12 / 13
神の楽園
第6話「“神殺し“のレオナード」
しおりを挟む
砂塵が薄まっていき、遂に少年らしきシルエットが見えた。
その中から少年のものらしき声が聞こえた。
「翔兵……俺が……死んだって?……へっ!そりゃ……面白い冗談だな。」
少年は不敵な笑みを浮かべ、そのエメラルドの瞳を光らせていた。
「!!」
遂に少年の姿が見えるほど砂塵が薄くなり、その姿を目にとられる事が出来た。
(そんな馬鹿な!!あれほどの攻撃で傷一つ負ってないなんて……!!)
少年は傷一つ負っていないどころか、服すら破れていなかった。
バオラニクスの方を見ると、手が切り落とされていた。
切り落とされた方の手は切り刻まれていた。
(まさか……攻撃を瞬時に避けつつ斬撃を与えていたのか!?)
レオナードは目にも止まらぬスピードで怪物の顔の前まで来て空中で剣を構えた。
「悪いなバオラニクス……これは市民全員の恨みだ。
“旋風斬り“!!」
レオナードは空気が爆発したように飛びながら剣で怪物の体を縦に真っ二つに切り裂いた。
バオラニクスは真っ二つに切断され、大きな音を立てて地面に倒れ込んだ。
それを見ていたガルサニアは驚きを隠せず口が開いたまま動かなかった。
「……!!!」
レオナードは驚きと粉砕骨折により動けないガルサニアの元へと戻ってきた。
「大丈夫か?……って、大丈夫じゃねえよな。ほら、肩貸してやるよ。」
「……すまない。」
レオナードは肩を貸して街の西側へと歩いていった。
「私は情けないな……天騎士のくせに街を守れないなんて……」
「……。何言ってんだよ、街を守ったのはお前だろ。」
「え……?」
レオナードの言葉を聞き、ガルサニアは呆然とする。
「あんたが必死に守ろうとしなきゃ、俺は間に合わなかったと思うぜ?あんたがあそこまで持ち堪えたから倒せたんだ。胸を張れよ。」
「……!!……1つ良いか?」
「ん?」
「君は本当に何者だ?」
その質問に対し、レオナードは顔を背けつつ答えた。
「……ま、今更隠せねえよな。5年前の革命の首謀者って言えば分かるか?他の奴らには黙っててくれよ?」
「……!!あの時の……!?……どおりで強いわけだな。もちろん、誰にも言わないさ。」
ガルサニアも流石にもう驚かないようだ。
苦笑いを浮かべ、目を落とした。
「……頼みがあるんだが。」
「何だよ?」
「私と……友人になってもらえないだろうか?私は今まで軍でひたすら身体を鍛えていた。ただその事にしか専念しなかったせいか……友人は誰一人いないんだ。」
「……いいぜ、なろうじゃねえか!友人!」
レオナードはニッ……と、満面の笑みを浮かべた。
それに対してガルサニアも嬉しそうな笑顔を見せ、礼を言った。
「……あ……ありがとう……!それから……今日の礼をしたいんだが。」
「ああ……そりゃ無理だ……俺はしばらくこの街を離れるからな。」
「いつでもいい!君がこの街に帰ってきた時、恩を返したい。」
「……なら、≪サラマーニュ≫で御馳走してくれよ。あそこ気に入ってんだ!」
≪サラマーニュ≫というのは、昼にレオナード達が食事をしたレストランである。
あのレストランはヴィナスティーユでも評判の店だ。
「……分かった、いくらでも御馳走しよう!!」
「約束だぜ、ガルサニア。」
「……ああ、レオナード!」
お互い名前で呼ばれた事が嬉しく、ガルサニアは顔に出てしまっていた。
しばらく西側へ歩き続けていると、向こうから共和国軍最高司令官、天騎士長、天騎士副長、天騎士長補佐、そして大統領までが来るのが見えた。
おおかた共和国軍は調査遠征、大統領は他国に交渉に行っていたところ報告を受け帰ってきたと言うところだろう。
「ガルサニアーーーー!!!!」
「だ、大統領!!天騎士長まで!!!!」
ガルサニアは慌てて敬礼をしようとするが、骨折でうまく立てない。
天騎士長達が駆け寄り、手助けをしようとする。
「大丈夫か!?無理するな!!」
「……バオラニクスはどうした?」
天騎士長の質問に対しガルサニアは、
「バオラニクスは……この少年が……」
と、言い掛けたがレオナードが遮り敬礼をして答えた。
「伝承の魔怪物バオラニクスは、天騎士翔兵.ガルサニア様が討伐しました!!」
「何っ!?」
天騎士長や大統領は目を丸くして驚いていた。
「……えっ!レ……レオ……」
“レオナード“と言い掛けたが、レオナードは目で“胸を張れ“と伝えた。
「……!!」
その目では伝わらなかったものの、ガルサニアはさっきのレオナードの言葉を思い出した。
(あんたが必死に守ろうとしなきゃ、俺は間に合わなかったと思うぜ?あんたがあそこまで持ち堪えたから倒せたんだ。胸を張れよ。)
「……!!ロナンディア共和国.国軍本部天騎士翔兵.ガルサニア!!魔怪物バオラニクスから市民を守る事に成功しました!!任務完了です……!!!!」
