神殺し革命

薊野義弘

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神の楽園

第4話「共和国軍vs伝承の怪物」

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拳がアドの身体に当たる寸前で止まった。

目の前で拳がピタッ……と止まっている。

そしてそれを止めていたのは、真紅のマントを羽織った騎士だった。

非常に大きな大剣でその巨大な拳を止めている。

しかし、切れた訳ではない。

あの怪物の身体には刃が通らないのだろうか?

しかし、剣で止めた騎士を見た市民は大歓声を送った。

「オオオオオッ!!!!共和国軍だ!!これでもう安心だぞ!!」

「あの天馬の紋章は天騎士だぞ!!凄え!!あんな馬鹿でかい怪物の攻撃を剣で止めた!!」

「この怪物は我々共和国軍に任せてください!!市民の皆さんは東の方に向かって逃げてください!!!!」

市民は全員それを了承し、東に向かって再び走り出した。

しかし、いくら天騎士でもこいつを倒せるだろうか?

伝承によるとこの黒い怪物の名前は”バオラニクス”というらしく、古代ファナール語で『世界の牙』と言う意味らしい。

『その昔、『神の楽園』を作り出した神と敵対する邪神ギポーシャによって生み出された魔怪物の一角、それがバオラニクス。』と、ロナンディア神話に書いてある。

そんな怪物を、そう簡単に倒せるとは思えない。

例え倒せたとしても、この街は復興不可能なほどに壊滅しているだろう。

ユレイジアからヴィナスティーユの街が消滅するのも時間の問題だ。

逃げ続けた末に、街の門に辿り着いた。

そこでは既に何台もの馬車が待機していた。

「皆さん、早く乗ってください!!急いで!!」

若い御者にそう言われ、市民は急いで馬車に乗る。

乗る間にも、”俺が先だ!!俺だ!!”などと揉み合いになっているところもあった。

皆、自分が生きるのに必死なんだろう。

そのため更に状況は悪化した。

幸いその馬車は一台8人は乗れた。

しかし、それは20台ほどしかなかった。

これじゃ全員を逃すのは不可能だ。

今度こそ終わったかもしれない。



ーヴィナスティーユ市の西側ー

一方共和国軍は、この怪物を相手に苦闘していた。

街の西側に怪物が出没したと聞いて出撃していたのは、共和国軍佐官数名、天騎士団翔兵の合わせて7人だった。

他の共和国軍は今、他国に仕事に行っていて帰ってこれない。

となると、残りの共和国軍でこの怪物を相手にしなければならない。

共和国軍佐官の戦闘能力の平均を出すと、一般的な成人男性の500人分であり、天騎士翔兵は更に上で1500人分と言ったところだが、この伝承の怪物の力は底知れない。

実際に今、若い佐官達が地形を変えるような勢いで全力で倒しに行くが、剣の刃は通らず、拳でも全く手応えがない。

では、翔兵はどうだろうか?

天騎士の1番下の階級である翔兵は、一撃で佐官全員を倒せる強さを持つが、この怪物に拳が一発当たったところで、ほんの少し退けられるだけ、攻撃が効いたようには全く見えない。

翔兵は悔しそうな顔で大剣を背中から抜き、

「これでも喰らえ!!!!化け物め!!!!」

と、豪速で頭から足にかけて真っ二つに切断する。

この剣は天騎士クラスの軍人が持てる特殊な力を付与されたいわゆる聖剣である。

真っ二つにされたバオラニクスを見た軍人は皆、歓声を上げた。

「おお!!あれだけ攻撃が効かなかった怪物を真っ二つに!!!!さすがジャファールさんだ!!!!」

しかし、彼らが喜びの声を上げる中、攻撃を受けたバオラニクスは鈍い唸り声を上げながら、身体を再生させていくのであった。

切断された部位はみるみる治っていき、まるで何もなかったかのように元通りにくっついてしまった。

「そんな……!!!!倒したと思えば、再生するのか……!?」

「……ッ!!化け物め……!!!!」

バオラニクスは突然首を180°回転させ、共和国軍の方をギョロリと血走った目で睨みつけた。

共和国軍は皆警戒態勢に入り、剣を構えた。

「!!総員気を付けろ!!!!来るぞ!!!!」

バオラニクスはその巨大な拳を振り上げ、隕石の如く拳を飛ばす。

あまりの迫力に佐官達は避ける事ができず、ただ叫ぶ事しか出来なかった。

「「「「うわああああああ!!!!」」」」

その拳に当たった佐官達は、消えるようなスピードで飛ばされ、遥か向こうの地面に叩きつけられるのであった。

叩きつけられた地面は大きく減り込み、佐官達は気を失う。

「……!!!!」



ー『逆さ反りの月』ー

その頃、レオナードは半壊した自分の店の前にいた。

さっきまで街の入り口まで行ったのだが、怪物が出現して攻撃を受けた街を見て、ここまで戻ってきたのである。

半壊した店を見たレオナードは、虚しそうな表情をしていた。

「あーあ……こりゃひでえな……」

レオナードが呆然としながら見ていると、瓦礫の中から声が聞こえてきた。

「うう……うう……」

「!?」

レオナードが急いで声のした方へ行くと、そこには倒れた瓦礫に挟まれた老人がいた。

それが誰だかすぐに分かった。

「店長!!なんで逃げてないんだ!?」

それは間違いなく店長だった。

何かを抱きしめながら挟まっていた。

それは、店長が打った数本の自慢の剣だった。

これだけあれば逃げるには重すぎるため、ずっと守っていたのだろう。

例え自分が死んでも。

レオナードが急いで助け出そうとすると、死にかけそうな声で止めた。

「手を貸すな!!!……この店は儂の店だ……。壊れるなら儂も一緒に壊れる……そう…させてくれ……。」

「……。あんた馬鹿だろ……店長は店なんだよ。店長さえいればどこでも店を出せる。あんたさえ生き残れば店は続けられるんだよ。この建物はもうどうしようもないがな。」

「生き残る……?そんなの無理じゃ。あの化け物を相手に生き残るなんぞ……」

「……。」  

レオナードは10人がかりで持ち上げる巨大な瓦礫を片手で掴み、どこかへ軽々と投げ飛ばしてしまった。

「!?」

それを見た店長は、驚きを隠せず目を丸くした。

「あんたの店は、終わらせねえ。あの怪物は、俺がぶっ殺してやるよ。」

レオナードはそう言い残して街の東へと向かった。
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