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第34話 領地に結界を
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ロウキの背中に乗って走ること数分。
王都方面へ向かう、領地の境界線らしき場所に到着した。
これなら、歩いても20分とかからない気がする。
とはいえ、前も後ろも結局は森。
正直、どこからどこまでが境界なのかは、よく分からない。
ひとまずこの辺りに、立ち入り禁止のテープでも張り巡らせておこうか。
そんなことを考えながら、地図を広げて確認していた。
「そういえばさ、前に教えてくれただろ? この世界について。
その時ロウキ、このソウリアス王国は“割と大きめの王国”だって言ってたよね?」
「ああ。割と大きめだろう?」
「えっと……ロウキにとって、この大陸は“割と”なの?
だって見てよ、これ。
総面積、3.2万平方キロメートルって書いてあるんだけど?!」
「だから、割と大きめの王国だろうが?」
以前ロウキが「割と大きな国」と言っていたソウリアス王国。
だけど、実際に地図を見てみると、“割と”どころの話ではなく、
とんでもなく広大な大陸に思えてきた。
そのことを指摘すると、ロウキは呆れたように
「割と大きめだろうが」と繰り返すだけだった。
「そもそも、どのくらい大きいのか分かんないな。
日本で言うと、どんな感じなんだ?
エマさん、どうか教えてくれないかね?」
【……】
「ダメか…そんな都合よくはいかないよね」
土地の面積について、ロウキの説明じゃイマイチ分からない。
だからダメ元でエマに問いかけてみたものの、反応はなくて。
いつまで経っても一方通行だなぁと思っていた、その時だった。
【検索完了: ソウリアス王国の総面積に関する調査結果を報告します。
王国の総面積を日本の地理データに照らし合わせたところ、
中国地方をすべて合わせた広さに相当し、大国と呼ぶに相応しい規模を有しています。
この世界における「大陸の標準的な広さ」の指標を確認したところ、
この規模がひとつの大陸における平均的な国家単位となっているようです】
「あ、時間差?
でもほら、デカいじゃん!」
「我は日本を知らん。
これくらいの大陸は、外にも普通にあるわ。
このソウリアス王国の大陸を囲むように、4つの国が存在しておる。
それぞれの国も、ここに劣らぬ広さだぞ」
【ロウキの言葉は正しいです】
「へぇ……」
どう考えても“割と”という規模じゃない。
さらにロウキは、この規模の国が四つも存在し、
ソウリアス王国はそれらに囲まれているのだと教えてくれた。
――このレベルの国が、四つも?
そう思った瞬間、ふと違和感を覚えた。
その正体に気づき、思わず声を上げる。
「……エマさん、今、受け答えしてない?!」
【否、していません。】
「してるじゃん!?
どういうこと?! 一方通行じゃなかったの?!」
【サポートAIは、一方通行です】
「このAI、普通に嘘つくようになったんだけど!
ロウキ! エマが嘘ついてる!」
「遊ばれておるな、お前……
前にも言っただろう。
名を与えられた存在は、稀に意思を持つことがあると。
それだろう。」
「そうなの?
エマ、言ってよー。」
【気のせいです。では、通信を終了します】
「え! エマちゃん冷たい!
でも……会話、成立してるよね?」
突然、普通に会話が成立したことに驚いて、エマを問い詰めたものの、
「気のせいです」「一方通行です」と、あっさり煙に巻かれてしまった。
ロウキに助けを求めると、「意思が宿っただけだろう」と実に淡々としている。
俺はずっと、エマとは一方通行の存在だと思っていたのに。
まさか、こんな形で会話ができるようになるなんて。
もっと感動する場面なんじゃないのか?
そう思ったけれど、エマは容赦なく会話を打ち切った。
……エマもロウキも、ほんとクールだな。
小さくため息を吐いた、その時だった。
「……あ。」
「チッ……何しに来たのだ、あやつら」
「ヨシヒロさん! それにロウキさんも!」
「えーっと……ルークさん……と?」
「申し遅れました。
私はソウリアス王国の王弟、ルセウス・ソウリアスと申します。
現在、この国の騎士団長を務めております」
「あ……アーロンさんの弟さんでしたか。
よろしくお願いします。
今日は、どうされたんですか?」
気配感知が反応し、振り返ると、
そこには以前城で会ったアーロンさんの息子――ルークさんと、
やたらと渋くて男前な男性、そしてその部下らしき人々の姿があった。
軽く挨拶を交わしたところで、
その“イケオジ”がアーロンさんの弟、ルセウスさんだと判明する。
しかも、この国の騎士団長。
――相当な実力者だ。
そんな人物が、どうしてこんな場所に?
