従魔と異世界スローライフのはずが、魔王と噂されていく日々

ソラリアル

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第36話 知識系魔物の存在

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「ヨシヒロよ。
今日は、鉱山に何か用があって来たのか?
セルリアが足らぬのか?」

「あ、そうそう。
今日はね、ちょっと相談があって」

「相談?
吾輩に語りかけるだけでは、いかんかったのか?」

「それも考えたんだけどさ。
クロたちが遊びたがってたし、
セドラにも会いたいだろうなって思って」

「そうか……それは嬉しいのう」


セドラに訪れた理由を聞かれ、それを話すと、
どこか感慨深そうに目を細めた。


「長い時代を生きてきたが、
吾輩は天涯孤独の身じゃった。
唯一、心を通わせておったのは……
あの偉大な魔法使いだけじゃったからな。
それが今では、
こうして多くの家族に囲まれておる。
家族がいるというのは、この上ない至福じゃ」

「……セドラ」


どうやらセドラには家族がいなかったらしい。
かつての友――偉大な魔法使いが亡くなってから、
眠りにつくまでの間は、本当に孤独だったんだな……

だからこそ、今クロたちが懐いてくれて、
“家族”と呼べる存在ができたことが、
心の底から嬉しいんだと思う。

……俺、こういう話に弱いんだよな。
少しだけ、目頭が熱くなった。


「それで?
吾輩に、どのような相談じゃ?」

「あ、実は魔物について教えてほしくてさ。
俺が生成したものや既存品を、
解析して複製できる魔物って、いないかなって」

「……知識系魔物、と呼ばれる存在か?」

「あ、ロウキも同じこと言ってた。」


俺は小さく頷く。


「人間でも、できる人はいると思うんだけどさ。
正直、俺あんまり人間が得意じゃなくて。
“信用できる”って思える人に、そう簡単には出会えない気がするんだ。
だから、もし友達になれる魔物がいたら、手伝ってもらえたらいいなって」

「なるほどのう」

「都合がいいのは分かってるんだけどさ。
できたら、って思って。
生成はできるんだけど、
どうも解析は無理みたいで……」

 
家族の話で温まった空気を、セドラは自然に話題を戻してくれた。

俺が探している魔物について話すと、
セドラもロウキと同じく「知識系魔物のことか」と言った。

この世界では、そういう魔物を“知識系”って呼ぶのか。
なんだか、不思議な響きだ。

 
「解析と生成……
ううむ……スライムでは、いかんのか?」

「スライム?」

「あれらの中には、特殊個体がおってな。
お前さんの望む力を持つ子もおるぞ」

「スライムかぁ……
前世では漫画でよく見たけど……
そんなタイプのスライムって、本当にいるんだ?」

「おるぞ。
過去には、魔導書を飲み込み、
そこに書かれていた魔法を習得した個体もおった。
まあ、吾輩も詳しいわけではないが……
この辺りなら、海岸に向かう途中に洞窟があってな。
昔は、そこにスライムが大量発生しておった」

「へぇ……」

「行ってみるとよい」

 

