バンコクトライアングル――恋の逃避行――

まゆり

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 バンコクで同じ部屋に宿泊しているので、パタヤでも何の疑いもなく部屋はひとつにした。
 なかちゃんがティアをお持ち帰りしたいのなら、別の部屋に泊まろう。
 あたしだって、そんなことに目くじらを立てるような子供じゃないんだし、あたしもボーイズゴーゴーとかに行っちゃおうかと思う。
 でも、別々に夜遊びするためなら、なんでわざわざふたりでパタヤに来たんだろう。

 ティアがあたしの腕を引っ張っる。
 いっしょに踊りたいらしいので、しょうがなくまた踊る。
 ティアはゴーゴーバーやビアバーから連れ出されたらしい女の子たちとは違って、ちゃんとしたダンスができた。
 なんか、負けたなら、負けたなりになんとなくティアと踊るのがすっかり楽しくなってきて、はっと気がついたらフロアのど真ん中でかなりのスペースを占領しながら、踊っていた。

 すっかり踊り疲れて、カウンターで飲み物を頼む。
 テキーラサンライズと、マルガリータ。
 なぜかパタヤでのアルコールはテキーラがデフォルトらしい。

「月子さん、ごめんなさい。でもティアと気が合ってよかったです」

 ちょっと、気が合うってどういうことよ、なかちゃん?

「なかちゃん、今日はあたし、別の部屋に泊まるから気にしないでいいよ、ほんと」 
「つ、つ、つ、月子さん、そんなこと言わないで、いっしょに泊まってください」

 なかちゃんが拝むようにあたしに手を合わせる。

「どういうことよ?」
「ティア、男なんですよ。年は十四、五でしょう。まだほんの子供です。手ぶらで置屋に帰ったら婆さんにぶたれるって言うからつい……二千バーツ払っちゃいました」

 なんて、お人よしなんだよ、こいつ。
 なんだかよくわからないけど、ティアとふたりで踊りまくっていたら、いきなり曲がスローバラードに変わる。もうラストソングの時間か。

 ティアはフロアから姿を消したので、あたしも少し休もうと思ってカウンターに向かうと、ティアがなかちゃんを引っ張ってきたのに出くわした。
 そうだよね、一応買ってもらったんだし、と思ったら、あたしとなかちゃんを踊らせようとしているようだった。

 なかちゃんは、周りを見回すと、あたしの肩を正面からそっと抱く。
 なかちゃんの腰に手を回して、ビートに合わせて体をゆらす。なかちゃんのこめかみのあたりから、汗が流れてきて、ミラーボールの光を反射する。
 その雫に思わず唇を寄せ、かすかにしょっぱい汗を味わいながら、腰に回した腕に力をこめる。
 唇を離すと、正面からなかちゃんとお互いの顔を見つめ合った。

 どちらからともなく唇を合わせ、何の迷いもなく舌を進入させる。
 音楽が聞こえなくなって、思わずフロアのど真ん中でよろけそうになって、あたしはなかちゃんにしっかり支えられて、身を任せる。
 曲が終わってフロアが明るくなるまで、あたしたちは抱き合って、舌を絡めあったキスに溺れた。
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