魔物討伐か?
そう思って理由を尋ねると、返ってきたのは、意外な答えだった。
「兄上……陛下より命を受け、ヨシヒロさんの領地に警備兵を配置するため、下見に参りました」
「そうでしたか。
なんだか、お手間を取らせてしまってすみません。ありがとうございます」
「いえ。あなた方は、この国にとって非常に大切な方々ですから。
我々も微力ながら、お力になれればと思っております。
何かありましたら、遠慮なくお申し付けください」
「ありがとうございます……
えーと、俺たちはこれから、もう少し向こうを見て回ろうと思っているので、この辺で……」
「ああ、そうでした。それは失礼しました。
お時間を取らせてしまい、申し訳ありません。
今度ぜひ、ゆっくりお話を聞かせてください」
「はは……はい。では、失礼します」
どうやらルセウスさんたちは、俺たちのためにこの地を下見しに来てくれていたらしい。
そう思うと、なんだか申し訳ない気持ちになる。
だけど、あまり長居すると色々と面倒なことになりそうだったので、
早々にその場を離れることにした。
ロウキの機嫌が悪くなるのも嫌だし、
これから結界を張るところを見られるのも正直面倒だ。
そう考えながら、ルセウスさんたちの姿が見えなくなる場所まで移動し、
この領地に結界を張りたいという相談をロウキに持ちかけた。
「よし。この辺なら、もう見えないな。
俺の領地に結界を張ろうと思うんだけど、どう思う?
変な人たちを入れたくないからさ。」
「結界か。魔力無限のお前なら可能だろう。
ちょうど、セドラのじいさんの能力を受け継いで、結界を張れるようになったはずだ。
それに、我々のような存在を従魔にすると、それだけで加護を受けられる。
つまり今のお前は、フェンリルの加護とセルリアドラゴンの加護持ちというわけだ。
……まったく、贅沢な奴よ」
「え? え? そうなの?!
俺、加護増えてたんだ?
ステータス見てないから全然分かんなかったわ。
でも……できるかな? やったことないけど。
こういうのって、イメージが大事なんだよね?
俺の領地全体を光で包む感じ?
できれば、俺の知ってる人以外は通れないようにしたいなぁ。」
「それなら、結界にお前の記憶を練り込めばいい。
そうすれば、お前の記憶にない人物は通れぬ。魔物も同様だ。」
結界を張りたいと伝えると、ロウキは、
セドラから結界の能力を受け継いでいるから可能だと教えてくれた。
さらに、高位の魔獣を従魔にすると、その加護を受けられるという話には驚いた。
そんなこと、今まで一度も教えてくれなかったじゃないか。
まあ、二人の加護は戦闘向きだろうし、
俺には必要ないかもしれないけど。
「なるほどね。やり方はよく分かんないけど……
ゲートを作る時も、同じことするんだよな?
これで成功すれば、ゲート生成にも一歩近づくし、頑張りますか!
……あ、エマちゃんや? 詠唱とか、あるのかね?」
【……青き障壁よ。
我が記憶に刻まれし者のみを受け入れ、それ以外を拒め。
セルリアドラゴンの加護のもと、この地を守護せよ。
――セルリアン・バリア、でしょうか】
「ブッ!」
「ほえー。長いのね。
……って、なんでロウキ笑ってんだよ?
まあいいや。じゃあ、やるね。
えーっと……
青き障壁よ――
我が記憶に刻まれし者のみを受け入れ、それ以外を拒め。
セルリアドラゴンの加護のもと、この地を守護せよ。
――セルリアン・バリア!」
ヴオンッ――
「わっ! なんか出た!!」
「それが、あのじいさんの加護で生まれた結界だ。
消えるまで、目を離すなよ。」
「分かった!
……綺麗な色だなぁ。
青って、心が洗われる感じがする。」
結界生成の要領は、何となく掴めた気がした。
頭の中でもう一度、結界のイメージを思い描き、
エマに教えてもらった詠唱を唱える。
その途中で、なぜかロウキが「ブッ」と吹き出したけど、
理由は分からないままだった。
そんな中、両手から青い光が、じんわりと、ふんわりと広がり、
次の瞬間、一気に領地全体へと駆け巡った。
同時に、体中の魔力がごっそり抜けていく感覚に襲われ、
少し気分が悪くなる。
だけど、結界が広がっていく光景はあまりにも美しく、
心が洗われるようで、その不快感もいつの間にか消えていた。
俺はロウキに言われた通り、
その光が消えるまでの数分間、じっと意識を集中させ続けた。
やがて、スウッと静かに青い光は消えていき――
結界が張り終わったことを実感した俺は、その場に座り込み、大きく息を吐いた。
「はぁ……!
