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第81話 王の謝罪と祈りの言葉
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俺にできることは、一体なんだろう。
そう考えたとき、思い浮かんだのは女神様から授かったスキル――
Angelic Hand(アンジェリックハンド) しかなかった。
生きとし生けるものすべての命を癒し、救う力。
今回は明らかに対象外なのは分かっている。
それでも――彼女を救いたい。
そう強く願いながら、俺は石碑に手を当て、祈った。
「どうかこの力で……
この人を、この人たちの魂を救ってくれ!"Angelic Hand"!!」
念じた瞬間、石碑に添えた両手から、これまでに見たこともないほど強烈な光が溢れ出した。
それは、傷を癒す時に使うハイ・ヒールのような温かな光ではない。
すべてを浄化し、打ち砕くかのような――
青白く、銀色に輝く光だった。
同時に、強烈な不快感が身体を襲う。
魔力を大量に吸い取られる時と同じ症状だ。
吐き気が込み上げ、今にも意識を失いそうになる。
それでも歯を食いしばり、必死に意識を集中させる。
すると、石碑から青白い塊が二つ、ふわりと現れた。
その塊は石碑の周囲をぐるぐると回転し、苦しむように暴れ出す。
ドンッ、ドンッ――
石碑にぶつかり、時には床に体当たりするように跳ね回る。
だけど、この手を放すわけにはいかない。
俺は必死に耐え続けた。
やがて――
青白かった塊は、次第に黄色く、優しい色へと変わっていく。
そして――
【心優しき人……
私たちを見つけてくれて、ありがとう……】
「え……?」
「主、声が聞こえる!」
「あるじさま……この声は、もしかして……」
突然響いた、穏やかで優しい女性の声。
視線を巡らせると、黄色く輝く塊がゆっくりと人の形を取り、
一人の女性と、一人の男性の姿へと変わった。
――間違いない。
先ほど、記憶の中で見たあの二人だ。
そうか……
これは、この二人の魂だったのか。
【200年間……
暗く、地獄のような苦しみの中にいました……
ですが今、私たちは救われました。ありがとう、優しき青年。】
「200年……ですか……
苦しかったですよね……
もっと早く、気づいてあげられなくて……すみません……」
【良いのです……
私の声が、あなた方に届いた。
それで……それだけで、十分なのです……】
彼女は、首を横に振りながら、優しく微笑んだ。
その姿があまりにも穏やかで、胸が締めつけられる。
せめて、名前だけでも知りたい。
そう思い、俺は静かに尋ねた。
「あの……お名前を聞いても……?」
【私は、コルナ・フローレス。
そして、この人はアルト・アダムス。
……あなたのお名前も、教えていただけますか?】
「俺は……ヨシヒロ。
ヨシヒロって、いいます」
200年も前の出来事だ。
末裔を探すことは、きっと難しいだろう。
これ以上、俺にできることはないかもしれない。
それでも――
彼女たちが確かに存在し、ここで命を落としたという真実を、俺は決して忘れない。
そう、心に誓った。
【感謝します、ヨシヒロさん……そして魔物さんたち。
どうか、これからの人生が幸多きものでありますように……】
「ありがとう……
コルナさん、アルトさん……」
【ありがとう……本当に、ありがとう……】
二人は最後にもう一度、感謝の言葉を残し、
光の粒となって、ゆっくり、ゆっくりと天へ昇っていった。
その姿を見送りながら、ルーナがそっと祈りを捧げる。
「……二人に、安らかな眠りを……」
「はぁ……」
「綺麗ごとばかりではない。これが現実だ、ヨシヒロ」
「そうだな、ロウキ……
これは……現実の話なんだよな……」
「それでもヨシヒロ様は、また一つ魂を救いました。
誰にでもできることではありません。
ヨシヒロ様の行いは、
