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第47話 信じる気持ち
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「それで、結局俺の噂はそのままになっちゃってさ。
俺、王家直属の冒険者&魔王って設定になっちゃった」
「あるじさまは、魔王なんですね! お似合いです!」
「いやいやユキちゃんや、魔王だよ?
俺、ただの人間なのに魔王っておかしいでしょう?」
「そうでもないぞ。
かつて魔王と呼ばれていた者がいたが、どこにでもいる普通の人間だった。
さまざまな憎悪を吸い込み、結果として魔王になったのだ。
ゆえに、人間が魔王という設定でも、特に問題はなかろう」
「えー……それ、酷い話じゃん!」
「あるじ、まおう、できる?」
「さすがに俺が知ってる魔王みたいに、
世界征服とか世の中への復讐とかはできないよー。
だって俺は、みんなと一緒にのんびり暮らしてる、この時間が好きなんだからさー。
あ、ミル。今日のお昼ご飯も美味しいな!
前に俺が言ってたハンバーグ、作ってくれたんだなぁ!」
「あるじの、すきなもの、つくりたかった」
「ありがとうなミル! このスープもバッチリだよ!」
「うれしい!」
家に戻り、ミルが作ってくれていた昼食を外のテーブルに運び、
それを囲みながら、今日あった出来事を話した。
ユキは、俺が“魔王”と呼ばれることに特に抵抗はないようで、
「お似合いです」と楽しそうに笑っている。
ロウキは、過去に存在した魔王は元々人間だったと言った。
前世の知識として聞いたことはあったけど、
実際に人間から魔王になった者がいたと知り、少し驚かされる。
――魔王って、本当に存在していたことがあるんだなぁ。
そんなことを考えていると、
ミルが期待に満ちた眼差しで俺を見上げてきた。
「あるじ、まおう、なれる?」
この世界の“魔物”と呼ばれる存在は、
魔王に対してとても好意的なのかもしれない。
そう思うくらい、誰も抵抗を示さない。
だけどね。
俺は魔王じゃなくて、普通に、ゆるーく生きていけたらそれでいいんだ。
心の中で、そう思っていた。
「そういえばロウキ、何か獲物は狩れたのか?」
「うむ。狩りをしようと思い、岩の上で見張っていたのだが……
いつの間にか寝てしまっていてな。
狩りは、また次回だ」
「あはは。まぁ、日向ぼっこしてたら眠くなるよなぁ。
次の狩りまでに、俺、魔物専用のアイテムボックス作るよ」
魔王の話をしているうちに、
ふとロウキの狩りの成果が気になって聞いてみた。
返ってきたのは、
「日向ぼっこをしていたら寝てしまった」という予想外の答えで、
思わず笑ってしまう。
どれだけ大きくても、やっぱりワンちゃんだなぁ……なんて思いながら、
本当に魔物狩りが始まる前に、
魔物を入れるためだけのアイテムボックスを生成しておかないとな、と考えていた。
「ヨシヒロ様。食事が終わりましたら、少しお時間よろしいですか?」
「ん? いいよ、ラピス。もう少し待っててなー」
そんな会話をしながら食事を続けていると、
先に食べ終えたラピスが、俺の肩にちょこんと乗ってきた。
どうやら、話があるらしい。
俺は少し急いでご飯をかき込み、席を立つと、
ラピスに案内されて、みんなから少し離れた場所へ向かった。
そこには黄色いスライムが、1匹だけで待っていた。
「あれ? あの子、どうしたんだ?」
「実は……あの子が、名前が欲しいと言いまして……」
「え? 名前?」
「はい……
あの子の能力を考えると、これからも一緒に行動することがあるかもしれませんよね。
その時、ずっと“黄色いスライム君”と呼ばれるのが嫌みたいで……
名前で呼ばれないのが、寂しいそうなんです。
従魔になれば名前をもらえるから、と……
少し身勝手な理由で、ヨシヒロ様には申し訳ないのですが……」
「そうなのか。意外な考え方で、ちょっとびっくりした。」
黄色いスライムに何かあったのかと心配していたけれど、
理由を聞いて、別の意味で驚かされた。
だけど、気持ちは分かる。
分かるけど……それだけの理由で、従魔にするわけにはいかない。
そう思った俺は、黄色いスライムの前に立ち、
自分の気持ちを、きちんと伝えることにした。
「スライム君。名前が欲しいって理由は分かったよ。
でも、それだけで君を従魔にすることはできないんだ。
従魔になったら、途中で嫌になっても簡単には逃げられない。
嫌いな人間に縛られるのは……嫌だろ?
