70 / 74
第八章
69
ルディを探しに執務室へ向かった。今日も仕事をしている可能性は大きい。
その途中でガイさんに会った。
「アイシア様。ご婚約おめでとうございます」
「ありがとうございます」
「殿下のこと、よろしくお願い致します」
「………はい」
ガイさんはかなり昔からルディのお世話をしてきたと聞いた。ルディの第二の親と言っても過言ではないだろう。
「殿下でしたら先程仕事を終え、庭園に行かれました」
「そうですか…ありがとうございます」
どうやら私達家族水入らずの時間を邪魔するのは申し訳ないと思ったようで、一人の時間を過ごそうとしていたみたいだった。それなら私は邪魔かと思ったが…。
「いえ、殿下は一人でいるよりアイシア様との時間を好まれますよ」
そう優しく教えてくれたので、それを信じてルディの元へ足を運んだ。
さすが王家の庭園。とても豪華だ。花々に囲まれる中心地には休息所のようなものがある。そこにルディはいた。
「……シア」
そう呟いたのが耳に入ったので応じた。
「何かようですか?ルディ」
「……え。シ、シ、シア!何故…?家族との時間は…?」
「しっかり過ごせたわ。…それで、ルディを呼びに来たの」
「……私を?」
「そう。……両親への挨拶、今なら楽かなと思って」
オルティアナ家の領地は王都からは少し離れている。簡単に行き来できる距離ではないから、多忙なルディが挨拶をするなら、王都に来ている今しかないと思った。
「…なるほど」
「まぁ……私も後で国王陛下と王妃様に挨拶をしに行くわ」
相手が相手なので緊張するが。
「……シア」
「…?」
手招きをされたのでルディの隣へ座る。
「…休みたいのなら今日でなくても良いけれど」
「休む…そうですね。シアこそ休まなくて大丈夫なのですか?昨日の今日なのに」
「うーん……あまり疲れてはいないからな」
怒涛の一日だと言うことは重々承知なのだが、体は軽い。
恐らく、拐われたり危機にさらされた事よりもルディと共に居れる未来を約束できたから安心しているからだと思う。
「私は平気よ」
「…あまり無理をしないで下さいね」
「それはルディにも言えることでしょう」
私達の執事とお嬢様という関係はほとんど消え去った。少し残っているとするのなら、お互いの口調や雰囲気だけだろう。
「……シア、目…」
そう言って、私の目元に触れた。昨日負った傷を悲しそうに見つめる。
「…あぁ。大丈夫よ」
「………」
見た目ほど痛くない。それに少しの傷だ。化粧で隠そうと思えば隠せる。
「…ルディ?」
「………」
その瞬間、ルディは私の左目元優しく唇を落とした。
「え、…え?」
「………」
思わぬ行動に動揺を抑えられないが、ルディはそのまま私に口づけをした。
「……んっ」
「シア…可愛い。もう一度───」
「ちょっと待っ…!」
「……」
私の言葉を遮り唇を塞ぐ。
余りにも甘く長い口づけに声が漏れてしまう。
「…ん、っん」
「…シア」
嬉しそうに熱を帯びた目で見つめてくるが、さすがにこれ以上は私が持たないので持てるだけの力で頑張って引き剥がした。
「ルディっ!ちょっと、これ以上は」
「…何故?婚約者なのだから」
私の話をまるで聞かないルディに私は動揺を隠せなかった。
「時と場所を考えて…!」
「……時と場所を考えれば良いのですね?」
「……!」
そう言うとルディは妖艶に微笑んだ。
「……い、いきなりどうしたの」
「いきなりも何も。最初にしてきたのはシアの方ですよ?」
「え…」
「これは昨日の分のお返しです」
最初?それって……。
「あ、あれは忘れて…」
「一生忘れませんよ。今まで我慢していた分どうしようかと考えましたが、シアの方から何度でも口づけをすると言ってくれてありがとうございます」
「ん?ちょっと待って何か違う」
「いえ?シアも私と同じ気持ちでしょう?」
いや、それは何に対してなのか。わざと伏せられた気がしてならない。
「………」
「まさか…違うのですか?」
「違わないけど…」
「それなら良かった」
「………ソウデスカ」
してやられた気がした。
「……私は恋愛初心者なのに」
「知っていますよ。だからこそ、シアに捨てられないように私はアプローチし続けますね。もう気にするものはないのですから」
「………」
昨日の様子から一変。
「前世含め、今までの想いを受け取ってください」
「……はぁぁ」
どうやらとんでもなく都合の良いように解釈されてしまったようだ…。
いや、私もルディと一緒にいる事を望んでいるから良いのだけれど。
「…お手柔らかに、お願いするわ。ルディ」
「喜んで、シア」
まぁ、策士な所もルディの魅力の一つだ。
「さて、行くか」
「お手をどうぞ。シア」
「……喜んで」
それでも、今もこれからも一緒にいれるのだ。それは嬉しい。
想い合える幸せを知れて良かった。
あなたにおすすめの小説
「私に愛まで望むとは、強欲な女め」と罵られたレオノール妃の白い結婚
きぬがやあきら
恋愛
「私に愛まで望むな。褒賞に王子を求めておいて、強欲が過ぎると言っている」
新婚初夜に訪れた寝室で、レオノールはクラウディオ王子に白い結婚を宣言される。
それもそのはず。
2人の間に愛はないーーどころか、この結婚はレオノールが魔王討伐の褒美にと国王に要求したものだった。
でも、王子を望んだレオノールにもそれなりの理由がある。
美しく気高いクラウディオ王子を欲しいと願った気持ちは本物だ。
だからいくら冷遇されようが、嫌がらせを受けようが心は揺るがない。
どこまでも逞しく、軽薄そうでいて賢い。どこか憎めない魅力を持ったレオノールに、やがてクラウディオの心は……。
すれ違い、拗れる2人に愛は生まれるのか?