神聖光教団をも超えた“救い”ですわ」
「ルーナ……ありがとな」
とても、大きな出来事だった。
これが、ただの幽霊騒動だったなら、どれほど良かっただろう。
解決はした。それでも、身体も心も、ひどく重い。
そんな俺を、ルーナの言葉がそっと支えてくれた。
「……でもさ。これ、どう説明すればいい?」
「え?教団の人に殺された人が原因だったって言えばいいじゃん!」
「ええ?! そんなストレートに?!」
「だって真実だろ! あいつら、ひどい時は悪魔召喚して殺しもやってるぜ?」
「マジか……まぁ、悪魔との契約って、そういうもんだよな……」
「それでしたら、明日まずガーノス師匠に相談してみてみるのはどうでしょう?」
「だな……それが一番だ」
依頼は無事に解決した。
だけど、報告の仕方は慎重にならざるを得ない。
過去の話とはいえ、これは大きな問題になりかねない。
ラピスの提案に頷き、俺たちは地下から地上へと戻った。
「……相変わらず、綺麗なステンドグラスだな。
切ないくらいに……」
「あるじさま。隠蔽されぬよう、結界を張っておいた方がよろしいかと」
「そうだな、ユキ……
――セルリアン・バリア!」
ヴオンッ――
ユキの助言を受け、俺はすぐに結界を展開した。
これで、俺以外は立ち入れない。
明日、神父様やマリンさんが訪れれば、
いずれこの場所は見つかるだろう。
説明から逃げることはできない。
そう思いながら、扉に鍵をかけ、その前に結界を重ね、
「俺が来るまで開けないでください」と書いた張り紙を貼った。
「さて……ひとまず、帰ろうか」
「うむ。我はもう眠い。」
「帰ろー! 帰ろー!」
すべてを終えた俺たちは、
ギルド別館の転移ゲートをくぐり、家へ戻った。
重く沈んでいた空気は一変し、安心できる空間に、肩の力がすっと抜けていく。
明日のことは、明日考えよう。今はただ、ゆっくり休もう。
そう思いながら、皆で家に入り、それぞれの場所で静かに眠りについた――……
◇
翌日――
「おはようございます、ガーノスさん。」
「おう! おはよ。昨日はお疲れさんだったな。早速、話を聞こうか」
「それなんですけど……」
朝食を終えたあと、俺はクロを連れてゲートをくぐり、ギルドへ向かった。
別館ではすでにガーノスさんが待っていてくれていて、俺は昨日の出来事をすべて話した。
思い出すだけでもしんどい。
だけど、隠しておけるものじゃないし、神父様への伝え方も相談しなければならない。
そう思いながら最初から最後まで話すと、ガーノスさんは「はあ……」と深く肩を落とし、伝書ガラスを王城へと飛ばした。
二百年前のこととはいえ、神聖光教団が関わっていた以上、報告は必要だという判断だった。
「ヨシヒロ、大丈夫か?研究施設の時といい、今回といい……命が重かっただろう」
「はは……そうですね。俺がいた世界とは、まるで違うので……」
「俺がいた世界?」
「あ……いえ。とにかく、俺が育った場所の常識とは、あまりにもかけ離れていたんで……」
「そうか……まぁ、難しい問題だよな。この手の話はよ」
ガーノスさんは、俺が命のやり取りに敏感なことを気遣ってくれ、「大丈夫か」と声をかけてくれた。
つい「俺の世界とはまるで違う」と口走ってしまい、慌てて言い直したけど……
そんな中、ガーノスさんは今回の件の扱いについて話し始めた。
「ヨシヒロ。今回のことはアーロンには報告するが、絶対に外には漏らさないようにしねぇとな。
神聖光教団はソウリアス王国の権威だ。その暗部を暴くことは、国を揺るがす大問題になりかねない。
それに、お前が魂を解放したなんて知られたら、それこそ“のんびり生活”なんてできなくなるぞ。」
「困る……それは大いに困ります……」
「だろ? まぁ、これからのことと、ダニエル神父への報告の仕方は、アーロンたちに決めてもらおう。」
「そうですね……俺たちには荷が重い案件です……」
神聖光教団の闇を暴いたという事実。