終わったよね? これ。」
「ああ。これで、お前の知らぬ者は、この領地には入れん。
……それにしてもお前、よくもまあ、エマが言ったことをそのまま唱えたな。」
「え?」
「あれはな、お前の能力なら詠唱など不要だ。
普通に“セルリアン・バリア”と言えば済んだ話だ。
……遊ばれたな」
「ええ?! そうなの?! エマ?!」
【否、マスターが詠唱をしたいのかと思い、即興で考えました。
結構、良い詠唱だと思います】
「あ……そ、そうなの?
それはまあ、ありがとう……
でも、これからは詠唱なしでいいなら、
名前だけ教えてくれると嬉しいなぁ」
【承知しました。
詠唱が不要なものは、その都度お知らせします】
無事に作業を終え、ホッとしていた俺に、
詠唱は不要だったと言い、慌てて確認すると、
エマに遊ばれていたと知った。
でもまあ、結果的に無事、結界は張れた。
それなら良しとしよう。
これで少しは、俺とみんなの身の安全が確保できたはずだ。
あとは……催促される前に、どうにか転移ゲートを生成しなきゃな。
そんなことを考えながら、
俺はロウキと共に家へと戻った――
王都方面へ向かう、領地の境界線らしき場所に到着した。
これなら、歩いても20分とかからない気がする。
とはいえ、前も後ろも結局は森。
正直、どこからどこまでが境界なのかは、よく分からない。
ひとまずこの辺りに、立ち入り禁止のテープでも張り巡らせておこうか。
そんなことを考えながら、地図を広げて確認していた。
「そういえばさ、前に教えてくれただろ? この世界について。
その時ロウキ、このソウリアス王国は“割と大きめの王国”だって言ってたよね?」
「ああ。割と大きめだろう?」
「えっと……ロウキにとって、この大陸は“割と”なの?
だって見てよ、これ。
総面積、3.2万平方キロメートルって書いてあるんだけど?!」
「だから、割と大きめの王国だろうが?」
以前ロウキが「割と大きな国」と言っていたソウリアス王国。
だけど、実際に地図を見てみると、“割と”どころの話ではなく、
とんでもなく広大な大陸に思えてきた。
そのことを指摘すると、ロウキは呆れたように
「割と大きめだろうが」と繰り返すだけだった。
「そもそも、どのくらい大きいのか分かんないな。
日本で言うと、どんな感じなんだ?
エマさん、どうか教えてくれないかね?」
【……】
「ダメか…そんな都合よくはいかないよね」
土地の面積について、ロウキの説明じゃイマイチ分からない。
だからダメ元でエマに問いかけてみたものの、反応はなくて。
いつまで経っても一方通行だなぁと思っていた、その時だった。
【検索完了: ソウリアス王国の総面積に関する調査結果を報告します。
王国の総面積を日本の地理データに照らし合わせたところ、
中国地方をすべて合わせた広さに相当し、大国と呼ぶに相応しい規模を有しています。
この世界における「大陸の標準的な広さ」の指標を確認したところ、
この規模がひとつの大陸における平均的な国家単位となっているようです】
「あ、時間差?
でもほら、デカいじゃん!」
「我は日本を知らん。
これくらいの大陸は、外にも普通にあるわ。
このソウリアス王国の大陸を囲むように、4つの国が存在しておる。
それぞれの国も、ここに劣らぬ広さだぞ」
【ロウキの言葉は正しいです】
「へぇ……」
どう考えても“割と”という規模じゃない。
さらにロウキは、この規模の国が四つも存在し、
ソウリアス王国はそれらに囲まれているのだと教えてくれた。
――このレベルの国が、四つも?
そう思った瞬間、ふと違和感を覚えた。
その正体に気づき、思わず声を上げる。
「……エマさん、今、受け答えしてない?!」
【否、していません。】
「してるじゃん!?
どういうこと?! 一方通行じゃなかったの?!」
【サポートAIは、一方通行です】
「このAI、普通に嘘つくようになったんだけど!
