神殺し革命

薊野義弘

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神の楽園

第7話「全生物の王」

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ーロナンディア共和国.首都ユレイジア.トルフォル山脈ー

ここはユレイジアの大自然、鳥も越えられぬ山が連なるトルフォル山脈。

標高5000mの山であり、頂上は所々白い雪で覆われている。

トルフォル山脈はエルシオンでも三本指に入るほどの登山が困難な山であり、登山家の冒険心を表現するならまさに、「血湧き肉躍る」と言った所だろう。

今までに目を燃やしてこの山に挑んだ登山家も、今までに目を燃やしてこの山に挑んだ登山家も、尽く失敗する。

上に登るに連れて酸素は薄くなり、気圧は低くなる。

それにより思考力や運動能力を低下させ、更には高山病も必ず発生する。

しかし、それももう一昔前の話。

今ではこの山に登ろうとするものはいなくなった。

この山は隣のガーナ王国とロナンディア共和国の国境となっている。

それに加えトルフォルで最も低い山スラマリはユレイジアとガリーナという街の境目になっている。

この山でさえ、標高2500mはある。

しかも、スラマリにはトルフォル山脈最高峰のグラゴロフ程ではないが、非常に獰猛なワイバーンや雷を操る怪物ギギュールなどが存在する。

並の人間なら100人でかかろうが一瞬で消し炭にされる。

ヴィナスティーユから出て2日。

レオナードは今、このスラマリを前に悩んでいた。

この山を越えるか、回り道をするか。

回り道をすれば危険はないが、相当遠回りになる。

むろん、常人ならば“急がば回れ“。

危険な山を越えるより、遠回りになっても安全な道を選ぶだろう。

レオナードはウォンロ共和国を目指していた。

ウォンロ共和国はガリーナを越えた所にある国。

歩いていけば間違いなく1週間以上はかかる。

「……面倒くせえな。」

レオナードは頭をかいて困っていた。

どうするか一日中考えていても埒が明かない。

しかし、越えるのは面倒だ。

この2つの考えが脳内を駆け巡っていた。

「……しゃーねぇ、馬車も通らねえし……越えるか。」

レオナードは遂にスラマリを越える決断をした。

しかし、この選択が後で更に面倒ごとを起こす引き金となるのだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

しばらく歩き続ける事10分。

三合目ほどまでは来たものの、空を見ても頂上には程遠い。

しかし、歩き疲れる事はなかった。

これほど歩けば常人はかなり疲労が溜まるが、超人的な体力を兼ね備える彼にはそれと縁がない。

体力はあまり消費しないものの、空腹には敵わない。

ここに来るまでに持ってきた食料はもう空っぽ。

腹の虫がいい音を出す。

太陽は丁度真上まで来ていた。

時間的には丁度いい。

「腹減った……なんか飯……」

何かないかと辺りを見回す。

すると、ガレ場の生える木に実る果物を見つけた。

それはこのトルフォル山脈にしか実らない果物だ。

大好物の黄金林檎。

これは運が良い、とレオナードはその実を一つとるのだった。

「これは美味そうな林檎だ!」

と、レオナードはその林檎をガブリとかじる。

すると、黄金林檎特有の黄金に輝く果汁が飛び出す。

甘味成分をたっぷり含み、そしてほんのり酸味を含む黄金林檎は、みずみずしいが、かじるとシャクっと良い音がする。

「ああ~美味え……!」

しばらく夢中で食べていると、上からバッサバッサと風を叩く音がする。

なんだ?と空を見上げる。

すると自分の頭上を飛んでいるのは非常に獰猛かつ攻撃性の高いワイバーンだった。

ワイバーンは、全身鋼に勝る硬い甲殻に覆われ、蜥蜴のような顔、オリックスのような角、鏃のような尻尾を持ち、弦楽器のような声を出す魔獣。

更に言うならシルバーバックの10倍と言われる5tの握力を持ち、ジェンバワニの5倍である2.5tの咬合力を持ち、時速150kmのスピードで飛ぶ事が出来る。

魔獣、神獣以外の生物ならまず敵わない動物だ。

そんなワイバーンが自分の周りを飛びながら何か叫んでいる。

“俺の縄張りに入るんじゃねえ!!!!消え失せろ!!!!“

「……。じゃあこの林檎はお前のか?」

“!?……そうだ!!林檎は見逃してやるからとっとと消えろ、人間のゴミ野郎め!!!!“

(本当にコイツ口悪いな……まぁ良いや、まだ腹は満たされてねえし、もう一個いただいてから縄張りを出るか。)

「悪い、まだ腹満たされねえからもう一個貰うからな。」

そう言いレオナードは黄金林檎をもう一つとって、その場を去ろうとした。

“強欲な人間め……!!!!地獄に堕ちろぉおおお!!!!“

それを見たワイバーンは激怒して急降下し、背後から襲い掛かった。

血よりも真っ赤な目はギョロリと鋭く動かし、翼から生える鋭く巨大な爪を構え、今まさに攻撃しようとしていた。

それに対してレオナードは、急に足をピタッ……と止めた。

そして後ろを振り向き、凄まじい気迫でワイバーンを威嚇し、念を飛ばす。

“その場に止まれ“

“!?“

その殺気によりスラマリにいる鳥達が悲鳴を上げ、逃げるように飛び去っていく。

殺気溢れるレオナードを目の当たりにしたワイバーンは、全身に強い電撃が走るような感覚を覚えた。

ワイバーンは徐々に動きを弱め、最終的にレオナードより頭を低くして地面に体をうつ伏せで寝そべらせた。

そして冷や汗をかきながら質問をする。

“て……テメエは……いや、貴方様は一体……?“

するとレオナードは殺気を抑え、満面の笑みを見せる。

「俺は獣人のレオナード。グリフォンだ。」

“グ……グリフォン……!?……も……申し訳ありません!全生物の王であるグリフォンとは知らず……御無礼を!!!!“

ワイバーンは酷く怯えていた。

レオナードがグリフォンだと知らず、不快な口調で怒声を浴びせ、挙げ句の果てには攻撃を仕掛けた。

客観的に見てこれは無礼極まりない行為だ。

恐らく殺される事も覚悟しているだろう。

しかしレオナードは笑顔で、

「良いんだよ、そんな事。縄張りに入っちまったのは俺だし、黄金林檎も食っちまったし……」

“いえ!!私の縄張りは王の縄張り!!則ち、私は王を縄張りから追い出すというとんでもない無礼を働いてしまったのです……!どうか……御容赦を……!!“

「良いって、それよりお前に頼みたい事が……」

レオナードがワイバーンに頼みをしようとした瞬間、ワイバーンはレオナードの頭上の何かに反応し、叫んだ。

“危ないっ!!!!“

レオナードはそれに反応し、上を見上げる。

視界に入ったのは、落ちてくる巨大な岩石、そしてそれを阻止しようと動き出すワイバーン。

しかし、ワイバーンはうつ伏せで寝そべっていたため、その体制から落石を阻止することは困難だった。

そのため一歩遅れ、岩石は大きな音を立ててレオナードの頭上に落ちる。

辺りに地響きが起こる。




















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