それが露見すれば国としての問題になり、アーロンさんたちの立場も悪くなるだろうし、市民からの信頼も揺らいでしまう。
そんなことがあってはいけない。
それに、ガーノスさんの言う通り、俺が関わっていると知られれば、異世界でのんびり暮らすという目標に大きな支障が出る。
だから今回の件は、アーロンさんやガーノスさんの判断に従おう。
そう、心に誓っていた。
ヴィンッ――
【魔法陣を確認。
国王アーロンがこちらに来ます】
「もう? 早いね?」
しばらく話していると、床に転移の魔法陣が出現し、エマが教えてくれた。
朝から来てくれるなんて……王城での仕事は大丈夫なんだろうか。
「ガーノス、ヨシヒロ、おはよう。
お、クロも来ておったのか。おはよう。」
「おはよー!」
「おはようございます、アーロンさん。」
「朝からすまんな、アーロン。」
「いいさ。内容が内容だからな……」
魔法陣から現れたのは、アーロンさんとクロノスさんだった。
俺は、先ほどガーノスさんに話した内容を、もう一度詳しく説明した。
話を聞き終えたアーロンさんは、さすがに胸を痛めた様子で「すまなかったな」と俺に言い、「一度、現場を見せてくれ」と教会へ向かうことになった。
二人が教会に入ったあと、再び結界を張ろうとしたところで、隣の孤児院から神父様が現れた。
「ヨシヒロ殿、私たちはまだ中には……?」
「ええ。申し訳ないのですが、最終確認をしますので、もう少しお待ちいただけますか?」
「分かりました……では、隣の孤児院におりますので、またお声がけください」
「はい。後ほど」
結界を張り直して中に入ると、地下への入り口の前でアーロンさんとガーノスさんが待っていた。
結界を解除すると、二人は迷うことなく地下へと進んでいった。
「――ルーメンスッ!」
「……本当に、このような部屋があったとはな……
これが……人柱を捧げる魔法陣か……」
「そうだぞ! ここに生贄を置いて、呪文を唱えて捧げるんだ。
悪魔を召喚して契約する時も同じだぞ」
「クロが召喚されない良い子で良かったわい」
「へへっ! 俺は主のために働くんだー!」
「そうだな。そのままのクロでいておくれ。」
中央の魔法陣を見つめる二人の表情は、重く沈んでいた。
さらに奥、石碑の部屋へと進んだアーロンさんは、石碑にそっと手を当て、静かに語り始めた。
「200年もの間、このような場所に眠らされて……さぞ辛かったであろう。
現国王として、深く陳謝する。
救いを求めた者に刃を向け、その命を口封じのために利用した教団の罪を、私は国王として重く受け止めよう。
コルナ・フローレス、アルト・アダムスよ。安らかに眠られよ。
二人の真実の叫びは、決して無駄にはしない」
「アーロンさん……」
非公式とはいえ、この謝罪は確かな意味を持っていた。
この言葉が、あの二人に届いていてくれたら――
そう願わずにはいられなかった。
その後、神父様とマリンさんにも真実が語られ、
二人は涙を流しながら、心からの祈りを捧げた。
偽りではない、本物の祈り。
それはきっと、コルナさんとアルトさんの魂を、静かに天へ導いてくれるだろう。
俺もそっと両手を合わせ、二人のために祈った。
――この世界は、俺をとことん癒してくれる。
だけど同時に、とことん非道で、残酷な行いが当たり前のように存在している世界でもある。
その現実を、改めて胸に刻んでいた――……
そう考えたとき、思い浮かんだのは女神様から授かったスキル――
Angelic Hand(アンジェリックハンド) しかなかった。
生きとし生けるものすべての命を癒し、救う力。
今回は明らかに対象外なのは分かっている。
それでも――彼女を救いたい。
そう強く願いながら、俺は石碑に手を当て、祈った。
「どうかこの力で……
この人を、この人たちの魂を救ってくれ!"Angelic Hand"!!」
念じた瞬間、石碑に添えた両手から、これまでに見たこともないほど強烈な光が溢れ出した。