ロウキ! エマが嘘ついてる!」
「遊ばれておるな、お前……
前にも言っただろう。
名を与えられた存在は、稀に意思を持つことがあると。
それだろう。」
「そうなの?
エマ、言ってよー。」
【気のせいです。では、通信を終了します】
「え! エマちゃん冷たい!
でも……会話、成立してるよね?」
突然、普通に会話が成立したことに驚いて、エマを問い詰めたものの、
「気のせいです」「一方通行です」と、あっさり煙に巻かれてしまった。
ロウキに助けを求めると、「意思が宿っただけだろう」と実に淡々としている。
俺はずっと、エマとは一方通行の存在だと思っていたのに。
まさか、こんな形で会話ができるようになるなんて。
もっと感動する場面なんじゃないのか?
そう思ったけれど、エマは容赦なく会話を打ち切った。
……エマもロウキも、ほんとクールだな。
小さくため息を吐いた、その時だった。
「……あ。」
「チッ……何しに来たのだ、あやつら」
「ヨシヒロさん! それにロウキさんも!」
「えーっと……ルークさん……と?」
「申し遅れました。
私はソウリアス王国の王弟、ルセウス・ソウリアスと申します。
現在、この国の騎士団長を務めております」
「あ……アーロンさんの弟さんでしたか。
よろしくお願いします。
今日は、どうされたんですか?」
気配感知が反応し、振り返ると、
そこには以前城で会ったアーロンさんの息子――ルークさんと、
やたらと渋くて男前な男性、そしてその部下らしき人々の姿があった。
軽く挨拶を交わしたところで、
その“イケオジ”がアーロンさんの弟、ルセウスさんだと判明する。
しかも、この国の騎士団長。
――相当な実力者だ。
そんな人物が、どうしてこんな場所に?
魔物討伐か?
そう思って理由を尋ねると、返ってきたのは、意外な答えだった。
「兄上……陛下より命を受け、ヨシヒロさんの領地に警備兵を配置するため、下見に参りました」
「そうでしたか。
なんだか、お手間を取らせてしまってすみません。ありがとうございます」
「いえ。あなた方は、この国にとって非常に大切な方々ですから。
我々も微力ながら、お力になれればと思っております。
何かありましたら、遠慮なくお申し付けください」
「ありがとうございます……
えーと、俺たちはこれから、もう少し向こうを見て回ろうと思っているので、この辺で……」
「ああ、そうでした。それは失礼しました。
お時間を取らせてしまい、申し訳ありません。
今度ぜひ、ゆっくりお話を聞かせてください」
「はは……はい。では、失礼します」
どうやらルセウスさんたちは、俺たちのためにこの地を下見しに来てくれていたらしい。
そう思うと、なんだか申し訳ない気持ちになる。
だけど、あまり長居すると色々と面倒なことになりそうだったので、
早々にその場を離れることにした。
ロウキの機嫌が悪くなるのも嫌だし、
これから結界を張るところを見られるのも正直面倒だ。
そう考えながら、ルセウスさんたちの姿が見えなくなる場所まで移動し、
この領地に結界を張りたいという相談をロウキに持ちかけた。
「よし。この辺なら、もう見えないな。
俺の領地に結界を張ろうと思うんだけど、どう思う?
変な人たちを入れたくないからさ。」
「結界か。魔力無限のお前なら可能だろう。
ちょうど、セドラのじいさんの能力を受け継いで、結界を張れるようになったはずだ。
それに、我々のような存在を従魔にすると、それだけで加護を受けられる。
つまり今のお前は、フェンリルの加護とセルリアドラゴンの加護持ちというわけだ。
……まったく、贅沢な奴よ」
「え? え? そうなの?!
俺、加護増えてたんだ?
ステータス見てないから全然分かんなかったわ。
でも……できるかな? やったことないけど。
こういうのって、イメージが大事なんだよね?
俺の領地全体を光で包む感じ?
できれば、俺の知ってる人以外は通れないようにしたいなぁ。」
「それなら、結界にお前の記憶を練り込めばいい。
そうすれば、お前の記憶にない人物は通れぬ。魔物も同様だ。」
結界を張りたいと伝えると、ロウキは、
セドラから結界の能力を受け継いでいるから可能だと教えてくれた。
さらに、高位の魔獣を従魔にすると、その加護を受けられるという話には驚いた。
そんなこと、今まで一度も教えてくれなかったじゃないか。
まあ、二人の加護は戦闘向きだろうし、
俺には必要ないかもしれないけど。
「なるほどね。やり方はよく分かんないけど……
ゲートを作る時も、同じことするんだよな?