名前をあげること自体は簡単だけどさ、
俺のことを少しでも信じたいって思えた時に、
もう一度、契約の話をしよう。
俺との従魔契約は、心が少しでも繋がらないと成立しないみたいだから」
「ヨシヒロ様……」
「ラピス、ごめんな。
俺は、いつでも大歓迎なんだけどさ、
この子が名前のために、自分を犠牲にしてほしくないんだ」
「……そんなふうに思ってくださり、ありがとうございます。
とても、嬉しいです」
名前を渡すことは簡単だった。
でも、そのために自分の気持ちを押し殺してほしくなかった。
形式だけの契約ではなく、ちゃんと気持ちが繋がってからにしたい。
そう伝えた俺の言葉に、黄色いスライムは、どこか納得がいかなさそうな様子だった。
その頭を、ポンポンと優しく撫で、俺はロウキたちのいる場所へ戻る。
お茶をコクコクと飲みながら、
「自分の気持ちを犠牲にするのは、やっぱり良くないよなぁ」と考えていた。
無理をしてまで、ここで暮らすのは……きっとしんどい。
そう思っていると、再びラピスの声が聞こえ、視線を向けた。
「ヨシヒロ様……」
「ん?」
「この子たちが……」
「あれ?今度は4匹で、どうした?」
視線の先にいたのは、ラピスと、4匹のスライムたちだった。
どのスライムも、どこか気まずそうな雰囲気をまとっている。
そう思っていると、黄色いスライムが、何かを必死に伝えようとしてきた。
……だけど、スライム語は、さっぱり分からない。
俺が困っていると、ラピスがすぐに肩に乗り、静かに口を開いた。
どうやら通訳を、してくれるらしい。
「100%信じるのは難しいと思っているけど、
ヨシヒロ様は、他の人間とは違う気がしている。
その気持ちをどう伝えたらいいのか分からず、
名前が欲しいと言ってしまった……そう言っています」
「スライム君……そうだったのか。
ごめんな、ちゃんと分かってやれなくて」
「それでも、最後にもう一度だけ信じてみたいという気持ちがあるので、
従魔にしてください……そう言っています、ヨシヒロ様。
もし承諾していただけるのであれば、
この子たち全員に名前を授けていただけないでしょうか?」
「全員に?」
「はい。実はこの子たちは、人間の言う“特殊個体”なのです。
そのため、他のスライムたちとは異なり、
それぞれ能力を持った個体となります。
ですから、名前があった方が、
ヨシヒロ様にとっても扱いやすいかと思います」
「へぇ……そうだったのか。
俺は構わないよ。この子たちがそれでいいって思ってくれるなら」
「この子たちは、“大丈夫”だと言っています。
ヨシヒロ様……よろしくお願いします」
黄色いスライムが、なぜ名前を欲しがっていたのか。
その本当の理由を知り、この子なりに前へ進もうとしてくれていたんだと分かった。
俺も不器用な人間だから、同じ立場だったら、
どう伝えればいいのか分からなかったかもしれない。
それでもスライム君は、俺に伝えようとしてくれた。
そのことが、ただただ嬉しかった。
さらに、他のスライムたちも特殊個体だと聞き、
全員に名前をつけた方がいいとラピスに言われて承諾すると、
スライムたちは笑っているように見えた。
そうなると、問題はいつもの――“名前”だ。
四匹同時に名前をつけるのは、さすがに初めてだ。
ラピスが宝石から名前を取ったことを思い出し、
この子たちも、それぞれの色に合った宝石の名前にしようと決める。
少し考えたあと、俺は皆をテーブルの上に並ばせた。
「それじゃあ、これから従魔契約をするよ。
今なら、まだ間に合う。
嫌だなって思ったら、テーブルから下りてね」
「ヨシヒロ様!