それは、傷を癒す時に使うハイ・ヒールのような温かな光ではない。
すべてを浄化し、打ち砕くかのような――
青白く、銀色に輝く光だった。
同時に、強烈な不快感が身体を襲う。
魔力を大量に吸い取られる時と同じ症状だ。
吐き気が込み上げ、今にも意識を失いそうになる。
それでも歯を食いしばり、必死に意識を集中させる。
すると、石碑から青白い塊が二つ、ふわりと現れた。
その塊は石碑の周囲をぐるぐると回転し、苦しむように暴れ出す。
ドンッ、ドンッ――
石碑にぶつかり、時には床に体当たりするように跳ね回る。
だけど、この手を放すわけにはいかない。
俺は必死に耐え続けた。
やがて――
青白かった塊は、次第に黄色く、優しい色へと変わっていく。
そして――
【心優しき人……
私たちを見つけてくれて、ありがとう……】
「え……?」
「主、声が聞こえる!」
「あるじさま……この声は、もしかして……」
突然響いた、穏やかで優しい女性の声。
視線を巡らせると、黄色く輝く塊がゆっくりと人の形を取り、
一人の女性と、一人の男性の姿へと変わった。
――間違いない。
先ほど、記憶の中で見たあの二人だ。
そうか……
これは、この二人の魂だったのか。
【200年間……
暗く、地獄のような苦しみの中にいました……
ですが今、私たちは救われました。ありがとう、優しき青年。】
「200年……ですか……
苦しかったですよね……
もっと早く、気づいてあげられなくて……すみません……」
【良いのです……
私の声が、あなた方に届いた。
それで……それだけで、十分なのです……】
彼女は、首を横に振りながら、優しく微笑んだ。
その姿があまりにも穏やかで、胸が締めつけられる。
せめて、名前だけでも知りたい。
そう思い、俺は静かに尋ねた。
「あの……お名前を聞いても……?」
【私は、コルナ・フローレス。
そして、この人はアルト・アダムス。
……あなたのお名前も、教えていただけますか?】
「俺は……ヨシヒロ。
ヨシヒロって、いいます」
200年も前の出来事だ。
末裔を探すことは、きっと難しいだろう。
これ以上、俺にできることはないかもしれない。
それでも――
彼女たちが確かに存在し、ここで命を落としたという真実を、俺は決して忘れない。
そう、心に誓った。
【感謝します、ヨシヒロさん……そして魔物さんたち。
どうか、これからの人生が幸多きものでありますように……】
「ありがとう……
コルナさん、アルトさん……」
【ありがとう……本当に、ありがとう……】
二人は最後にもう一度、感謝の言葉を残し、
光の粒となって、ゆっくり、ゆっくりと天へ昇っていった。
その姿を見送りながら、ルーナがそっと祈りを捧げる。
「……二人に、安らかな眠りを……」
「はぁ……」
「綺麗ごとばかりではない。これが現実だ、ヨシヒロ」
「そうだな、ロウキ……
これは……現実の話なんだよな……」
「それでもヨシヒロ様は、また一つ魂を救いました。
誰にでもできることではありません。
ヨシヒロ様の行いは、
神聖光教団をも超えた“救い”ですわ」
「ルーナ……ありがとな」
とても、大きな出来事だった。
これが、ただの幽霊騒動だったなら、どれほど良かっただろう。
解決はした。それでも、身体も心も、ひどく重い。
そんな俺を、ルーナの言葉がそっと支えてくれた。
「……でもさ。これ、どう説明すればいい?」
「え?教団の人に殺された人が原因だったって言えばいいじゃん!」
「ええ?! そんなストレートに?!」
「だって真実だろ! あいつら、ひどい時は悪魔召喚して殺しもやってるぜ?」
「マジか……まぁ、悪魔との契約って、そういうもんだよな……」
「それでしたら、明日まずガーノス師匠に相談してみてみるのはどうでしょう?」
「だな……それが一番だ」
依頼は無事に解決した。
だけど、報告の仕方は慎重にならざるを得ない。
