フラグを折ったら溺愛されました

咲宮

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五章

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 お手洗いから戻ってきたラドと一緒に叔母様の元へ挨拶をした後、子供たちは子供たちで、大人は大人で話す時間を設けた。
 緊張のとけたラドはいつも通りの様子で、年下らしく振る舞っていた。

 セドの配慮で夕食は、テリジア家とソムファ家が同じ席で用意された。
 お父様も叔母様とは十分会話をすることができた様子で、満足そうに笑っていた。

 夕食後、解散の流れとなったが叔母様は帰国までの間に必ずもう一度会いに来ると宣言して帰っていった。
 いつも芯の強い女性としての叔母様しかみないために、お父様と笑いあう妹の叔母様は新鮮だった。

 ソムファ家を見送ると、お父様はセドとシトさんに呼ばれた。今は部屋にラドと二人で食後のお茶を楽しんでいる所だ。

「怒涛の一日だった」

「それにしては楽しんでいたでしょう」

「まぁ、楽しかったよ。初めて会う人の数が多いだけで皆良い人だったし」

「うんうん」

 素直で可愛い弟の姿にほっこりとする。

「それで?改めて聞くけど、姉様は上手くやってるの」

「もちろん。始めこそ慣れない日々だったと思うけれど、その時でさえセドの配慮があったから特段困ることはなかったのよ」

「さすがセル義兄様」

「今もそれは変わらないから。心配しなくて大丈夫よ?」

「うん……」

「ラドは心配性ね……ふふっ」

 セドが手厚く面倒を見てくれることは、ラドにも想像がつくはずだ。それでも尚心配してくれる姿に更に可愛さが増す。

「そりゃ心配するよ。……一つ確認したいんだけど」

「確認?」

「……テオルートさんとは仲は良好?」

「お会いしたの?」

「お手洗いに行った時に会って、シトさんに紹介してもらった」

 まさかそんな出会いがあったとは。ラドから出た名前に驚きながらも、質問の意味を考える。

「良好…………それを判断できるほど関わってないのが現状だけど」

「そっか」

「何か気になることでもあった?」

「……推測だから、まともに受け取らないで」

「わかった」

 ラドの推測が当たることは、姉である私が一番知っている。深刻な雰囲気が流れる中、ラドが重い口を開いた。

「テオルートさん、姉様のことをよく思ってないと思う」

「……そうなの」

「驚かない?」

「うーん……さっきも言ったけれど、判断できるほど時間を共にしてないのよね。でもそれは嫌悪の感情も同じでしょう。それなのに嫌われてるとしたら、色々考えなくてはいけないかもしれないわ」

「俺は何もできないけど……気を付けて。何ならセル義兄様に言う?」

「原因もわからない上に、まだ推測の段階だから。余計な心配もかけたくないから、内緒にしてくれる?」

「……わかった」

 よく考えて見れば学校に通う間、護衛とは言うものの関わる機会は少なかった。セドの護衛だからと考えるにしても、セドの甥であるのならもう少し関わりがあってもおかしくないものだ。

 今なって気づく。恐らく知らない間に壁を作られていた可能性があることに。

 私が嫌悪の対象かは定かではないが、気を引き締めなくてはいけないことは確かだ。
 


 ここからは努力が必要になるだろう。
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