皆、大丈夫だと言っています!」
「分かった……
じゃあ、やるね。
我が眷属となりし者よ、この名を与える――
黄色い君は、シトリン。
赤い君は、ガーネット。
緑の君は、ルド。
銀色の君は、ムーン」
従魔契約を結び、名前を呼んだ瞬間、
四匹のスライムが、一回り大きくなる。
今までは本当に小さな存在だったのに、
ラピスと同じくらいの大きさになり、
表情まではっきり分かるようになった。
――これで、言葉も分かるようになるのかな?
そう思っていると、
黄色いスライム――改めて、シトリンが一歩前に出て、俺を見上げた。
「ヨシヒロ様!
名前をつけてくださり、ありがとうございます!
今日からシトリンとして生きていきます。
オイラ、まだ不安なこともいっぱいあるけど……
皆がいるから、大丈夫だと思います!」
「シトリン……今までもありがとうな。
そして、これからもよろしく」
「ヨシヒロ様!
私に可愛い名前をくれて、ありがとうございます!
ガーネットみたいに、綺麗に輝けるよう頑張ります!」
「あ、君は女の子だったんだね?
よろしくね、ガーネット」
「僕はルドです!
ヨシヒロ様、よろしくお願いします!」
「よろしくな、ルド!」
「ヨシヒロ様!
ムーンって名前、すごく気に入ってます!
ありがとうございます!
これから俺、ちゃんと役に立てるようになるから!」
「ムーン……ありがとな」
シトリンを皮切りに、
他のスライムたちも、順番に挨拶をしてくれた。
赤いスライム――ガーネットが女の子だと知り、
その名前を選んでよかったな、と改めて思う。
女の子なのに、やたらと勇ましい名前だったら、
少し可哀想だったかもしれない。
ルドに、ムーン。全員とっても可愛らしい。
ムーンは、ちょっとヤンチャそうだな……なんて思いながらも、
ここで暮らすことを選んでくれたことが、何より嬉しかった。
「シトリン! ガーネット! ルド! ムーン!
俺は使い魔のクロ! こっちがユキで、こっちがミル!
それから――従魔のボスがロウキだ!
改めてよろしくな!」
「うむ。見ていて分かっていると思うが、
我がこの群れの長だ。
何かあれば、我に言うがよい」
「皆さん、改めてよろしくお願いします!
ここは、とても安全な場所ですからね!」
「みんな、おれと、あそぼう!」
スライムたちの挨拶が終わると、今度はクロたちが声をかけてくれた。
その光景は、とても優しくて、思わず頬が緩んでしまう。
どんな魔物でも、こうして心を通わせることができるんだなぁ。
そう思うと、自然と幸せを感じた。
この子たちが特殊なのかもしれない。
でも、そんな子たちと一緒にいられる今は、
きっと特別な時間なんだと思う。
だから俺は、この生活を、絶対に手放したくない。
そのために“魔王”と呼ばれることが必要だというなら……
魔王と呼ばれるしか、ないのかな。
そんなふうに、
少しだけ諦めにも似た気持ちを抱きながら――
俺は、この日常を噛みしめていた。
……まぁ、これも仕方のないことなのかもしれないな。
そう思い始めていた――
俺、王家直属の冒険者&魔王って設定になっちゃった」
「あるじさまは、魔王なんですね! お似合いです!」
「いやいやユキちゃんや、魔王だよ?