過去の話とはいえ、これは大きな問題になりかねない。
ラピスの提案に頷き、俺たちは地下から地上へと戻った。
「……相変わらず、綺麗なステンドグラスだな。
切ないくらいに……」
「あるじさま。隠蔽されぬよう、結界を張っておいた方がよろしいかと」
「そうだな、ユキ……
――セルリアン・バリア!」
ヴオンッ――
ユキの助言を受け、俺はすぐに結界を展開した。
これで、俺以外は立ち入れない。
明日、神父様やマリンさんが訪れれば、
いずれこの場所は見つかるだろう。
説明から逃げることはできない。
そう思いながら、扉に鍵をかけ、その前に結界を重ね、
「俺が来るまで開けないでください」と書いた張り紙を貼った。
「さて……ひとまず、帰ろうか」
「うむ。我はもう眠い。」
「帰ろー! 帰ろー!」
すべてを終えた俺たちは、
ギルド別館の転移ゲートをくぐり、家へ戻った。
重く沈んでいた空気は一変し、安心できる空間に、肩の力がすっと抜けていく。
明日のことは、明日考えよう。今はただ、ゆっくり休もう。
そう思いながら、皆で家に入り、それぞれの場所で静かに眠りについた――……
◇
翌日――
「おはようございます、ガーノスさん。」
「おう! おはよ。昨日はお疲れさんだったな。早速、話を聞こうか」
「それなんですけど……」
朝食を終えたあと、俺はクロを連れてゲートをくぐり、ギルドへ向かった。
別館ではすでにガーノスさんが待っていてくれていて、俺は昨日の出来事をすべて話した。
思い出すだけでもしんどい。
だけど、隠しておけるものじゃないし、神父様への伝え方も相談しなければならない。
そう思いながら最初から最後まで話すと、ガーノスさんは「はあ……」と深く肩を落とし、伝書ガラスを王城へと飛ばした。
二百年前のこととはいえ、神聖光教団が関わっていた以上、報告は必要だという判断だった。
「ヨシヒロ、大丈夫か?研究施設の時といい、今回といい……命が重かっただろう」
「はは……そうですね。俺がいた世界とは、まるで違うので……」
「俺がいた世界?」
「あ……いえ。とにかく、俺が育った場所の常識とは、あまりにもかけ離れていたんで……」
「そうか……まぁ、難しい問題だよな。この手の話はよ」
ガーノスさんは、俺が命のやり取りに敏感なことを気遣ってくれ、「大丈夫か」と声をかけてくれた。
つい「俺の世界とはまるで違う」と口走ってしまい、慌てて言い直したけど……
そんな中、ガーノスさんは今回の件の扱いについて話し始めた。
「ヨシヒロ。今回のことはアーロンには報告するが、絶対に外には漏らさないようにしねぇとな。
神聖光教団はソウリアス王国の権威だ。その暗部を暴くことは、国を揺るがす大問題になりかねない。
それに、お前が魂を解放したなんて知られたら、それこそ“のんびり生活”なんてできなくなるぞ。」
「困る……それは大いに困ります……」
「だろ? まぁ、これからのことと、ダニエル神父への報告の仕方は、アーロンたちに決めてもらおう。」
「そうですね……俺たちには荷が重い案件です……」
神聖光教団の闇を暴いたという事実。
それが露見すれば国としての問題になり、アーロンさんたちの立場も悪くなるだろうし、市民からの信頼も揺らいでしまう。
そんなことがあってはいけない。
それに、ガーノスさんの言う通り、俺が関わっていると知られれば、異世界でのんびり暮らすという目標に大きな支障が出る。
だから今回の件は、アーロンさんやガーノスさんの判断に従おう。
そう、心に誓っていた。
ヴィンッ――
【魔法陣を確認。
国王アーロンがこちらに来ます】
「もう? 早いね?」
しばらく話していると、床に転移の魔法陣が出現し、エマが教えてくれた。
朝から来てくれるなんて……王城での仕事は大丈夫なんだろうか。
「ガーノス、ヨシヒロ、おはよう。
お、クロも来ておったのか。おはよう。」
「おはよー!」
「おはようございます、アーロンさん。」
「朝からすまんな、アーロン。」