焦ったい恋と陰謀+バトルのラブファンタジー。
身代わりの公爵家の花嫁は翌日から溺愛される。~初日を挽回し、溺愛させてくれ!~
湯川仁美
恋愛
姉の身代わりに公爵夫人になった。
「貴様と寝食を共にする気はない!俺に呼ばれるまでは、俺の前に姿を見せるな。声を聞かせるな」
夫と初対面の日、家族から男癖の悪い醜悪女と流され。
公爵である夫とから啖呵を切られたが。
翌日には誤解だと気づいた公爵は花嫁に好意を持ち、挽回活動を開始。
地獄の番人こと閻魔大王(善悪を判断する審判)と異名をもつ公爵は、影でプレゼントを贈り。話しかけるが、謝れない。
「愛しの妻。大切な妻。可愛い妻」とは言えない。
一度、言った言葉を撤回するのは難しい。
そして妻は普通の令嬢とは違い、媚びず、ビクビク怯えもせず普通に接してくれる。
徐々に距離を詰めていきましょう。
全力で真摯に接し、謝罪を行い、ラブラブに到着するコメディ。
第二章から口説きまくり。
第四章で完結です。
第五章に番外編を追加しました。
【完結】無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない
ベル
恋愛
旦那様とは政略結婚。
公爵家の次期当主であった旦那様と、領地の経営が悪化し、没落寸前の伯爵令嬢だった私。
旦那様と結婚したおかげで私の家は安定し、今では昔よりも裕福な暮らしができるようになりました。
そんな私は旦那様に感謝しています。
無口で何を考えているか分かりにくい方ですが、とてもお優しい方なのです。
そんな二人の日常を書いてみました。
お読みいただき本当にありがとうございますm(_ _)m
無事完結しました!
【完結】身を引いたつもりが逆効果でした
風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。
一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。
平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません!
というか、婚約者にされそうです!
片想い婚〜今日、姉の婚約者と結婚します〜
橘しづき
恋愛
姉には幼い頃から婚約者がいた。両家が決めた相手だった。お互いの家の繁栄のための結婚だという。
私はその彼に、幼い頃からずっと恋心を抱いていた。叶わぬ恋に辟易し、秘めた想いは誰に言わず、二人の結婚式にのぞんだ。
だが当日、姉は結婚式に来なかった。 パニックに陥る両親たち、悲しげな愛しい人。そこで自分の口から声が出た。
「私が……蒼一さんと結婚します」
姉の身代わりに結婚した咲良。好きな人と夫婦になれるも、心も体も通じ合えない片想い。
氷の宰相補佐と押しつけられた厄災の花嫁
瑞原唯子
恋愛
王命により、アイザックはまだ十歳の少女を妻として娶ることになった。
彼女は生後まもなく始末されたはずの『厄災の姫』である。最近になって生存が判明したが、いまさら王家に迎え入れることも始末することもできない——悩んだ末、国王は序列一位のシェフィールド公爵家に押しつけたのだ。
離婚寸前で人生をやり直したら、冷徹だったはずの夫が私を溺愛し始めています
腐ったバナナ
恋愛
侯爵夫人セシルは、冷徹な夫アークライトとの愛のない契約結婚に疲れ果て、離婚を決意した矢先に孤独な死を迎えた。
「もしやり直せるなら、二度と愛のない人生は選ばない」
そう願って目覚めると、そこは結婚直前の18歳の自分だった!
今世こそ平穏な人生を歩もうとするセシルだったが、なぜか夫の「感情の色」が見えるようになった。
冷徹だと思っていた夫の無表情の下に、深い孤独と不器用で一途な愛が隠されていたことを知る。
彼の愛をすべて誤解していたと気づいたセシルは、今度こそ彼の愛を掴むと決意。積極的に寄り添い、感情をぶつけると――
逆行転生、一度目の人生で婚姻を誓い合った王子は私を陥れた双子の妹を選んだので、二度目は最初から妹へ王子を譲りたいと思います。
みゅー
恋愛
アリエルは幼い頃に婚姻の約束をした王太子殿下に舞踏会で会えることを誰よりも待ち望んでいた。
ところが久しぶりに会った王太子殿下はなぜかアリエルを邪険に扱った挙げ句、双子の妹であるアラベルを選んだのだった。
失意のうちに過ごしているアリエルをさらに災難が襲う。思いもよらぬ人物に陥れられ国宝である『ティアドロップ・オブ・ザ・ムーン』の窃盗の罪を着せられアリエルは疑いを晴らすことができずに処刑されてしまうのだった。
ところが、気がつけば自分の部屋のベッドの上にいた。
こうして逆行転生したアリエルは、自身の処刑回避のため王太子殿下との婚約を避けることに決めたのだが、なぜか王太子殿下はアリエルに関心をよせ……。
二人が一度は失った信頼を取り戻し、心を近づけてゆく恋愛ストーリー。