俺、ただの人間なのに魔王っておかしいでしょう?」
「そうでもないぞ。
かつて魔王と呼ばれていた者がいたが、どこにでもいる普通の人間だった。
さまざまな憎悪を吸い込み、結果として魔王になったのだ。
ゆえに、人間が魔王という設定でも、特に問題はなかろう」
「えー……それ、酷い話じゃん!」
「あるじ、まおう、できる?」
「さすがに俺が知ってる魔王みたいに、
世界征服とか世の中への復讐とかはできないよー。
だって俺は、みんなと一緒にのんびり暮らしてる、この時間が好きなんだからさー。
あ、ミル。今日のお昼ご飯も美味しいな!
前に俺が言ってたハンバーグ、作ってくれたんだなぁ!」
「あるじの、すきなもの、つくりたかった」
「ありがとうなミル! このスープもバッチリだよ!」
「うれしい!」
家に戻り、ミルが作ってくれていた昼食を外のテーブルに運び、
それを囲みながら、今日あった出来事を話した。
ユキは、俺が“魔王”と呼ばれることに特に抵抗はないようで、
「お似合いです」と楽しそうに笑っている。
ロウキは、過去に存在した魔王は元々人間だったと言った。
前世の知識として聞いたことはあったけど、
実際に人間から魔王になった者がいたと知り、少し驚かされる。
――魔王って、本当に存在していたことがあるんだなぁ。
そんなことを考えていると、
ミルが期待に満ちた眼差しで俺を見上げてきた。
「あるじ、まおう、なれる?」
この世界の“魔物”と呼ばれる存在は、
魔王に対してとても好意的なのかもしれない。
そう思うくらい、誰も抵抗を示さない。
だけどね。
俺は魔王じゃなくて、普通に、ゆるーく生きていけたらそれでいいんだ。
心の中で、そう思っていた。
「そういえばロウキ、何か獲物は狩れたのか?」
「うむ。狩りをしようと思い、岩の上で見張っていたのだが……
いつの間にか寝てしまっていてな。
狩りは、また次回だ」
「あはは。まぁ、日向ぼっこしてたら眠くなるよなぁ。
次の狩りまでに、俺、魔物専用のアイテムボックス作るよ」
魔王の話をしているうちに、
ふとロウキの狩りの成果が気になって聞いてみた。
返ってきたのは、
「日向ぼっこをしていたら寝てしまった」という予想外の答えで、
思わず笑ってしまう。
どれだけ大きくても、やっぱりワンちゃんだなぁ……なんて思いながら、
本当に魔物狩りが始まる前に、
魔物を入れるためだけのアイテムボックスを生成しておかないとな、と考えていた。
「ヨシヒロ様。食事が終わりましたら、少しお時間よろしいですか?」
「ん? いいよ、ラピス。もう少し待っててなー」
そんな会話をしながら食事を続けていると、
先に食べ終えたラピスが、俺の肩にちょこんと乗ってきた。
どうやら、話があるらしい。
俺は少し急いでご飯をかき込み、席を立つと、
ラピスに案内されて、みんなから少し離れた場所へ向かった。
そこには黄色いスライムが、1匹だけで待っていた。
「あれ? あの子、どうしたんだ?」
「実は……あの子が、名前が欲しいと言いまして……」
「え? 名前?」
「はい……
あの子の能力を考えると、これからも一緒に行動することがあるかもしれませんよね。
その時、ずっと“黄色いスライム君”と呼ばれるのが嫌みたいで……
名前で呼ばれないのが、寂しいそうなんです。
従魔になれば名前をもらえるから、と……
少し身勝手な理由で、ヨシヒロ様には申し訳ないのですが……」
「そうなのか。意外な考え方で、ちょっとびっくりした。」
黄色いスライムに何かあったのかと心配していたけれど、
理由を聞いて、別の意味で驚かされた。
だけど、気持ちは分かる。
分かるけど……それだけの理由で、従魔にするわけにはいかない。
そう思った俺は、黄色いスライムの前に立ち、
自分の気持ちを、きちんと伝えることにした。
「スライム君。名前が欲しいって理由は分かったよ。
でも、それだけで君を従魔にすることはできないんだ。
従魔になったら、途中で嫌になっても簡単には逃げられない。
嫌いな人間に縛られるのは……嫌だろ?