共和国軍への任務は、『怪物から市民を守り抜け』だった。
倒したのはレオナードだが、レオナードの言う通り彼があそこまで持ち堪えなければ、間違いなくヴィナスティーユは消滅していたであろう。
ガルサニアは骨折で敬礼が出来ないものの、肩を貸してもらっている姿勢でそう叫んだ。
レオナードは満面の笑みを浮かべ、その場を去っていった。
大統領はガルサニアに対し、頭を下げて礼を言った。
「ガルサニアくん、ありがとう。君のおかげで市民は皆守られ、この国は守られた。本当にありがとう……!!」
“ロナンディア共和国.マルティネス大統領“
それに加え国軍最高司令官、天騎士長、天騎士副長、天騎士長補佐も彼に対し敬礼をするのだった。
「ああ……!あの、どうか頭を上げてください!!私は任務を遂行しただけですから!!」
天騎士トップはともかく国のトップである大統領が自分に対して頭を下げて礼を言う。
突然の状況にガルサニアは慌てふためき、大統領に対し何とか頭を上げるように言った。
ようやく大統領は落ち着き、後日改めて礼をすると言う事で首都ユレイジアの街の1つ、リアデシア市にある仮官邸でしばらく過ごし、ヴィナスティーユ市の復興に努めるという。
ガルサニアは天騎士長達に隣街のヒュバニーに連れられ、そこの病院で治療を受ける事になった。
ガルサニアは治療を受けている最中も、レオナードの事で頭がいっぱいだった。
(それにしても……魔獣種がこのエルシオンに存在していたとは……。)
ーレオナードー
一方レオナードは既にヴィナスティーユを出ていた。
馬車などに頼る事はなく、歩いてウォンロまで行く事にした。
「さーて……旅は…長くなりそうだな。」
レオナードは溜息をつき、腕を伸ばして背伸びをしていた。
これは……これから神聖大陸エルシオンに起こる大災害の予兆となる出来事であった。
その中から少年のものらしき声が聞こえた。
「翔兵……俺が……死んだって?……へっ!そりゃ……面白い冗談だな。」
少年は不敵な笑みを浮かべ、そのエメラルドの瞳を光らせていた。
「!!」
遂に少年の姿が見えるほど砂塵が薄くなり、その姿を目にとられる事が出来た。
(そんな馬鹿な!!あれほどの攻撃で傷一つ負ってないなんて……!!)
少年は傷一つ負っていないどころか、服すら破れていなかった。
バオラニクスの方を見ると、手が切り落とされていた。
切り落とされた方の手は切り刻まれていた。
(まさか……攻撃を瞬時に避けつつ斬撃を与えていたのか!?)
レオナードは目にも止まらぬスピードで怪物の顔の前まで来て空中で剣を構えた。
「悪いなバオラニクス……これは市民全員の恨みだ。
“旋風斬り“!!」
レオナードは空気が爆発したように飛びながら剣で怪物の体を縦に真っ二つに切り裂いた。
バオラニクスは真っ二つに切断され、大きな音を立てて地面に倒れ込んだ。
それを見ていたガルサニアは驚きを隠せず口が開いたまま動かなかった。
「……!!!」
レオナードは驚きと粉砕骨折により動けないガルサニアの元へと戻ってきた。
「大丈夫か?……って、大丈夫じゃねえよな。ほら、肩貸してやるよ。」
「……すまない。」
レオナードは肩を貸して街の西側へと歩いていった。
「私は情けないな……天騎士のくせに街を守れないなんて……」
「……。何言ってんだよ、街を守ったのはお前だろ。」
「え……?」
レオナードの言葉を聞き、ガルサニアは呆然とする。
「あんたが必死に守ろうとしなきゃ、俺は間に合わなかったと思うぜ?あんたがあそこまで持ち堪えたから倒せたんだ。胸を張れよ。」
「……!!……1つ良いか?」
「ん?」
「君は本当に何者だ?」
その質問に対し、レオナードは顔を背けつつ答えた。
「……ま、今更隠せねえよな。5年前の革命の首謀者って言えば分かるか?他の奴らには黙っててくれよ?」
「……!!あの時の……!?……どおりで強いわけだな。もちろん、誰にも言わないさ。」
ガルサニアも流石にもう驚かないようだ。
苦笑いを浮かべ、目を落とした。
「……頼みがあるんだが。」
「何だよ?」
「私と……友人になってもらえないだろうか?私は今まで軍でひたすら身体を鍛えていた。ただその事にしか専念しなかったせいか……友人は誰一人いないんだ。」
「……いいぜ、なろうじゃねえか!友人!」
レオナードはニッ……と、満面の笑みを浮かべた。
それに対してガルサニアも嬉しそうな笑顔を見せ、礼を言った。
「……あ……ありがとう……!それから……今日の礼をしたいんだが。」
「ああ……そりゃ無理だ……俺はしばらくこの街を離れるからな。」
「いつでもいい!君がこの街に帰ってきた時、恩を返したい。」
「……なら、≪サラマーニュ≫で御馳走してくれよ。あそこ気に入ってんだ!」
≪サラマーニュ≫というのは、昼にレオナード達が食事をしたレストランである。
