【完結】リプレイ回数がもっとも多いところ「DMしたらデカマラDDと××撮り配信するハメになった」

牛乳席巻

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第3章

垢消し

 KYOに会わない土曜日は久しぶりだった。
 雪菜と別れたあと、家に帰り着いたのは午後六時をまわるころ。
 いつもならばまだKYOのベッドの上にいる時間帯だ。彼に会わない土曜日が、こんなにも長いものだったのだと気付く。
 疲れた体をベッドに投げ出し、横に寝返りながら不在着信もメール通知もないスマホ画面をぼんやり眺める。やがて無意識に指がタップしたのは、ブックマークしていた裏FansのKYOのページだった。
 接続中を示すマークがくるくると回る。しばらくして表示されたのは、「404 Not Found」という文字。

「…………え?」

 いつもならば、KYOのアイコンやプロフィール、会員限定の過去動画のサムネイルがずらりと並ぶはずのページだ。
 のっとふぁうんど? って、なに? 
 慌ててサイトのトップページへ飛び、そっちからKYOを探す。世にも卑猥なアダルト動画のサムネイルの中から、彼を探す、探す、探す。

 いない。

 今度はサイトの外、検索サイトからキーワードを直打ちした。『KYO DD 生配信』と、とにかく思いつく限りの単語を打ち込む。高速で検索を繰り返すせいで、スマホがだんだん熱くなる。のに、指先は冷えていく。そうしてWeb上で彼の大捜査を続けるうち、とある匿名掲示板に辿り着いた。
 そこは、あのアダルトサイトの会員向けの掲示板のようだった。

 1:名無し
 KYO垢消し 配信やめた?

 2:名無し
 まじ?
 昨日は生配信あったよね

 3:名無し
 あった
 でもいつもと違った
 誰かに話しかけてるぽかった

 4:名無し
 あれテレセしてたよな
 てかページまじでないし配信やめたっぽい

 5:名無し
 金曜のご褒美が!
 しばらく立ち直れん

 そんなやりとりがいくつか続いていたが、真相を知っているような書き込みは見当たらない。ただ、みんな口を揃えて「KYOは配信者をやめた」と言っている。
 このタイミングでのKYOのアカウント削除。まさか私のせい? というのはあまりに思い上がりだろうか。いくら私に嫌気がさしたからって、いきなりアカウントを消すような真似をするのはありえない。
 そういえば、今朝のメモには「バイトがある」と書かれていた。ってことは、やっぱりKYOは学生で、バイトをしていて、その隙間時間に顔を隠して配信者をしていたということ。
 たとえばバイト先や大学で身バレしてしまったとか、そういうことも考えられる。
 でも……タイミングのことだけを言えば、その原因の一端は私にあるような気がしてならない。

「KYO……なんで……?」

 手に持っていたスマホをシーツの上にとさりと落とす。
 ただひたすら、焦点の合わない部屋の中をぼんやりと眺めていた。
 何もする気が起きない。
 彼の連絡先は知っている。明日、もしくは来週のどこかで、彼に連絡をしようと思っていた。けれど徹底的に避けられているようなこの状況で、本当に私から接触を試みて良いものなのだろうか。
 私たちは本当にこれで終わりなのか。もう会うこともないまま、KYOの行方もわからないまま、おわり?
 最後に見たのは、寝室から出ていく彼の冷たい背中だ。
 あと少しだったのに、届かなかった。
 あのときもっと手を伸ばしていれば、或いは今とは違う結果になっていたかもしれないのに。
 気がつけばまた後悔ばかりしている。
 不意に持ち上げたスマホ。ブラックアウトしたスマホ画面には、失恋した女のひどい顔が反射して写っていた。そのとき、

 ヴーー! ヴーー!

 唐突にスマホが震え始め、思わず手から落っことしそうになった。同時に心臓が飛び跳ねたのはマナーモードの振動のせいではなくて、画面に表示されていたのが三文字のアルファベットだったから。

 —— KYO!

 跳ね起きて、振動を繰り返すスマホを両手で握ったまま見つめる。
 間違いじゃない、よね?
 私にかけてきてるで合ってる?
 おそるおそる通話ボタンをタップし、平たい画面に耳を当てた。

『……俺、です』

 わずかな沈黙のあとに聞こえた低音に、耳の裏がそわりと震えて。およそ二十時間ぶりのその声が恋しくてたまらなかった。
 今どこにいるの? どうしていきなりアカウント消したの?
 聞きたいことは山ほどある。でも、何ひとつ言葉にできない。
 KYOが私に電話をくれた理由を思うと、嬉しいのと怖いのが半分半分だったから。
 何を言われるのだろうか。次に続く彼の言葉を待ちながら、ゆっくりゆっくりと傷つく準備をする。
 KYOに何を言われたとしても受け止めよう。たとえそれがどんなことでも。
 覚悟を決めたとき、私の耳に届いたのは——

『RINAさん、……会いたいよ』

 とす、と私の心臓を射すような。
 深く甘い色をした、ひそやかな声だった。
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