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第二部 一章
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しおりを挟むゼロ国へと到着した。
ゼロ国に入ってからキナはとても目を輝かせ続けている。なれない景色に不安を感じるかと思ったが様子を見る限り、大丈夫に思えた。
……むしろ、不安を感じているのは私自身だ。
「…………」
ゼロ国の景色を見て、改めて感じるこの国の王の婚約者という肩書きの重さ。覚悟を決め、この地に足を踏み入れた筈なのに、どうしても不安は拭いきれない。
「……フィナ」
「大丈夫です」
「まだ何も聞いていないが……」
セドにまともな返事ができない程、心が追い詰められていた。
「……約束、しましたから。だから……精一杯、頑張ります」
「フィナ、気負わないで大丈夫だ。まだ書類上の婚約者なだけで正式に発表はしていない。本当は王城に着き次第、すぐにでも国内から他国まで報せを出したいくらいだが生憎それができなくなったのだ」
「……え?」
「フィナ。元々フィナは今年の留学生としてゼロ国へ来ただろう?」
「はい。自ら望んでなりました」
「舞踊を学びたいというフィナの意思を無下になどできない。その上、留学生という立場は取り消せない。決定事項だからな」
「え……その、良いのですか。留学生としていても」
「あぁ。これはイグニード殿と話し合って決めた結果だ」
「父様と……」
二人が仲を深めていたことは知っているが、そんなことまで話し合っていたとは予想外だ。
「留学生として役目を果たした後、正式に俺の婚約者として発表させてくれ」
セドの施す最大の気遣いが、胸の奥まで染み渡る。
「ありがとう、ございます」
喜びを噛み締めて、セドに感謝を告げた。
「あぁ。その顔が見たかったんだ」
セドは微笑みながら優しく手に触れた。
「ただ、婚約を結べたことに関しては国の一部の者にのみ報告させてほしい」
「もちろんです」
「今日国へ戻ることは事前に伝えているから、城で待機しているだろう。そこへ顔を出してくれないか」
「はい。是非挨拶をさせてください」
「あぁ」
そんなやり取りをしているうちに、王城へとたどり着いた。
セドのエスコートにより、国の中枢を担う者達がが待つ部屋へと向かう。
挨拶、と自分の口から言ったものの、先程とは違う不安が過った。セドの番として判明した時から婚約に至るまで、全くと言っていいほどセドやソムファ以外のゼロ国の貴族に会っていない。自分がどう思われているか知る機会が今まで無かった。彼らの考えや気持ちがわからず少しずつ、心配や不安になっていった。
大丈夫かと考えている間に部屋の扉前までたどり着いてしまっていた。
「フィナ、緊張せずとも大丈夫だ」
「……はい」
不安げな声に、セドは柔らかな笑みを浮かべる。
「気軽にいけばいい。フィナが思う程、堅苦しい場にはならぬと思うからな」
「どういうことですか…?」
その言葉を汲み取ろうとするもよりも前にセドは扉へ力を入れ、勢いよく開けた。
すると、その瞬間に聞こえたのは──。
パンッ!!!
大きな大きなクラッカーの音だった。
「陛下!ご婚約おめでとうございます!!」
そこにいる全ての人が口を揃えて発した。
「えっ…………」
予想外過ぎる展開に、素っ頓狂な声が出てしまう。驚いてるのは私だけでなく、キナも同じだった。
「……全く。いい大人が揃いも揃ってサプライズか?」
さ、サプライズ?
状況をよくわからない私はひたすらに周りを見渡す。
そこには、玉座の部屋を美しく彩る花々や豪華な食事などがたくさんあった。
「これは……一体……」
呆気に取られている内に、一人の青年が近づいて来た。
「フィリシーナ・テリジア様。ようこそゼロ国へ。改めて歓迎させていただきます」
その方が礼をすれば、周りの方々全員礼をした。
「あ、ありがとうございます…?」
セドの言った通り、堅苦しいとは程遠い状況に未だ混乱していた。
「…………はぁ。お前達がサプライズなどするからフィナが驚いているだろう」
「ごめんごめん。言い出しっぺは僕だから許してね」
そう近づいた青年はセドに明るく笑いかけた。
「おめでとう、兄様」
……え。兄様?…ってことは。
貴方が弟君でしたか!!
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