まさか本当にスライムに特殊個体がいるなんて、驚きだな。
なんて、胸を躍らせていると――
真っ先に反応したのは、クロとミルだった。

 
「洞窟!? 探検!? 主、行こーぜ!」

「おれ、いきたい!」

「クロ兄さん。
僕もすぐに行きたい気持ちはありますが……
もうすぐ日が暮れます。
今日は野営か王都に泊まって、
明日の朝に出発した方がいいかと思います!」

「うむ。
夜は夜の魔物が出るからな。
誰かさんがぎゃーぎゃーとうるさいし、朝に出る方が無難だろうな」

「んー……
確かに主が怪我したら大変だしな。
じゃあ明日だな、ミル!」

「あした、たのしみ!」

 
クロは今すぐ行きたそうに翼をぱたぱたさせていたが、
そこは冷静なユキが、きちんと止めてくれた。

ユキって、ロウキとは正反対な雰囲気なのに、
判断力は驚くほど似ている。

……秘書みたいな存在だな。
俺にとっては、かなりありがたいかもしれない。

最終的に、クロもロウキもユキの意見に賛成し、
今夜はゆっくり過ごすことになった。

 
「じゃあさ。
せっかくだし、今日はここに泊まろうよ。
俺が、ベッドとか布団とか生成するから」

「わー! そうしようそうしよう!
今日はじいちゃんと一緒だな!」

「良いのか?王都に行けば、快適に休めるのじゃぞ?」

「大丈夫だよ。俺、ベッドさえあれば寝られるし。
……ちょっと待っててね。
――クレオ。」

 
ゴトンッ――
 

「できたできた。
これで、今日はここに泊まれるね」

「なんと……!
ヨシヒロは、やはり面白いのう。」

「そう?便利な加護をもらったからさ。
使えるところは、使わないとね」

「……そうか。
ありがとう、ヨシヒロ」


明日出発するとなると、泊まる場所が必要なわけで。
せっかくだから今夜は、この場所で一泊することになった。

どうせならと、俺は簡単な野営セットを次々と生成し、
みんなが休めるように整える。

セドラは少し心配そうだったけれど、
俺は――今日は、ここに泊まるのが正解だと感じていた。

家族って、一緒にいられる時は、
一緒にいた方がいいに決まってる。

そんなことを思いながら、
他愛ない話を重ね、
穏やかな夜を過ごした――

 




 


翌朝――
 

「それじゃ、行ってくるな! じいちゃん! またな!」

「行ってきます! セドラおじいちゃん!」

「ばいばい!」

 
朝食のサンドイッチをみんなで食べ、
少し休憩したあと。

俺たちは手を振って、鉱山をあとにした。

……みんな、すっかり家族だな。
幸せだなぁ。

そう思いながら外へ出ると、朝日が眩しくて、思わず目を閉じる。

そして、目を開けた瞬間――
目の前に、鉱山の採掘作業員たちがずらりと並んでいて、俺は固まった。

 
「ヨシヒロ様ご一行のお帰りだ! 道を開けろ!」

「えっ……
そんな大げさなこと、しなくても……」

「すげぇ……
フェンリルにミノタウロスに、なんかちっこいのが飛んでる……」

「本当に、このガキが従えてんのか?
どう見てもおかしいだろ……」

「俺、フェンリル見るの初めてだ……」

「デカ……こわっ……」

 
どうやら昨日は、本当に作業の休みだったらしい。
今日は、屈強なお兄さんやおじさんたちで、
鉱山が溢れかえっていた。

作業員たちは、俺たちを見て驚いたあと、
警備兵の指示で道を開けてくれる。

……やめてよ、こういうの。
目立つじゃないか。

苦笑いしながら、俺は足早にその場を離れた。

鉱山が作業場だってこと、すっかり忘れてたな……

次からは、作業員さんたちの迷惑にならないよう、ちゃんと考えないと。

そんなことを思いながら、今度王都で、仕事のサイクルについて、
聞いてみようと考えていた。

 
「えーっと……
ここから海岸に向かって、道なりに進めばいいんだよな?」

「そうだな。
じいさんに言われて、思い出したわ。
我も、あの洞窟には長らく行っておらぬが……
確かに昔は、スライムが湧いておった」

「そっかぁ……
でも、スライムって友達になれるかな?」
「従魔だろうが」

「それはそうなんだけどさ。
せっかくなら、友達になりたいじゃん。
だってスライムだよ?ぷにぷに天国だよ?」

「知らんわ! 毒持ちスライムもおる。
安易に触るでない」

「そうなのか……
それは気をつけないとだなぁ」

 
海岸へ続く道を歩きながら、
ロウキは洞窟の記憶を辿るように話してくれた。

スライムが“湧く”ほどいるとなると、選別はなかなか大変そうだ。

「友達になりたい」と呟くと、ロウキは呆れたように目を細める。

スライムは、絶対的にぷにぷにで癒し枠だと思っている。
可愛いんだろうなぁ。だって、スライムだし。

そんなことを一人でぶつぶつ言いながら、
俺たちは、海岸の洞窟を目指して歩き出した――
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