名前をあげること自体は簡単だけどさ、
俺のことを少しでも信じたいって思えた時に、
もう一度、契約の話をしよう。
俺との従魔契約は、心が少しでも繋がらないと成立しないみたいだから」
「ヨシヒロ様……」
「ラピス、ごめんな。
俺は、いつでも大歓迎なんだけどさ、
この子が名前のために、自分を犠牲にしてほしくないんだ」
「……そんなふうに思ってくださり、ありがとうございます。
とても、嬉しいです」
名前を渡すことは簡単だった。
でも、そのために自分の気持ちを押し殺してほしくなかった。
形式だけの契約ではなく、ちゃんと気持ちが繋がってからにしたい。
そう伝えた俺の言葉に、黄色いスライムは、どこか納得がいかなさそうな様子だった。
その頭を、ポンポンと優しく撫で、俺はロウキたちのいる場所へ戻る。
お茶をコクコクと飲みながら、
「自分の気持ちを犠牲にするのは、やっぱり良くないよなぁ」と考えていた。
無理をしてまで、ここで暮らすのは……きっとしんどい。
そう思っていると、再びラピスの声が聞こえ、視線を向けた。
「ヨシヒロ様……」
「ん?」
「この子たちが……」
「あれ?今度は4匹で、どうした?」
視線の先にいたのは、ラピスと、4匹のスライムたちだった。
どのスライムも、どこか気まずそうな雰囲気をまとっている。
そう思っていると、黄色いスライムが、何かを必死に伝えようとしてきた。
……だけど、スライム語は、さっぱり分からない。
俺が困っていると、ラピスがすぐに肩に乗り、静かに口を開いた。
どうやら通訳を、してくれるらしい。
「100%信じるのは難しいと思っているけど、
ヨシヒロ様は、他の人間とは違う気がしている。
その気持ちをどう伝えたらいいのか分からず、
名前が欲しいと言ってしまった……そう言っています」
「スライム君……そうだったのか。
ごめんな、ちゃんと分かってやれなくて」
「それでも、最後にもう一度だけ信じてみたいという気持ちがあるので、
従魔にしてください……そう言っています、ヨシヒロ様。
もし承諾していただけるのであれば、
この子たち全員に名前を授けていただけないでしょうか?」
「全員に?」
「はい。実はこの子たちは、人間の言う“特殊個体”なのです。
そのため、他のスライムたちとは異なり、
それぞれ能力を持った個体となります。
ですから、名前があった方が、
ヨシヒロ様にとっても扱いやすいかと思います」
「へぇ……そうだったのか。
俺は構わないよ。この子たちがそれでいいって思ってくれるなら」
「この子たちは、“大丈夫”だと言っています。
ヨシヒロ様……よろしくお願いします」
黄色いスライムが、なぜ名前を欲しがっていたのか。
その本当の理由を知り、この子なりに前へ進もうとしてくれていたんだと分かった。
俺も不器用な人間だから、同じ立場だったら、
どう伝えればいいのか分からなかったかもしれない。
それでもスライム君は、俺に伝えようとしてくれた。
そのことが、ただただ嬉しかった。
さらに、他のスライムたちも特殊個体だと聞き、
全員に名前をつけた方がいいとラピスに言われて承諾すると、
スライムたちは笑っているように見えた。
そうなると、問題はいつもの――“名前”だ。
四匹同時に名前をつけるのは、さすがに初めてだ。
ラピスが宝石から名前を取ったことを思い出し、
この子たちも、それぞれの色に合った宝石の名前にしようと決める。
少し考えたあと、俺は皆をテーブルの上に並ばせた。
「それじゃあ、これから従魔契約をするよ。
今なら、まだ間に合う。
嫌だなって思ったら、テーブルから下りてね」
「ヨシヒロ様!
