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七章
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しおりを挟むそれからというもの、卒業課題に多くの時間を費やし始めた。最終学期となる今は、課題を発表する日までは自習という状況になる。学校で作業をするも良し、自宅や王立図書館など公共機関に足を運んで研究するも良し。とにかく卒業課題を極めることに特化した期間ということだ。
私は今日、王城に備えられている図書館へ足を運んでいる。舞踊に関する書物であれば学校の方が圧倒的に質が高いが、舞踊に問わずに舞台と広い視野で考えれば王城の方が豊富だろう。
「……悲恋に関する物語」
激減した悲恋の舞台でも、現代に沿って作られた数少ない台本は存在する。稀少とも取れるその本は王城と王立図書館の二ヶ所で管理されている。
「あった」
目当ての本を見つける。だが少し高い場所にあるために背伸びをして、手をのばす。
「うーん……あと、ちょっと」
本の帯の下部分に指先が触れる。極限まで背伸びに挑戦しようとした時、他の誰かの手によって取られた。
「お目当てはこちらですか。テリジア様」
「あ……そうです」
「…………悲恋」
「…………」
「どうぞ」
「ありがとうございます」
気が付けばテオルート様が背後に立っていた。全く気配を感じなかった事から、嫌な汗が背筋をつたう。手に取った本を眺めながら意味深に数秒見つめると、それが嘘かのように貼り付けた笑顔で本を渡した。
「私も図書館に用事がありまして」
「そうなんですね」
「はい。しばらくは彷徨いていますので、高い場所の書物など、困ったことがあれば言い付けてください」
「……ありがとうございます」
同じく貼り付けた笑みで答えるものの、正直用事というものも疑わしく感じてしまう。
(もしかして、監視されてる?でも何のために……)
手放しに喜べない状況で、雰囲気が冷たくなっていくのを肌で感じた。牽制しているようにも思えるテオルート様の行動は、相変わらず本意が何一つとしてわからない。
取り敢えず取ってもらって本を片手に研究を始めるものの、上手く集中ができない。視線を感じることはないものの先程と同じく気配は好きに消せるだろうから、私から彼の行動を読むことは不可能に近い。
本を読み込むフリをしながら、頭の中ではこの状況をどうするか考えていた。
(……まずはテオルート様の事をもう少し知らないと始まらないわよね)
そう改めて感じると、本を片手にテオルート様を探した。
私はテオルート様との初めての対話を試みることにした。吉とでるか凶とでるかは全く不明だが、やらないよりやらなくてはいけない。何も知らないまま怖がっていても始まらない。そう強く気持ちを持ちながら館内を歩いていた。
何かは得られるはず……。
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