あのレストランはヴィナスティーユでも評判の店だ。
「……分かった、いくらでも御馳走しよう!!」
「約束だぜ、ガルサニア。」
「……ああ、レオナード!」
お互い名前で呼ばれた事が嬉しく、ガルサニアは顔に出てしまっていた。
しばらく西側へ歩き続けていると、向こうから共和国軍最高司令官、天騎士長、天騎士副長、天騎士長補佐、そして大統領までが来るのが見えた。
おおかた共和国軍は調査遠征、大統領は他国に交渉に行っていたところ報告を受け帰ってきたと言うところだろう。
「ガルサニアーーーー!!!!」
「だ、大統領!!天騎士長まで!!!!」
ガルサニアは慌てて敬礼をしようとするが、骨折でうまく立てない。
天騎士長達が駆け寄り、手助けをしようとする。
「大丈夫か!?無理するな!!」
「……バオラニクスはどうした?」
天騎士長の質問に対しガルサニアは、
「バオラニクスは……この少年が……」
と、言い掛けたがレオナードが遮り敬礼をして答えた。
「伝承の魔怪物バオラニクスは、天騎士翔兵.ガルサニア様が討伐しました!!」
「何っ!?」
天騎士長や大統領は目を丸くして驚いていた。
「……えっ!レ……レオ……」
“レオナード“と言い掛けたが、レオナードは目で“胸を張れ“と伝えた。
「……!!」
その目では伝わらなかったものの、ガルサニアはさっきのレオナードの言葉を思い出した。
(あんたが必死に守ろうとしなきゃ、俺は間に合わなかったと思うぜ?あんたがあそこまで持ち堪えたから倒せたんだ。胸を張れよ。)
「……!!ロナンディア共和国.国軍本部天騎士翔兵.ガルサニア!!魔怪物バオラニクスから市民を守る事に成功しました!!任務完了です……!!!!」
共和国軍への任務は、『怪物から市民を守り抜け』だった。
倒したのはレオナードだが、レオナードの言う通り彼があそこまで持ち堪えなければ、間違いなくヴィナスティーユは消滅していたであろう。
ガルサニアは骨折で敬礼が出来ないものの、肩を貸してもらっている姿勢でそう叫んだ。
レオナードは満面の笑みを浮かべ、その場を去っていった。
大統領はガルサニアに対し、頭を下げて礼を言った。
「ガルサニアくん、ありがとう。君のおかげで市民は皆守られ、この国は守られた。本当にありがとう……!!」
“ロナンディア共和国.マルティネス大統領“
それに加え国軍最高司令官、天騎士長、天騎士副長、天騎士長補佐も彼に対し敬礼をするのだった。
「ああ……!あの、どうか頭を上げてください!!私は任務を遂行しただけですから!!」
天騎士トップはともかく国のトップである大統領が自分に対して頭を下げて礼を言う。
突然の状況にガルサニアは慌てふためき、大統領に対し何とか頭を上げるように言った。
ようやく大統領は落ち着き、後日改めて礼をすると言う事で首都ユレイジアの街の1つ、リアデシア市にある仮官邸でしばらく過ごし、ヴィナスティーユ市の復興に努めるという。
ガルサニアは天騎士長達に隣街のヒュバニーに連れられ、そこの病院で治療を受ける事になった。
ガルサニアは治療を受けている最中も、レオナードの事で頭がいっぱいだった。
(それにしても……魔獣種がこのエルシオンに存在していたとは……。)
ーレオナードー
一方レオナードは既にヴィナスティーユを出ていた。
馬車などに頼る事はなく、歩いてウォンロまで行く事にした。
「さーて……旅は…長くなりそうだな。」
レオナードは溜息をつき、腕を伸ばして背伸びをしていた。
これは……これから神聖大陸エルシオンに起こる大災害の予兆となる出来事であった。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
嘘をありがとう
七辻ゆゆ
恋愛
「まあ、なんて図々しいのでしょう」
おっとりとしていたはずの妻は、辛辣に言った。
「要するにあなた、貴族でいるために政略結婚はする。けれど女とは別れられない、ということですのね?」
妻は言う。女と別れなくてもいい、仕事と嘘をついて会いに行ってもいい。けれど。
「必ず私のところに帰ってきて、子どもをつくり、よい夫、よい父として振る舞いなさい。神に嘘をついたのだから、覚悟を決めて、その嘘を突き通しなさいませ」
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
彼女の離縁とその波紋
豆狸
恋愛
夫にとって魅力的なのは、今も昔も恋人のあの女性なのでしょう。こうして私が悩んでいる間もふたりは楽しく笑い合っているのかと思うと、胸にぽっかりと穴が開いたような気持ちになりました。
※子どもに関するセンシティブな内容があります。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる