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5話 世界の庭師
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「まず、夢魔というのは悪魔の一種さ。僕は彼らの王で、君は僕の眷属という事になる」
焼き鳥の串を指揮棒の様にくるくる回しながらルシルさんは語ります。
私も焼き鳥を食べます。――美味しい。脳裏には昔、窓に現れた小鳥さんを思い出しました。
鳥を食べることに罪悪感は感じません。だって鳥も私も食べられる運命だったのだから。
「改めて思うと、私、悪魔になったのですね……」私は背中の方を振り返ります。生えた小さな羽は、今は無くなっていて、見る事が出来ません。マンションでは飛ぶ練習もしているのですがちっとも浮かぶ気がしません。
「ちなみに、夢魔の中に淫魔と呼ばれてる人達もいる。まぁ、性的なのはあっちの担当だね」
「私もそっちの方が向いてるのでは無いですか?」
私は男性を満たすために作られた存在。すなわち、それこそが私の存在意義です。
なのにルシルさんは首を振り、静かに首を振りました。
「ダメダメ、彼女たちは計算高く、誇り高い。それに――君は処女じゃないか」
「処女じゃ……駄目なのですか?」首を傾げる私に彼は笑い、空になったジョッキを見つめながら言います。
「君はもうしばらく、少女である時間を楽しめばいい。人生の中で子供時代は、最も美しい時間だよ。今回のお客さんもそう思ってるのだろうね」
「そう、なのでしょうか……」
分からない。美しいまま死ぬはずだった私には、分からない事です。
「大将、ハイボール、たこわさも追加で、いちごちゃんは何頼む?」ルシルさんからメニュー表を渡され、私はすぐに目を通します。
「ではジンギスカンを」
「肉料理好きだね。良い事だ」
確かにお肉は美味しい。何て言うか、食べることによって"生きてる"って感じがします。
「私達はこれから、何か悪い事をするのですか?」
「あぁ、人間のイメージはそうだったね。真実は全く違う。僕らは昔から人間と共存していて、この世界を守り続けているんだ」
「世界?」
「うん、実は世界は沢山のエネルギーで出来ていて、夢もそのエネルギーの1つ。人が見る夢を僕らがエネルギーに変換しているって訳さ。例えるなら、僕らは世界と言う名の庭を手入れする庭師って所かな」
彼はそう言いながら煙草に火を付けます。バニラのような甘い香りが鼻をかすめます。
かつて私の住んでいた世界を思い出します。あの完璧な空間は、誰かの手入れによるものだったのだったのですね。
「もし、人が夢を見なくなったら?」
「うーん、世界が滅びることになるね。大災害だったり、核戦争だったりね。その事は、確かノストラダムスって人物が予想していたなぁ。確かにあの年は夢が少なかったっけ」
ルシルさんは内容とは間額にのんびりした口調で答え煙を吐きます。
「世界は滅びるのでしょうか?」
「安心しなよ。夢は沢山あるし、そうならない為に僕らがいるんだ。だから僕ら夢魔はなくてはならない存在なんだよ」
なるほど、凄いです。やっぱり世界は機械仕掛けの様に精巧に廻っているのですね。
「ルシルさんは、王様なのに、何故働いているのですか?」
ふと気になって尋ねてみると、ルシルさんは嬉しそうに大きな声を出します。
「僕は人間達が大好きだ! 彼らは本当に素晴らしい! 彼らは正義で、悪で、聡明で愚かで……誰かを傷つけ、誰かを愛する……そんな沢山の味がある彼らを王座から眺めているのはもったいないだろ? 僕はこの街に来てから毎日退屈知らずだよ」
そう言っていたずらっ子の様に笑う彼は、確かに王様には見えません。
「このジンギスカン美味しい……おかわりを希望します」
「えっ……? まだ食べるの?」ルシルさんの笑顔が珍しく引き攣ります。
「はい! 私はいちごの名の通り、赤く実ろうと思います。その為にはまずは美味しい物をいっぱい食べないと!」
「……いちごちゃん。僕は夢魔の王だけど、人間の王様じゃないから、あんまりお金を持っていないのだけど……」
「——ふふっ」
少し慌てた様子で財布を取り出し中身を確認するルシルさんは、なんだか可愛くて、笑みが零れたのです。
焼き鳥の串を指揮棒の様にくるくる回しながらルシルさんは語ります。
私も焼き鳥を食べます。――美味しい。脳裏には昔、窓に現れた小鳥さんを思い出しました。
鳥を食べることに罪悪感は感じません。だって鳥も私も食べられる運命だったのだから。
「改めて思うと、私、悪魔になったのですね……」私は背中の方を振り返ります。生えた小さな羽は、今は無くなっていて、見る事が出来ません。マンションでは飛ぶ練習もしているのですがちっとも浮かぶ気がしません。
「ちなみに、夢魔の中に淫魔と呼ばれてる人達もいる。まぁ、性的なのはあっちの担当だね」
「私もそっちの方が向いてるのでは無いですか?」
私は男性を満たすために作られた存在。すなわち、それこそが私の存在意義です。
なのにルシルさんは首を振り、静かに首を振りました。
「ダメダメ、彼女たちは計算高く、誇り高い。それに――君は処女じゃないか」
「処女じゃ……駄目なのですか?」首を傾げる私に彼は笑い、空になったジョッキを見つめながら言います。
「君はもうしばらく、少女である時間を楽しめばいい。人生の中で子供時代は、最も美しい時間だよ。今回のお客さんもそう思ってるのだろうね」
「そう、なのでしょうか……」
分からない。美しいまま死ぬはずだった私には、分からない事です。
「大将、ハイボール、たこわさも追加で、いちごちゃんは何頼む?」ルシルさんからメニュー表を渡され、私はすぐに目を通します。
「ではジンギスカンを」
「肉料理好きだね。良い事だ」
確かにお肉は美味しい。何て言うか、食べることによって"生きてる"って感じがします。
「私達はこれから、何か悪い事をするのですか?」
「あぁ、人間のイメージはそうだったね。真実は全く違う。僕らは昔から人間と共存していて、この世界を守り続けているんだ」
「世界?」
「うん、実は世界は沢山のエネルギーで出来ていて、夢もそのエネルギーの1つ。人が見る夢を僕らがエネルギーに変換しているって訳さ。例えるなら、僕らは世界と言う名の庭を手入れする庭師って所かな」
彼はそう言いながら煙草に火を付けます。バニラのような甘い香りが鼻をかすめます。
かつて私の住んでいた世界を思い出します。あの完璧な空間は、誰かの手入れによるものだったのだったのですね。
「もし、人が夢を見なくなったら?」
「うーん、世界が滅びることになるね。大災害だったり、核戦争だったりね。その事は、確かノストラダムスって人物が予想していたなぁ。確かにあの年は夢が少なかったっけ」
ルシルさんは内容とは間額にのんびりした口調で答え煙を吐きます。
「世界は滅びるのでしょうか?」
「安心しなよ。夢は沢山あるし、そうならない為に僕らがいるんだ。だから僕ら夢魔はなくてはならない存在なんだよ」
なるほど、凄いです。やっぱり世界は機械仕掛けの様に精巧に廻っているのですね。
「ルシルさんは、王様なのに、何故働いているのですか?」
ふと気になって尋ねてみると、ルシルさんは嬉しそうに大きな声を出します。
「僕は人間達が大好きだ! 彼らは本当に素晴らしい! 彼らは正義で、悪で、聡明で愚かで……誰かを傷つけ、誰かを愛する……そんな沢山の味がある彼らを王座から眺めているのはもったいないだろ? 僕はこの街に来てから毎日退屈知らずだよ」
そう言っていたずらっ子の様に笑う彼は、確かに王様には見えません。
「このジンギスカン美味しい……おかわりを希望します」
「えっ……? まだ食べるの?」ルシルさんの笑顔が珍しく引き攣ります。
「はい! 私はいちごの名の通り、赤く実ろうと思います。その為にはまずは美味しい物をいっぱい食べないと!」
「……いちごちゃん。僕は夢魔の王だけど、人間の王様じゃないから、あんまりお金を持っていないのだけど……」
「——ふふっ」
少し慌てた様子で財布を取り出し中身を確認するルシルさんは、なんだか可愛くて、笑みが零れたのです。
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