、
「月子さんが無事に部屋に戻るまで、ここでお待ちしております」
と言われて、ちょっとだけ感動した。
「わかった。じゃあ窓開けて手を振るね」
狭くて暗い階段を上がり、受付でキーを受け取り、あたしの部屋のドアノブに鍵を差し込む。
開けたはずなのに、閉まってしまい、変だなあと思ってまた開けた。
「!」
部屋がめちゃくちゃに荒らされている。
慌てて窓を開け、なかちゃんに助けを求める。
貴重品は持ち歩いていたので、被害はない。
荷物は散らばってはいたけれど、服は動きやすい普段着しか持ってきていないし、ブランド物のボストンバッグも無事だった。
なくなったものは、今朝シンヤから預かったお茶だけだった。
「なかちゃん、出かけている間に、ど、泥棒に入られちゃった」
「あの、何を取られましたか?」
「それが……シンヤって人から預かったお茶だけが失くなってるの」
「他になくなったものは?」
なかちゃんは思いのほか冷静だった。
「それだけ」
「とりあえず、宿は変えたほうがよさそうですね。インターコンチネンタルに戻りましょう。満室ってことはないと思いますし」
たしかに、泥棒に忍び込まれた部屋にひとりで泊まりたくない。
「人から預かったものを失くしちゃったって、なんか責任重大」
「それは不可抗力です。泥棒に入られるなんて予測できません」
でも、一応シンヤに連絡しておいたほうがいいだろうと思って、受付から電話をかけ、事情を説明した。
シンヤはまだチェンマイにいるようだった。
「なんだって? クソ、とぼけやがってこのアマ、ちょろまかそうたってそうは行かないぜ。とっととあのお茶を返しやがれ」
腹ごしらえを済ませたら、ショーをやっているオカマバーへGOという計画だ。
「月子さん、明日はどうしていらっしゃいますか?」
一日中いっしょにいたのに、相変わらず馬鹿丁寧な言い方で、なかちゃんが聞く。
「明日? まだ考えてない」
バンコクの見所はまだ、エメラルド寺院とか水上マーケットとか、いろいろ残っている。
「パタヤに行ってみようと思っているんですが、いっしょに行きませんか?」
シンヤは数日間、帰ってこないと言っていた。
「うーん、そうしようかな」
「そうしましょう。ひとりで行ってもつまらないし」
揚げたてのさつま揚げが運ばれてきた。
オカマバーでは、どこが男なのかまったくわからないきれいなお姉さんたちのショーを見た。
横でいちいち感激のため息を漏らすなかちゃんがかわいらしいような、うっとおしいような。
カオサンの入り口でタクシーを待たせ、なかちゃんに宿の前まで送ってもらった。
別れ際に、なかちゃんに、
「月子さんが無事に部屋に戻るまで、ここでお待ちしております」
と言われて、ちょっとだけ感動した。
「わかった。じゃあ窓開けて手を振るね」
狭くて暗い階段を上がり、受付でキーを受け取り、あたしの部屋のドアノブに鍵を差し込む。
開けたはずなのに、閉まってしまい、変だなあと思ってまた開けた。
「!」
部屋がめちゃくちゃに荒らされている。
慌てて窓を開け、なかちゃんに助けを求める。
貴重品は持ち歩いていたので、被害はない。
荷物は散らばってはいたけれど、服は動きやすい普段着しか持ってきていないし、ブランド物のボストンバッグも無事だった。
なくなったものは、今朝シンヤから預かったお茶だけだった。
「なかちゃん、出かけている間に、ど、泥棒に入られちゃった」
「あの、何を取られましたか?」
「それが……シンヤって人から預かったお茶だけが失くなってるの」
「他になくなったものは?」
なかちゃんは思いのほか冷静だった。
「それだけ」
「とりあえず、宿は変えたほうがよさそうですね。インターコンチネンタルに戻りましょう。満室ってことはないと思いますし」
たしかに、泥棒に忍び込まれた部屋にひとりで泊まりたくない。
「人から預かったものを失くしちゃったって、なんか責任重大」
「それは不可抗力です。泥棒に入られるなんて予測できません」
でも、一応シンヤに連絡しておいたほうがいいだろうと思って、受付から電話をかけ、事情を説明した。
シンヤはまだチェンマイにいるようだった。
「なんだって? クソ、とぼけやがってこのアマ、ちょろまかそうたってそうは行かないぜ。とっととあのお茶を返しやがれ」
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