バンコクトライアングル――恋の逃避行――

まゆり

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一応約束なので、ティアを連れてホテルに戻った。
 ティアに先にシャワーを使わせて、その間にまたこっそりキスをした。
 あたしがシャワーを浴びている間に、ティアはうつぶせになったなかちゃんの背中をマッサージしていた。
 なかちゃんの番が終わったあと、あたしもやってもらった。なかなかの腕だった。

 それから、どういうわけか、トランプの大富豪をして遊んだ。
 ティアは勝負事に熱くなりやすい性質らしく、マットレスをばしばし叩きながら、何度も何度もゲームしたがった。夜が白みかけるころ、カードを握り締めたままなかちゃんが気絶、それから程なくして、あたしも眠ってしまったようだった。

 目を覚ましたのは、十一時少し前で、ティアは出て行ったあとだった。
 ぼんやりする頭で、たしかチェックアウトは十一時だった、と思う。あと十分しかない。
 なかちゃんを起こし、そっこーで洗顔とメイクを済ませ、荷物をまとめ、バスの時間までパタヤの街を歩き回った。

 バンコクに戻り、疲れたのでホテルで夕食を済ませ、部屋でビールを飲んだ。
 すっかりなかちゃんとふたりでいるのに慣れてしまったのに、よく考えたら明後日の昼頃には、なかちゃんと別れて、バンコクを出なければならない。
 なかちゃんは一日遅れで東京に戻る予定のようだ。

 昨日、ナイトクラブであんなキスをしたにも関わらず、バンコクに戻ってきたら、なかちゃんはパタヤにいく前の調子に戻ってしまった。
 そして、夜が早い。

「あの、そろそろ寝ましょう。明日は水上マーケット観光もありますし」

 仲ちゃんはそう言うと、ベッドに潜り込む。
 また瞬殺で寝付かれてしまったら、あたしの立場と言うものがない。
 すかさずなかちゃんの脇に滑り込む。

「ねえ、なかちゃん、キスして」

 なかちゃんは、あたしのほっぺたに軽いキスをする。

「そんなんじゃ、やだ」

 あたしは、なかちゃんの唇に自分の唇を合わせる。
 背中に手を回して、舌で口をこじ開けると、なかちゃんの体温が一気に上がったような気がして、あたしの体も痺れるように熱くなる。

 なかちゃんは、そっと唇を離し、
「月子さん、おやすみなさい」
 と言って、くるりとあたしに背を向けた。

 ちょっと……いったいどういうこと?
 あたしはなかちゃんの背中に抱きつく。

「なかちゃん、そんなにあたしのこと嫌い?」
「あの……、月子さんといっしょの部屋に泊まるって決めたときに、変なことしないって、約束したじゃないですか?」

 そういえば、なかちゃんがそんなことをひとりでぶつぶつ言ってたけど、同意した覚えはない。

「そんな約束、してないって」
「で、でも、あの、ダメです」
「なんでー、あたしがいいって言ってんのに。わかった、日本に彼女がいるとか」
「いませんよ。断じて」
「うそだー、いるからむきになって否定するんでしょ。って、別にいてもいいよ。ね、しようってば」
「だから、いませんってば。それに、いい加減な気持ちでするのはダメです」

 なんか、妙に真面目なやつめ。

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