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第1話 俺と結婚するか?(6)
「ひっでえ反応。十年も一緒にいたってのに気づかなかったのかよ。人の好意とか普通わかるもんだろ?」
「わっ、わかるか! 俺がそういうの疎いって知ってんだろうがっ」
「いや……瀬名の鈍感っぷりも、まさかここまでとはなあ」
呆れたようにため息をつかれ、侑人はぐっと唇を引き結ぶ。心外だと言いたいが、自覚があるだけに反論できない。
「っ、今まで隠してたのかよ」
「言葉にしなかっただけだろ?」
「……本気で、俺のこと」
「ああ、本気。出会ったときからずっと好きだった」
迷いのない返事に、侑人はますます混乱した。冗談で言っているのではないとわかった途端、心臓がドキドキと騒がしくなる。
今までずっとセフレだと思っていた相手から告白されるなど、予想だにしなかった展開だ。体の相性がいいから惰性で関係を続けているだけ。少なくとも侑人はそう思っていたし、高山も同じだとばかり思っていたというのに。
「そんなの、いきなり言われても困るって」
侑人は目を逸らしながら言った。
もちろん高山のことは嫌いではないが、一度もそういった目で見たことがなかっただけに困り果ててしまう。正直なところ、考えられないというのが答えだろう。
ただ、セックスのときとは異なる高揚感が頭を悩ませていた。先ほどから顔が熱く、胸は高鳴るばかりで、こんな感覚はいつぶりかもわからない。
(くそ、なんだこれ……)
これ以上どうしたらいいかわからずにいたら、高山の顔が近づいてきてギクリとした。高山は間近で視線を合わせるなり、目を細めて笑う。
「無理して相手探すくらいなら、いっそのこと俺にしとけよ」
「か、簡単に言うなよ! 確かにあんたのことは気に入ってるけど、あくまでセフレとしてであって、恋愛感情とかじゃないっ」
「まあまあ、今すぐ返事しろとは言わないからじっくり考えろって。ただ、俺は瀬名となら、本当にそういった関係になってもいいと思ってるぜ」
「だーかーらあっ、いきなり結婚とか言われても困るんだっての! 大体、もっと段階踏んでから言うもんだろ!」
「それもそうか。じゃあ、まずは試しに付き合うっつーことでどうだ?」
「軽っ!?」
思わず突っ込むと、高山は少しだけ不機嫌な表情になった。
「軽いわけあるかよ。十年だぞ、十年? ――その間ずっと、俺はお前のことが好きだったんだからな」
言って、高山が侑人の手を掴んでくる。
触れ合った箇所がやけに熱く感じられるのは、きっと気のせいではない。
侑人がどぎまぎとしているうちにも、高山はその手を引き寄せて恭しく口づけた。
「俺と付き合えよ、侑人」
有無を言わせぬ口調で囁かれ、息が詰まりそうになる。
こんな気取った真似が似合う男もそういないだろう。不覚にもときめいてしまったのが腹立たしい。
「顔、真っ赤。……案外こういったのがお好みか?」
高山が鼻で笑う。侑人は慌てて手を振り払うと、キッときつく睨みつけた。
「うっ、ううるさい! バカにしやがって!」
「バカになんかしてねえって。これでもお前のことは、いつも可愛いと思ってるんだぜ?」
「っ!」
甘ったるい雰囲気に頭がくらくらとしてくるようだ。侑人はたまらずベッドから下りて、バスローブを手に取る。
「おい、どこ行くんだよ」
「風呂! シャワー浴びて帰る!」
ぴしゃりと言い放ち、逃げ込むように浴室へと入った。高山の姿が見えなくなったところで、侑人はその場にへたり込む。
もはや胸の高鳴りは苦しいほどで、顔どころか全身が熱かった。
「くそっ」
上手く高山に丸め込まれているようで癪だが、満更でもない自分がいることに気づき、頭を抱えたくなる。
