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第五章
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しおりを挟むとりあえず、聞き飽きたであろうお決まりの台詞を言う。
「殿下…お休みになられてはいかがですか」
「いや、大丈夫」
当然軽く拒否をされる。
口調からして、従者の誰かと思われているよう。
「無理をしても体を壊すだけです」
「…私のことは気にしなくて良いよ」
うん。
やはり無理か。
普通に説得をしようとも思ったのだけど、さすがにそれはガイさんを始めとした従者の方々がしているだろうから通用しないか。
でも、このまま放置したらほぼ確実に過労死する。
そんな気がしてならない。
「……」
なら、私にしかできないやり方で頑張ろう。
なんとしてでも休ませなくては。
「休息も大切なことです」
「……そうだね。それに間違いは無いよ。ただ、今の私に必要がないだけだ」
書類から目を話さずに口のみで対応する殿下。
「失礼ながら…休息が必要ない方などいないと思いますが」
「ここにいるよ」
明らかに私の方が正論なのにそれをぶった切ってくる。
従者の方々はおそらく優しく言うくらいに思えたから、ガンガン私が正論を言い続ければいけるかと思ったのだけど。
今の殿下は正論を容赦なく無視するからこの方法は無理だろうな。
「………」
私は頭をフル回転させた。
正論以上の説得力をもつ言葉は無いか…。
今世、前世、私のもつ記憶全てをたどり、みつける。
「………!」
もしかしたら…これならいけるかもしれない。
…………よし。
「では…休まれないのですか?」
「あぁ」
わかりきっていた答えを受け、私は深呼吸をした。
「……頑張ることは良いことです、努力して自分の成長に繋げることは素晴らしいことです。しかし、無理をすることはその二つとは別物です。無理をするというのは自分に負担をかけていると言うことです。そして、負担をかけた分だけ後に自分がそれを背負わなくてはいけなくなります。そのことが周りの者の心配を大きくしています。だから…お願いです殿下。周りの者の為に、もちろん御自身の為にも、一度立ち止まって、ゆっくりと休んでください」
「…!!」
「自分の言葉くらい…覚えていますよね?」
これは、前世での赤月の言葉。
赤月と会って一年くらい経った頃、根詰めて無理をしすぎた私に彼が言った言葉。
正論が駄目なら、自分の言葉で。
「無理は…良くないんですよね?」
「……お嬢様」
顔を上げた殿下は心底驚いた顔をしていた。
「そんな青白い顔の人間が、まさか体調が良いなんて…いいませんよね?」
「私は…」
「ね?」
「……」
私は圧を出すとかあまり得意では無いのだが、頑張ると決めたからには出してみる。
「……貴女には…敵う気がしません」
そう呟くと、優しく微笑んだ。
「……ですが仕事を終わらせたいのです。全て終われば…お嬢様と過ごせますから」
「え、嫌ですよ?」
「え」
「誰がこんな体調不良の人と過ごしたいと思うんですか。私はのんびりするのは好きです。けど、心が休まらなければのんびりすることはできないでしょう?今の状態で仕事を終わらせて、そのまま私と過ごすのなら断固お断りですわ。今の殿下が隣にいても気が休まりませんもの」
「……」
殿下は絶句していた。
「ですから。お休みいただけますね?」
もう一度圧を出そうかと思ったが、先程の言葉が思ったよりも心にきたみたいで。
「………お断り…」
別の意味で元気をなくしているように見えた。
言い過ぎたかしら。
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