皆、大丈夫だと言っています!」
「分かった……
じゃあ、やるね。
我が眷属となりし者よ、この名を与える――
黄色い君は、シトリン。
赤い君は、ガーネット。
緑の君は、ルド。
銀色の君は、ムーン」
従魔契約を結び、名前を呼んだ瞬間、
四匹のスライムが、一回り大きくなる。
今までは本当に小さな存在だったのに、
ラピスと同じくらいの大きさになり、
表情まではっきり分かるようになった。
――これで、言葉も分かるようになるのかな?
そう思っていると、
黄色いスライム――改めて、シトリンが一歩前に出て、俺を見上げた。
「ヨシヒロ様!
名前をつけてくださり、ありがとうございます!
今日からシトリンとして生きていきます。
オイラ、まだ不安なこともいっぱいあるけど……
皆がいるから、大丈夫だと思います!」
「シトリン……今までもありがとうな。
そして、これからもよろしく」
「ヨシヒロ様!
私に可愛い名前をくれて、ありがとうございます!
ガーネットみたいに、綺麗に輝けるよう頑張ります!」
「あ、君は女の子だったんだね?
よろしくね、ガーネット」
「僕はルドです!
ヨシヒロ様、よろしくお願いします!」
「よろしくな、ルド!」
「ヨシヒロ様!
ムーンって名前、すごく気に入ってます!
ありがとうございます!
これから俺、ちゃんと役に立てるようになるから!」
「ムーン……ありがとな」
シトリンを皮切りに、
他のスライムたちも、順番に挨拶をしてくれた。
赤いスライム――ガーネットが女の子だと知り、
その名前を選んでよかったな、と改めて思う。
女の子なのに、やたらと勇ましい名前だったら、
少し可哀想だったかもしれない。
ルドに、ムーン。全員とっても可愛らしい。
ムーンは、ちょっとヤンチャそうだな……なんて思いながらも、
ここで暮らすことを選んでくれたことが、何より嬉しかった。
「シトリン! ガーネット! ルド! ムーン!
俺は使い魔のクロ! こっちがユキで、こっちがミル!
それから――従魔のボスがロウキだ!
改めてよろしくな!」
「うむ。見ていて分かっていると思うが、
我がこの群れの長だ。
何かあれば、我に言うがよい」
「皆さん、改めてよろしくお願いします!
ここは、とても安全な場所ですからね!」
「みんな、おれと、あそぼう!」
スライムたちの挨拶が終わると、今度はクロたちが声をかけてくれた。
その光景は、とても優しくて、思わず頬が緩んでしまう。
どんな魔物でも、こうして心を通わせることができるんだなぁ。
そう思うと、自然と幸せを感じた。
この子たちが特殊なのかもしれない。
でも、そんな子たちと一緒にいられる今は、
きっと特別な時間なんだと思う。
だから俺は、この生活を、絶対に手放したくない。
そのために“魔王”と呼ばれることが必要だというなら……
魔王と呼ばれるしか、ないのかな。
そんなふうに、
少しだけ諦めにも似た気持ちを抱きながら――
俺は、この日常を噛みしめていた。
……まぁ、これも仕方のないことなのかもしれないな。
そう思い始めていた――
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スキル階級・底辺<ボトム>のありふれたスキル『召喚士』持ちの女の子・エレンと、彼女に召喚されたただの羊(か弱い非戦闘毛動物)メェ君。
何の変哲もない子たちだけど、実は「動物と会話ができる」という、スキル研究家のスレイでも初めて見る特殊な副効果持ちの少女と、『特性:沼』という、ヘンテコなステータス持ちの羊で……?
「今日は野菜の苗植えをします」
「おー!」
「めぇー!!」
友達を一千万人作る事が目標のエレンと、エレンの事が好きすぎるあまり、人前でもお構いなくつい『沼』の力を使ってしまうメェ君。
そんな一人と一匹を、スキル研究家としても保護者としても、スローライフを通して褒めて伸ばして導いていく。
子育て成長、お仕事ストーリー。
ここに爆誕!
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