バンコクトライアングル――恋の逃避行――

まゆり

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手持ち無沙汰だったので、部屋のテレビをつけると、ニュースキャスターみたいな人がタイ語で何かを喋っている。
 天気図が出てきたので、おそらく天気予報なのだろう。

 なかちゃんが、腰にタオルを巻いて浴室から出てきた。
 冷蔵庫からシンハーの缶をふたつだし、プルトップを開ける。
 服を着ているとひょろりとして見えるけど、裸になると、けっこういい体してる。
 それに、眼鏡を外していて、濡れた前髪が額に落ちているのが、なんともいえずにセクシーな感じ。
 けっこう当たりかも。

 なかちゃんはソファーに座ってビールを一口飲むと、
「月子さんもシャワー浴びてきたら?」
 と言うので、そうそう、そうこなくっちゃ、と思う。
 可愛いナイティとか、持ってこなかったのが悔やまれるけど、まあ脱いじゃえば同じだし。

「月子さんは、なんでひとりでタイに来たんですか?」

 シャワーのあと、あたしは、色気のかけらも感じられないハードロックカフェのTシャツと、ショートパンツに着替えて、なかちゃんの横に座った。

「日本にいると、息が詰まるの。なかちゃんは?」
「本当は国内旅行するはずだったんですけど急に……あ、いや、あの、僕、遺跡が好きなんです。文化人類学の研究をしているので。なんとなくタイに行きたいなあと思いまして……」

 遺跡なら、もっといいところがあるだろう、カンボジアとか。
 と思ったけど、とりあえず突っ込むのはやめておいた。

 なかちゃんは、疲れたからもう寝ると言って、さっさとベッドに潜り込んでしまう。
 ちょっと、なにこの展開?
 あたしも続いて、なかちゃん横にもぐり込む。

「いっしょに寝ましょうよ」
「……」

 寝てる。
 すごい寝つきのよさ。

 ちぇっ、なんだかつまらない。
 なかちゃんの寝顔は、どういうわけかすごくイケメンに見える。
 眼鏡のせいでまつげが意外に長いということに気がつかなかった。
 調子に乗ってほっぺたにキスしてみた。
 ぐっすり眠ってしまっているようで反応がない。
 ブランケットの上に出ている手を持ち上げてみる。
 くそっ、眠っている男の腕ってなんて重いんだ。
 枕の脇辺りにおいて、その上に頭を載せてみる。
 あたしも今日一日いろんなことがあって疲れていたらしく、たちまち眠気が襲ってきた。

 
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