(……ああもう、どうすればいいんだよ)
仮にこのまま付き合うとして、何がどうなるというのか。考えれば考えるほど思考は泥沼にはまっていく一方だった。
「わっ、わかるか! 俺がそういうの疎いって知ってんだろうがっ」
「いや……瀬名の鈍感っぷりも、まさかここまでとはなあ」
呆れたようにため息をつかれ、侑人はぐっと唇を引き結ぶ。心外だと言いたいが、自覚があるだけに反論できない。
「っ、今まで隠してたのかよ」
「言葉にしなかっただけだろ?」
「……本気で、俺のこと」
「ああ、本気。出会ったときからずっと好きだった」
迷いのない返事に、侑人はますます混乱した。冗談で言っているのではないとわかった途端、心臓がドキドキと騒がしくなる。
今までずっとセフレだと思っていた相手から告白されるなど、予想だにしなかった展開だ。体の相性がいいから惰性で関係を続けているだけ。少なくとも侑人はそう思っていたし、高山も同じだとばかり思っていたというのに。
「そんなの、いきなり言われても困るって」
侑人は目を逸らしながら言った。
もちろん高山のことは嫌いではないが、一度もそういった目で見たことがなかっただけに困り果ててしまう。正直なところ、考えられないというのが答えだろう。
ただ、セックスのときとは異なる高揚感が頭を悩ませていた。先ほどから顔が熱く、胸は高鳴るばかりで、こんな感覚はいつぶりかもわからない。
(くそ、なんだこれ……)
これ以上どうしたらいいかわからずにいたら、高山の顔が近づいてきてギクリとした。高山は間近で視線を合わせるなり、目を細めて笑う。
「無理して相手探すくらいなら、いっそのこと俺にしとけよ」
「か、簡単に言うなよ! 確かにあんたのことは気に入ってるけど、あくまでセフレとしてであって、恋愛感情とかじゃないっ」
「まあまあ、今すぐ返事しろとは言わないからじっくり考えろって。ただ、俺は瀬名となら、本当にそういった関係になってもいいと思ってるぜ」
「だーかーらあっ、いきなり結婚とか言われても困るんだっての! 大体、もっと段階踏んでから言うもんだろ!」
「それもそうか。じゃあ、まずは試しに付き合うっつーことでどうだ?」
「軽っ!?」
思わず突っ込むと、高山は少しだけ不機嫌な表情になった。
「軽いわけあるかよ。十年だぞ、十年? ――その間ずっと、俺はお前のことが好きだったんだからな」
言って、高山が侑人の手を掴んでくる。
触れ合った箇所がやけに熱く感じられるのは、きっと気のせいではない。
侑人がどぎまぎとしているうちにも、高山はその手を引き寄せて恭しく口づけた。
「俺と付き合えよ、侑人」
有無を言わせぬ口調で囁かれ、息が詰まりそうになる。
こんな気取った真似が似合う男もそういないだろう。不覚にもときめいてしまったのが腹立たしい。
「顔、真っ赤。……案外こういったのがお好みか?」
高山が鼻で笑う。侑人は慌てて手を振り払うと、キッときつく睨みつけた。
「うっ、ううるさい! バカにしやがって!」
「バカになんかしてねえって。これでもお前のことは、いつも可愛いと思ってるんだぜ?」
「っ!」
甘ったるい雰囲気に頭がくらくらとしてくるようだ。侑人はたまらずベッドから下りて、バスローブを手に取る。
「おい、どこ行くんだよ」
「風呂! シャワー浴びて帰る!」
ぴしゃりと言い放ち、逃げ込むように浴室へと入った。高山の姿が見えなくなったところで、侑人はその場にへたり込む。
もはや胸の高鳴りは苦しいほどで、顔どころか全身が熱かった。
「くそっ」
上手く高山に丸め込まれているようで癪だが、満更でもない自分がいることに気づき、頭を抱えたくなる。
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