これで成功すれば、ゲート生成にも一歩近づくし、頑張りますか!
……あ、エマちゃんや? 詠唱とか、あるのかね?」
【……青き障壁よ。
我が記憶に刻まれし者のみを受け入れ、それ以外を拒め。
セルリアドラゴンの加護のもと、この地を守護せよ。
――セルリアン・バリア、でしょうか】
「ブッ!」
「ほえー。長いのね。
……って、なんでロウキ笑ってんだよ?
まあいいや。じゃあ、やるね。
えーっと……
青き障壁よ――
我が記憶に刻まれし者のみを受け入れ、それ以外を拒め。
セルリアドラゴンの加護のもと、この地を守護せよ。
――セルリアン・バリア!」
ヴオンッ――
「わっ! なんか出た!!」
「それが、あのじいさんの加護で生まれた結界だ。
消えるまで、目を離すなよ。」
「分かった!
……綺麗な色だなぁ。
青って、心が洗われる感じがする。」
結界生成の要領は、何となく掴めた気がした。
頭の中でもう一度、結界のイメージを思い描き、
エマに教えてもらった詠唱を唱える。
その途中で、なぜかロウキが「ブッ」と吹き出したけど、
理由は分からないままだった。
そんな中、両手から青い光が、じんわりと、ふんわりと広がり、
次の瞬間、一気に領地全体へと駆け巡った。
同時に、体中の魔力がごっそり抜けていく感覚に襲われ、
少し気分が悪くなる。
だけど、結界が広がっていく光景はあまりにも美しく、
心が洗われるようで、その不快感もいつの間にか消えていた。
俺はロウキに言われた通り、
その光が消えるまでの数分間、じっと意識を集中させ続けた。
やがて、スウッと静かに青い光は消えていき――
結界が張り終わったことを実感した俺は、その場に座り込み、大きく息を吐いた。
「はぁ……!
終わったよね? これ。」
「ああ。これで、お前の知らぬ者は、この領地には入れん。
……それにしてもお前、よくもまあ、エマが言ったことをそのまま唱えたな。」
「え?」
「あれはな、お前の能力なら詠唱など不要だ。
普通に“セルリアン・バリア”と言えば済んだ話だ。
……遊ばれたな」
「ええ?! そうなの?! エマ?!」
【否、マスターが詠唱をしたいのかと思い、即興で考えました。
結構、良い詠唱だと思います】
「あ……そ、そうなの?
それはまあ、ありがとう……
でも、これからは詠唱なしでいいなら、
名前だけ教えてくれると嬉しいなぁ」
【承知しました。
詠唱が不要なものは、その都度お知らせします】
無事に作業を終え、ホッとしていた俺に、
詠唱は不要だったと言い、慌てて確認すると、
エマに遊ばれていたと知った。
でもまあ、結果的に無事、結界は張れた。
それなら良しとしよう。
これで少しは、俺とみんなの身の安全が確保できたはずだ。
あとは……催促される前に、どうにか転移ゲートを生成しなきゃな。
そんなことを考えながら、
俺はロウキと共に家へと戻った――
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ひっそりと「スキルに関する相談を受け付けるための『スキル相談室』」を開業する傍ら、空いた時間は冒険者ギルドで、住民からの戦闘伴わない依頼――通称:非戦闘系依頼(畑仕事や牧場仕事の手伝い)を受け、スローな日々を謳歌していたスレイ。
しかしそんな穏やかな生活も、ある日拾い癖が高じてついに羊を連れた人間(小さな女の子)を拾った事で、少しずつ様変わりし始める。
スキル階級・底辺<ボトム>のありふれたスキル『召喚士』持ちの女の子・エレンと、彼女に召喚されたただの羊(か弱い非戦闘毛動物)メェ君。
何の変哲もない子たちだけど、実は「動物と会話ができる」という、スキル研究家のスレイでも初めて見る特殊な副効果持ちの少女と、『特性:沼』という、ヘンテコなステータス持ちの羊で……?
「今日は野菜の苗植えをします」
「おー!」
「めぇー!!」
友達を一千万人作る事が目標のエレンと、エレンの事が好きすぎるあまり、人前でもお構いなくつい『沼』の力を使ってしまうメェ君。
そんな一人と一匹を、スキル研究家としても保護者としても、スローライフを通して褒めて伸ばして導いていく。
子育て成長、お仕事ストーリー。
ここに爆誕!
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