「いいさ。内容が内容だからな……」
魔法陣から現れたのは、アーロンさんとクロノスさんだった。
俺は、先ほどガーノスさんに話した内容を、もう一度詳しく説明した。
話を聞き終えたアーロンさんは、さすがに胸を痛めた様子で「すまなかったな」と俺に言い、「一度、現場を見せてくれ」と教会へ向かうことになった。
二人が教会に入ったあと、再び結界を張ろうとしたところで、隣の孤児院から神父様が現れた。
「ヨシヒロ殿、私たちはまだ中には……?」
「ええ。申し訳ないのですが、最終確認をしますので、もう少しお待ちいただけますか?」
「分かりました……では、隣の孤児院におりますので、またお声がけください」
「はい。後ほど」
結界を張り直して中に入ると、地下への入り口の前でアーロンさんとガーノスさんが待っていた。
結界を解除すると、二人は迷うことなく地下へと進んでいった。
「――ルーメンスッ!」
「……本当に、このような部屋があったとはな……
これが……人柱を捧げる魔法陣か……」
「そうだぞ! ここに生贄を置いて、呪文を唱えて捧げるんだ。
悪魔を召喚して契約する時も同じだぞ」
「クロが召喚されない良い子で良かったわい」
「へへっ! 俺は主のために働くんだー!」
「そうだな。そのままのクロでいておくれ。」
中央の魔法陣を見つめる二人の表情は、重く沈んでいた。
さらに奥、石碑の部屋へと進んだアーロンさんは、石碑にそっと手を当て、静かに語り始めた。
「200年もの間、このような場所に眠らされて……さぞ辛かったであろう。
現国王として、深く陳謝する。
救いを求めた者に刃を向け、その命を口封じのために利用した教団の罪を、私は国王として重く受け止めよう。
コルナ・フローレス、アルト・アダムスよ。安らかに眠られよ。
二人の真実の叫びは、決して無駄にはしない」
「アーロンさん……」
非公式とはいえ、この謝罪は確かな意味を持っていた。
この言葉が、あの二人に届いていてくれたら――
そう願わずにはいられなかった。
その後、神父様とマリンさんにも真実が語られ、
二人は涙を流しながら、心からの祈りを捧げた。
偽りではない、本物の祈り。
それはきっと、コルナさんとアルトさんの魂を、静かに天へ導いてくれるだろう。
俺もそっと両手を合わせ、二人のために祈った。
――この世界は、俺をとことん癒してくれる。
だけど同時に、とことん非道で、残酷な行いが当たり前のように存在している世界でもある。
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ひっそりと「スキルに関する相談を受け付けるための『スキル相談室』」を開業する傍ら、空いた時間は冒険者ギルドで、住民からの戦闘伴わない依頼――通称:非戦闘系依頼(畑仕事や牧場仕事の手伝い)を受け、スローな日々を謳歌していたスレイ。
しかしそんな穏やかな生活も、ある日拾い癖が高じてついに羊を連れた人間(小さな女の子)を拾った事で、少しずつ様変わりし始める。
スキル階級・底辺<ボトム>のありふれたスキル『召喚士』持ちの女の子・エレンと、彼女に召喚されたただの羊(か弱い非戦闘毛動物)メェ君。
何の変哲もない子たちだけど、実は「動物と会話ができる」という、スキル研究家のスレイでも初めて見る特殊な副効果持ちの少女と、『特性:沼』という、ヘンテコなステータス持ちの羊で……?
「今日は野菜の苗植えをします」
「おー!」
「めぇー!!」
友達を一千万人作る事が目標のエレンと、エレンの事が好きすぎるあまり、人前でもお構いなくつい『沼』の力を使ってしまうメェ君。
そんな一人と一匹を、スキル研究家としても保護者としても、スローライフを通して褒めて伸ばして導いていく。
子育て成長、お仕事ストーリー。
ここに爆誕!
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