バンコクトライアングル――恋の逃避行――

まゆり

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え?
 ちょろまかすって?
 返せって?
 何のこと?
 なんでいきなりそんなことを言われなきゃならないの?

「ごめんなさい。お茶は買って返すから」
「買って返すだと? じゃあ五百万払ってもらおうか? とりあえずうちの若いもんをそっちに送るぜ。日本人の女は人気があるからな」
「ご……五百万? 」

 払えないことないけど、こっそりバンコクに来てることがばれたらまずいし。

「どうしたんですか? 月子さん?」
「……あのお茶、五百万もするもんなんだって……それから、あたし、どっかに売られちゃうみたい」

 なかちゃんは、あたしから受話器をひったくると、

「じゃあこれから警察に電話してよろしいですね。便名と座席がわかればすぐに身元は割れますし、タイ警察だけじゃなくて、日本の税関と麻取にも連絡を入れておきますが」

 ちょっと、警察とか、税関とか麻取って?
 なかちゃんはそれだけをシンヤに言うと、受話器を受付の女性に渡した。

「とにかく、ここは危ないから出ましょう」

 あたしは急いで荷物をまとめ、待たせておいたタクシーに乗って、なかちゃんが泊まっているホテルへ戻った。

なかちゃんは、別の部屋に泊まるようにと、レセプションに交渉しようとしたけれど、ひとりの部屋にあいつらか、シンヤいう「若いもん」が追って来たら怖いので、なかちゃんの部屋に泊めてもらうことにした。

 部屋に戻るとなかちゃんは、
「あの……、ベベベ、ベッド二個あるから……。あの、僕、危ない人じゃないから大丈夫だし……」
 と、ぶつぶつ言いながら、逃げるように浴室に入ってしまった。

 別に危ない人でもいいんだけどな。
 いろいろ助けてもらったし、慣れてくるとそんなに情けない顔でもないし、けっこう頼りになるいいやつなので一回ぐらいヤってもばちはあたらないと思った。

 なにしろ、あたしは留学先では超がつくビッチといわれた女。
 それに、日本ではいい子にしすぎていたので、久しぶりに異国の夜を楽しみたい。
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